マサヤからの連絡
イグレントさんとの通話を終え、病室に戻ろうとすると、またも電話がかかってきた。
「ウィン先生、お休みのところ悪いんですが、出てもらっていいですか?手が離せなくて」
みんな作業中で暇なのは俺だけみたいだ。まあ、俺は入院中なんだけど。
「はい、ワーナル総合病院です」
言われた通り、俺が出る。
『ウィン先生!杉崎です!』
「マサヤ?どうしたんだ、なんか慌ててないか?」
『大変なんです!俺たち、ワーナル地方に戻ろうとしてたんですけど、途中で怪しい奴らに襲われて!』
「襲われた!?無事か!?怪我はないか!?」
『はい、タクシーの運転手さんのお陰で俺もマリアも無事です』
「よかった……それで、今はどうしてるんだ」
『今は駅前の電話ボックスで手分けして電話してます。俺は先生のところ、マリアはお姉さんのところ、タクシーの運転手さんはソレルさんのところといった感じで』
マリアちゃん……、イグレントさんの娘さんであり……オギノさんの娘さんでもある女の子だ。
「相手の正体は?」
『……わかりません。俺じゃなく、マリアを狙っていました』
その言葉でイグレントさんとの会話がよみがえった。
「……」
……まさか、もう相手は彼女のことを狙ってるって言うのか……。俺たちはまだ何もわかってないって言うのに。
「マサヤ、ちゃんと帰ってこられるか?」
せめて、ここに戻ってくるまでの間追っ手から逃れられれば、あとは俺たちでなんとか守ってやれる。
『はい、何があっても、俺はマリアを守ります』
「なるべく人通りの多いところを通って帰ってくるんだぞ。あとお前、一応まだ怪我人だからな、無理はすんなよ」
『はい、なるべく無理はしません』
「早く戻ってこいよ!」
『……はいっ!』
俺は急いでニコルとオギノさんの待つ病室に戻った。
「ウィン!どうだった!?」
「マサヤはもうこっちに向かってる。……オギノさん、あなたの娘さんを連れて」
「えっ!?……それって、どういうことです……?」
「マサヤが保護されていた場所は、あなたが娘さんを預けたお宅だったんです。そして、彼女はもう何者かに追われています」
「……!?」
「それってやっぱり……」
「まだ確証はないけど……十中八九そうだろうとは思う」
「……私が……、体調を崩したばっかりに……あの子が……」
「今、マサヤが娘さん……マリアちゃんを守ってますから。無事ここまで来てくれれば、俺たちが何とかして守ります」
オギノさんが今まで相手に見つからないように立ち回っていたのには十分意味があったんだ。だが、入院してしまった今、彼女は見つかってしまった。
「なあ、マサヤがオギノさんの娘さんを連れて戻ってくるってことは、俺たちが把握してるナハネ族がほぼ集まってくるってことじゃないのか……?」
「何かの運命なのかもな……」
それが何を意味しているのか……俺たちはわからないままだ。
「この場所は、確実に目をつけられているでしょう……今はいないにせよ……ナハネ族の子どもが三人もいたんです……警戒していないわけがない……」
しばらくの沈黙のあと、オギノさんが口を開いた。
「油断は禁物だな」
「俺たちは相手のことをほとんど知らないですからね」
「でもさ、相手の戦力だって、そう残ってないんじゃないか?オギノさんの娘さんを狙ってるくらいだし」
「……」
ニコルは重要なことを忘れている。……俺もこの可能性があることを考えたくはない。でも……今この場にいない以上、万が一そうなった場合、俺たちは手詰まりだ。
「ユキちゃんが、いるだろ」
「……はぁ!?待てよお前!?お前は……!ユキちゃんを信じてるんじゃないのかよ……っ!?」
「俺だって……!こんなこと考えたくねぇよ!!でもユキちゃんはいない!もし、また洗脳されたらユキちゃんは俺たちの敵になる……!その可能性だって無くはない……」
「ウィン先生……、あなたのいうこともわかります。ですが、私たちには希望が必要です……。ポジティブに、考えましょう……?」
オギノさんになだめられてしまった。ストレスを感じさせてしまったかもしれない。
「……すみません」
「今は、いなくなってしまった彼女を信じましょう……。彼女は守るためにもう一人のナハネ族を襲撃し……、そのあとにいなくなってしまったということでしたね……。ならばこの失踪も守るための行動かもしれません」
……そうだった。ユキちゃんは俺たちを巻き込まないためにここを離れたんだ。
「……ニコル、警察にユキちゃん探し手伝ってもらおう。それと、とにかくナハネ族関係で怪しいことがないかも聞いてきてほしい」
「おうよ!お前たちは安静にしてろよな!」
ニコルは部屋を出ていく。あいつならきっとうまくやってくれるだろう。




