再び出会う優しさ
「ねえ、お兄さん。名前を教えて?」
俺がソファでぼーっとしていると一人の女の子に声をかけられた。
背が高く、他の子たちと比べると頭一つ以上違う。多分、俺とあまり変わらないんじゃないかと思う。
「俺は雅也。杉崎雅也だよ」
「へえ、マサヤくんか。あたしはマリア。で、あっちで勉強してるのがあたしの友達で、このお姉さんが町医者であたしのお姉ちゃんの友達のフィルちゃん」
マリアはにこにこしながらそう言った。
「……ありがとう、マリア。君たちが助けてくれなかったら俺……、死んでたと思う」
「いいんだよ。あたし、そう言うのがほっとけないタイプだから」
「あ!そうだ!」
不意にフィルさんが声を上げた。
「マサヤ君!今、熱あるでしょ。さっきだるいとも言ってたし」
「はい、今も少しだるいですけど……」
「ちょっと口開けて!」
反射で口を開けてしまう俺。
「あああああ……扁桃腺めっちゃ腫れてる……」
「フィルちゃん、どう言うこと?」
「……とりあえず。君は安静」
どうやら、俺は絶不調らしい。自覚が全くないのが怖い……。
「安静だって。マサヤ君、今の所はここでいい?」
「うん」
ソファに横になり直し、目を閉じた。
だんだん自分の体温が上がっていくのがわかる。
(……これ、本気でマズいかもな……)
「一応、漢方と解熱剤用意しとくわね。マリア、もしリッツもおばさんも帰りが遅くなるようなことがあったら、あなたがマサヤ君の看病するのよ。おじさんには期待できないからね」
「あれ、てことはフィルちゃん帰っちゃうの?」
帰り支度を始めたフィルさんにマリアは気づいた。残念そうな顔で彼女を見ている。
「だって、先輩に診療所任せっきりだもん。手に負えないようだったら呼んで」
「うん……」
「しょんぼりしないの。あなたには仲間がいるでしょ」
「そうだよ!マリア、リッツさんが帰ってくるまであたしたちここにいるから!」
なんだかとてもいたたまれない気持ちになった。
「ごめんね……。なんか俺、すごく迷惑かけちゃってるみたいだ……」
俺は、いろんな人に助けられてばかりで、俺はなにもすることができない。
「心配しないで。ちょっと不安になっただけなの。迷惑だなんて思わないで今はゆっくり休んで、ね?」
「……」
俺が出会う人たちは、どうしてこんなにも優しくて親切なのだろうか。
「マサヤ君?」
俺はきっとこのままでは彼女たちを巻き込んでしまう。でも……今、俺がここを離れたとして、どうすることができると言うんだ。
途中で倒れてよけいに迷惑がかかるだけだ。
「……ごめん。図々しいかもしれないけど、体調がよくなるまで、ここにいてもいいかな?」
「もちろんだよ!」
「……ありがとう」
マリアは快諾してくれた。
ん?でも、マリアが勝手に決めていいものなのかな?