もう一人
「……ねえ、マサヤくん?」
「ん?なに?」
俺は、突然ワーナル地方に戻ることになった。なぜか、マリアも一緒に。
エリーさんにタクシー代をもらい、今はタクシーを捕まえようと奮闘中だ。
「お母さんとお姉ちゃん、何で突然今みたいなこと言い出したんだろ?」
「……なんでだろ、なんか不自然だったよね」
「うん」
「俺、やっぱり迷惑だった?」
「そんなことないって。だって、お母さんなんか息子憧れてたって言ってたもん」
「そっか」
となると、ほかに理由があるってことか。
リッツさんからの電話が何か鍵を握っているような気がしてならない。
「マリア、電話盗み聞きしたとき、エリーさんなんか誰かが生きてるとか言ってたよね」
「あー、そういえば言ってたね。でも、私の身内の中で行方不明とかいないけどな?」
「うーん……。でも、なんか引っかかるんだよな」
「ま、気にしてても仕方ないか。マサヤくん、早くタクシー捕まえようね」
マリアはとてものん気だ。まあ、気を張っていても疲れるだけだもんな。
……でも、俺たちがエリーさんたちの話を理解するのは、そう遠くはない。そして……それによって、マリアの運命さえも大きく変わってしまうんだ……。
プルルル、プルルル
医局の電話が鳴る。それに出たのはリディナ部長だった。
「はい、ワーナル総合病院外科医局です」
『こちらアリスト総合病院のイツキと言いますが』
「あ!イツキ君!久しぶりだね」
『リディナ先生ですか!お久しぶりです』
イツキと名乗った彼はウィンとニコルの先輩医師だった。
「突然電話なんて……どうしたんだい?」
『実は、患者を受け入れていただきたいんです』
「病状は?」
『検査の結果が出ていないので何とも言えませんが、おそらく胃潰瘍かと思われます。でも……』
「どうしたんだい?そっちで受け入れられない理由でもあるのかい?」
『いえ、うちはただちょうどベッドの空きがなくなってしまって。ただ気になるのが患者の状態なんです。運び込まれたときにはひどく衰弱していて……』
「胃潰瘍なのにそんなに衰弱してるのかい?」
『そうなんです……。発見が遅れたわけでもないのに……』
「とにかく連れてきなさい。何とかしてみるから」
リディナ部長はイツキに患者の情報を聞き、電話を切った。
「ふむ……。この名前は……」
患者の名前は「荻野大祐」という。年齢は30歳。突然倒れたところを発見され、運び込まれたと言うことらしい。
「彼らと……関係しているのかもしれないな……」




