由季の失踪
ううう……頭痛い……体動かない……。
さて、俺はいったいどうなったんだ?ユキちゃんは無事か?いろいろ考えられるってことは俺は生きてるんだ。あのとき、ソレルさんがいた。きっと、誰か呼んでくれたはずだ。
「……」
目を開けると、ユキちゃんがいた。今にも泣きそうな表情をして、俺を見つめている。
「ウィン先生、大丈夫……?」
「ユキちゃん……」
「……先生、ごめんなさい……。私が、もっと素直になってれば……先生が怪我することなかったのに……」
ユキちゃんは泣くのを我慢しているみたいだ。
「ユキちゃん、……怪我はない?」
「……うん、わたしは大丈夫。ウィン先生が助けてくれたから」
ユキちゃんは震える声で、でも気丈に前を向いて頷いた。
「……そっか、良かった……」
「ねえ、ウィン先生……どうして?わたしを助けてくれたの……?」
ユキちゃんはどうしても気になったのか、俺に聞いてきた。
「……ユキちゃんは、もし、誰かが怪我をして動けなくなってたらどうする?」
「手当てしてあげるよ」
「じゃあ、迷子を見つけたら?」
「一緒にお父さんやお母さんを探してあげる」
「それと一緒だよ。まあ……俺の場合は気づいたら体が勝手に動いてたんだけど……でも、さすがにちょっと無茶したかな?」
「ウィン先生……」
俺は苦笑する。ユキちゃんとしては笑い事ではないかもしれないけど。
「……先生、わたし決めたよ。……先生には止められたけど……、やっぱりわたししかいないんだよ」
「えっ!?」
「大丈夫。もう誰も傷つけない。危ないこともしない」
「ちょっと待って!?どうして……!?」
「わたしは、お兄ちゃんや、トシ兄に辛い思いはさせたくない。能力の残ってるわたしだけが、背負っていけばいい」
「だから、そういうことじゃないんだ!!」
「……もう、決めたの。ウィン先生はちゃんと休んでないとダメだよ?リディナ先生が安静にしてないとダメだって言ってたからね?」
待て!なんでこの子はこうも極端なんだ!?止めないと……!
「待って、ユキちゃん……!!」
ユキちゃんが今ここを離れたら、きっと俺たちは見つけられない。
「……ごめんね、ウィン先生……」
ユキちゃんは最後にそう言って部屋を出ていく。
出ていくユキちゃんに手を伸ばそうとしても、全身の痛みがそれを邪魔する。
「……ユキちゃん……っ」
そして、この時を最後に、本当にユキちゃんは姿を消した。
……俺たちは、どうしたらいいんだ……?
「ウィン!!大丈夫か!?」
ニコルがダッシュでやって来た。
「ニコル……!頼む、ユキちゃんを探してくれ!!!」
「えっ?いきなりどうしたんだよ?」
「ユキちゃん……、まだ諦めてない……!!一人であいつらのところに行くつもりだ……!!」
「待て、話が全く読めない。説明してほしい」
「ユキちゃんはあの組織を一人で何とかするつもりなんだ!だからトシタカを襲った!」
「嘘だろ?一人でどうにかなるもんか?」
「ならん!……ていうかわからん!だから、止めたいんだ!探してきてくれ!!!」
「わ、わかった!!とにかくユキちゃんを探して引き留めればいいんだな!?」
ニコルはしたときと同じようにダッシュで部屋を出ていった。
……たぶんだけど、ユキちゃんのICチップは正常稼動している。
ユキちゃんは洗脳されていたときに誰かしらと連絡を取り合っていた。通信機能もあのチップには備わっているのかもしれない。
それを利用してユキちゃんに接触を図ったんだとしたら……
こうして、事件は動き出した。先の見えない不安を抱えて……




