由季の捜索
「ウィンストン、ちょっといいか?」
ニコルにユキちゃん探しを託して30分ほど経った頃、部長がやって来た。
「……はい、なんでしょう?」
「……平気か?あまり顔色が良くないようだけど……」
「部長……ユキちゃんが……」
俺がそこまで言うと察してくれたらしく、廊下を一度キョロキョロと見回した。
「……探してるのかい?」
「ニコルに頼みました。俺がちゃんと引き留められてれば良かったんですけど……」
「気に病むことはないよ。君はユキちゃんを助けようとしたんだ」
「でも……」
「ニコルが探してくれているんだろう?戻ってくるのを待とう。それで、本題なんだが、この部屋に一人患者を受け入れるんだ。君は大丈夫か?」
この部屋は四人部屋だ。でも、今は俺しかいない。
「大丈夫ですよ。当たり前じゃないですか。ここ四人部屋ですよ?」
「それなら良かった。ただね、ひどく衰弱してるようだから、君にもちょっと気にしていてもらいたいんだ。安静にしてるところに悪いんだが……」
「わかりました。急患ですか?」
「いいや、イツキくんの病院から転院してくるんだ。彼の病院にベッドの空きがなかったらしくて」
「なるほど。……ユキちゃんがトシタカ襲ったくらいのタイミングですか?」
「ああ。あ、そうそう。転院してくる彼、『オギノダイスケ』というんだ。……スギサキくんたちに名前の雰囲気が似てるから、もしかしたら、なにか聞けるかも知れないね」
「オギノダイスケ……」
「じゃあ、ウィンストン、よろしくな」
部長はそう言って部屋を出ていった。
オギノダイスケ……どこかで聞いたことのある名前だ。マサヤたちと……関係があるのかもしれない。
ニコルはまだ戻ってこない。その間に、ロナさんがベッドメイクしにやってきた。
「ウィンストン、大丈夫?階段から落ちたって聞いたけど」
「はい、大丈夫です」
「でもなんで?あんた普段そんなヘマしないじゃない?」
「……俺の何を見てそういってるんすか……」
「運動神経いいじゃない。受け身くらいとれるでしょ?」
「まあ……そういうときもあるんですよ」
「うーん、腑に落ちない」
「それよりいいんですか?早くしないと患者さん来ちゃいますよ」
「あ、ヤバイヤバイ」
ロナさんはさっさとベッドメイキングを済ませる。
「よし、じゃあ私行くわね。あんたは休んでるのよ」
「あ、そうだ。ユキちゃん見ませんでしたか?」
「ユキちゃん?見てないわよ。ていうかね、私も探してたのよ。様子がおかしかったから。『サイトウトシタカ』って人を探してたみたい」
ロナさんはユキちゃんがその『サイトウトシタカ』を襲ったことを知らない。様子がおかしかったってことは組織に接触されたのはたぶんそのときだろう。
「……ロナさんも時間があったら探してもらえますか?」
「もちろんよ!心配なのはわかるけど、あんたはおとなしくしてるのよ」
ロナさんはそういい残して去っていった。
そしてほぼ入れ違いにニコルが戻ってきた。
「ユキちゃんいたか!?」
「……いや、片っ端から当たってみたけどいなかった……」
ニコルはうなだれる。……ということは、もうユキちゃんはここにはいないのか……!?
「俺、もうちょっと聞き込みに行ってくる。さっきは院内一通り見てきただけだから、俺が見てない間にもしかしたら誰かに会ってるかもしんない」
「……悪いな。俺も探しに行けたらいいんだけど……」
……不甲斐ない。俺が頭さえ打ってなきゃユキちゃんを探しにいきたかった。俺がユキちゃんを引き留められてれば、ニコルに手を煩わせることもなかった。
「しょうがないだろそれは。頭打ってんだから安静にしてろよ。それにお前がユキちゃん庇わなかったらあの子が怪我してただろ」
「ニコル……」
「お兄さんに任せときなさいよ。もし見つからなくても、有力な情報くらいは持ってきて見せるさ」
忘れがちだけどニコルは俺より一歳年が上だった。
「まあ、あんまり期待はするなよ?」
「……いや、ありがとう。……頼んだぞ」
「おうよ」
ニコルは俺に一回ウインクを飛ばして、再度出掛けていった。




