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生命の行方・第二部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第4章・思わぬ方向に向かっていく運命
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これからの課題

ウィンはカイに説明し始めた。

「じゃあ、カイのために簡単に説明する。前にマサヤを襲ったり、お前等を人質に取って立てこもった奴らがいるだろ?」

「ニコル先生と兄貴をさらった人たちっすね?」

「ああ、そうだ。そいつ等は俺の推測だとユキちゃんを奪い返して、邪魔者を始末しにくるはずだ」

「邪魔者?」

「マサヤとトシタカのことだ。まだ二人とも生きてることに気付かれてはいないと思う。でも、気付かれれば消しにくるだろう。実際、マサヤは二回狙われてるからな」

「一つ質問っす。トシさんがユキちゃんに会っちゃいけないのはなぜっすか?」

「ユキちゃんはまだ相手の監視下にあるはずなんだ。今のところは息を潜めてるみたいだけど、トシタカが生きてることを知ったら相手は動き出す。だからユキちゃんにトシタカを会わせちゃいけない」

「もし会っちゃったらどうなるんすか?」

「……それが分からないんだよな。でも、相手は人間の知覚を利用して監視してるっぽいんだ。マサヤにICチップ埋まってたの覚えてるだろ?」

「はい、リディナ先生が持ってたやつっすね!」

ん?過去形?リディナ先生が持ってた……???

「え?マサヤにはもうICチップ埋まってないのか?」

「ああ。ユキちゃんにはじめて襲われたときに出てきたんだ」

「そうだったのか……じゃあ、あいつ……ノーマークなんだ……」

ノーマークならばマサヤが狙われる可能性はほぼない。となると、やはり問題は俺と由季だ。

「そういうことになるよな。だから、万が一マサヤが生きてることに気づかれても場所の特定ができないから、その点ではあいつは安全だ」

「じゃあ、残る問題はトシさんとユキちゃんっすね!」

「と、言うわけで、次はそのICチップのことについてだ。マサヤの体内から出てきたICチップは警察に調べてもらったんだ。そしたら、いろんなプログラムが組み込まれてることがわかった。暗号化されて調べられなかった大元のプログラムと、発信器とか盗聴器とか……。マサヤが一度目に襲われたのはこのICチップの機能が回復したせいだと思う。今、トシタカのICチップは機能してないけど、ユキちゃんのICチップはそうじゃない」

「何でトシさんのICチップは機能してないってわかるんすか?」

ああ、そうか。あのとき一緒にいたのはニコルだったから、俺の仮説をカイは聞いてないのか。

「俺、死にかけてただろ?そのときにどうも助けてくれるらしいんだ。でも、それで力を使うから他のところに動力がいかなくなって機能が一時停止するらしい」

「ほー!すごいっすね!」

「話戻すぞー。ユキちゃんのICチップの話だよな。ユキちゃんは死にかけたわけじゃない。何がきっかけかは分からないけど、能力を持ったままで自我を取り戻してるから、また、何がきっかけで自我を失うか分からない。もしかしたらトシタカとあったことがきっかけになっちゃうかもしれない。そしたら、トシタカに襲いかかるかもしれない」

「おおお……マジやばのヤツっすね……。俺、本気で危ないことに首を突っ込んじゃったっす……」

「今更遅いぞ。お前は自分から言ったんだから」

「わかってます」

……由季には兵器の能力が残っている。で、マサヤにはない。俺はICチップ自体はあるものの機能はしていない。

「……」

「なあ、トシタカ」

マサヤが襲われたのは何故だ?タイムラグはあったかも知れないがそれだけとは限らない。

「……」

「トシさーん」

ん……?そう言えば盗聴器って言ってたよな?ということはこの会話は盗聴されてる可能性が……。

「……」

「おい!トシタカ!シカトしてんじゃねえ!」

「……うおっ!な、なんだ。ビビるだろ」

ウィンに怒鳴られた……。つーか俺、全然話聞いてなかった……。

「トシさん、なんか引っかかりましたか?」

「なあ、雅也が襲われたのは確か運び込まれてから10日後くらいだって言ってただろ?」

「ああ」

「その前に何かきっかけとか無かったか?」

「きっかけ?」

「何つったらいいのかな……普段と違うようなこと」

「ウィン先生、確かあの時ってインフルエンザから復帰した直後じゃなかったっすか?」

「あっ!あー!そうだ、それだ!あったぞきっかけ!」

「どんなことだ?」

「マサヤがな、襲われる前に俺にあの事故について話してくれたんだ。その直後に俺とマサヤが襲われた」

「お前も?」

「な、なんだよ?危うくついでで殺されるところだったんだぞ?」

「……」

なんか、タイミングがよすぎないか?

マサヤが襲われたのは運び込まれてから約10日後。そして事故について話した直後だ。

俺はまだ運び込まれてから二日しか経っていない。だが、盗聴されている可能性もありそうだ。

「タイミングよすぎるよな……。それ」

「ああ、それは俺も思ったよ……」

「マサヤとお前の会話は確実に盗聴されてたな」

「……そうだろうな」

「今もし、万が一にこの会話が盗聴されてたらどうする?」

「どうすることも出来ないだろ?」

「そうっす。ウィン先生だって兄貴と一緒にいた訳じゃないのに襲われたっす」

「……そうか……」

「……トシタカの予想が外れることを祈るしかないな」



確かに俺の不安は杞憂に終わった。だが、事件はまだ終わらない。

なぜなら……始まってもいないのだから。

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