カイとトシタカ
やがて、ニコルも帰り、部屋には俺と眼鏡とカイとセルの四人が残った。
「トシタカ、君はいいの?休んだりしなくて大丈夫?」
眼鏡に尋ねられた。
「ん?ああ」
「ホントに?」
「ホントだって。そんなこと言ったらお前はどうなんだってことになるじゃねえか」
「僕は平気だよ。普段から気をつけてるし」
「キース……その言葉、グサッとくるっス……」
カイがベッドに横になったまま呟く。
「ごめん!別にカイが気をつけてないって言ってるわけじゃないんだ!」
「わかってるッス……」
キースの言葉にしょんぼりしているカイ。
「なあ、お前結構しゃべってるけど、平気なのか?」
「平気っすよ。もうそろそろ点滴も終わるし、そしたら動けるッス。あ!トシさん!そしたら一緒にロナさんとこに行きましょう!」
「なんで?」
「……トシさん、冷たいッス……」
俺の言葉にまたもげんなりするカイ。
「いやいやいや、俺はただ理由が聞きたいだけだ。誰も行かないなんて言っちゃいねえだろ」
「なんだ、理由っすか。由季ちゃんに会いに行くんです」
……由季か。なんか嫌な予感がするけど……。
「わかった。一緒に行ってやる」
「ホントっすか?」
「ああ」
点滴の終わったカイは早速俺を連れて病室を出た。しかし……
「……」
「……」
会話がない。
「……トシさん、なんか話しましょうよ。俺、静かなのは苦手ッス」
その沈黙に耐えられなくなったのか、カイが口を開く。
「そうか。じゃあ自己紹介でもするか。俺は斉藤俊貴。19歳だ」
「俺はカイっす。歳は16っす」
「へえ、俺お前のこともっと若いと思ってたよ」
「やっぱりですか……。俺チビだから、いつも『えっ中学生くらいだと思ってた』とか言われるんす……」
「でも、16だろ?まだ伸びるだろ」
「そおっすか?ホントに?そう思ってて平気っすか?」
カイは何故かすがるように俺に聞く。
「そうだなー。俺は15くらいから伸び始めたからな」
「じゃあ、俺もまだ伸びる余地があるんスね?」
「当たり前だろ。まだ若いんだから、諦めんなよ」
「トシさんの言葉は説得力ありますねぇ。俺、なんか自信が湧いてきたっす!」
「それならよかった」
カイは調子に乗り始めたらしく、さらに喋る。
「俺、長い間入院してるんすけど、みんな先に退院してくんすよ。自分の病気が治りにくいのは知ってるんで、うらやましいとかそう言う感情はもうないんですけど、でもやっぱ寂しいんす」
ウィンはカイが一番重症だと言っていた。薬で何とかしているとも。
「お前の病気、手っとり早く治る方法ってないのか?」
「ありますけど……お金もないし、成功するかどうかもわからないっす」
「それって?」
「手術っす」
「……」
「なんで黙るんすか」
「え、いや……簡単に考えてたから申し訳なくて……」
「トシさんが考えてるほど深刻じゃないと思うっすよ。まあ、場所がアレですから失敗したら死にますけどね」
カイはあまり気にしていないらしい。結構さっぱりしている。
「……お前、強いな」
「そんなことないっす。一時期は怖くて寝られなかったときもあるっす。不安で……どうにかなっちゃうんじゃないかって思ったこともあります。でも……まだ大丈夫だから、こうしていられるんす」
カイの「まだ大丈夫」はまるで自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
「……やっぱお前、強いよ」
「じゃあ、お言葉に甘えてほめてもらっちゃいます」
俺はカイの頭を軽くたたいた。
「トシさん、痛いっす」
「気にすんな。俺なりの愛情表現だよ」




