心優しい人
『はい、お電話代わりました』
数秒間の保留音の後、女性が電話に出た。
「あ、すいません。私、スギサキマサヤの主治医のジャーナルと申します。このたびはマサヤがご迷惑おかけしまして、申し訳なかったです」
『いいえ、そんなこと気にしないで下さい。私、息子が増えたみたいでとっても嬉しいんです』
彼女は本当にうれしそうな声でそう言う。
「あの、無理を承知でお願いしたいんですけど、マサヤを……少し預かっててもらえないですか?」
『ええ、かまいませんよ。それに、昨晩は熱出して本調子じゃないみたいですし』
「え!熱出してたんですか!」
『そうなんです。たぶん……慣れない環境と疲れが原因だと思うんです』
「なるほど……、あ、じゃあ、傷が開いてたりとかはしてなかったんですね」
『はい。大丈夫ですよ』
「よかったぁ……。そいつ、すぐ無茶するんで、危なそうだったら止めてやって下さい」
『……ふふふっ。ジャーナル先生ったらお父さんみたいですね』
「おとっ……!?」
お父さんなのか?俺、マサヤと10歳も歳離れてないのに……。せめて兄ちゃんとかが良かった……。
『あ!でもまだお若いですよね?失礼しました』
「いえいえ……。あ、そうだ。連絡先をおうかがいしていいですか?」
『ええ、いいですよ。私はイグレントと申します。電話番号が……』
イグレントさんは快く連絡先を教えてくれた。
『じゃあ、そろそろマサヤ君に代わりますね。まだまだ話し足りないでしょうし』
イグレントさんは妙な心遣いでまたマサヤと代わってくれた。
「もしもし、先生?」
エリーさんはまだまだ話し足りないだろうということで電話を代わってくれた。
『あー……マサヤ、お前、しばらくそこにいるか?』
「え?うーん……」
『お前本調子じゃないんだろ?まあ元々怪我してたからうちの病院いたわけだけどさ。でも、たまには病院以外の所で過ごすのもいいだろうと思って』
先生はのんきにそういった。でも……
「……先生、あいつらって俺のこと、狙ってるんでしょうか?」
『大丈夫だ。あいつ等はお前を見つけだす術を持ってないから。今まで襲われていたのは、ICチップがあったり、ユキちゃんがいたりしたからだ。今のお前はあいつ等には見つからない』
前は……行き過ぎなぐらい過保護だったウィン先生は自信を持って俺に大丈夫だと言ってくれる。
「じゃあ……、俺しばらくここにいます。リフレッシュして戻りますから」
『ああ。ゆっくりしてけ。遅くなっても、俺は待ってるからな』
先生は待っていてくれる。だから……俺も先生を信じていよう。