繋がる世界
夢を見た。今まで思い出したくなかったあのときの記憶……
「あれを破壊するしかない……!」
研究者は殺戮兵器と化した俺に銃を向けた。
次々に発砲し続ける研究者たちを俺は血に染めていく……。
(何で……!?何で今頃っ……!俺は、もう……!嫌なんだ!認めなきゃいけないのはわかってる……っ。でも……!)
「マサヤ君!」
「………!!」
「よかった……。心配しちゃった」
目を開けると看病してくれた二人のお母さんが俺を心配そうに見つめていた。
なかなか落ち着かない呼吸を整え、落ち着いてきたところで上体を起こす。
着ていたTシャツは汗びっしょりだったけど熱は下がったみたいだ。だるさは全くなかった。
「昨日と比べると元気そうね。気分はどう?」
「……熱も下がったみたいです。ご心配おかけして、すみません……」
「いいのよ。でも、ずいぶんうなされてたわ。汗もたくさんかいちゃって。大丈夫かしら?」
「ちょっと……嫌な夢見ちゃって……」
「熱だしてるときって、どうしても嫌な夢見ちゃうのよね。その、汗かいたお洋服着替えちゃいましょ?サイズが合うかわからないけど、お父さんの服貸してあげるから」
お母さんは部屋のタンスからTシャツとジャージを引っ張り出す。
「おうちにいるぶんにはこれで大丈夫かしらね?はい、じゃあ着替えたら朝ごはん一緒に食べましょ。いろいろ聞きたいこともあるから、じっくりお話聞かせてね?」
お母さんについていく。彼女の名前はエリーさんというらしい。
「あ!マサヤくん!大丈夫なの?」
リビングにつくとマリアが心配して近づいてきた。
「うん。心配させちゃってごめんね。もう大丈夫だよ」
「良かった良かった。じゃあマサヤ君も一緒にご飯食べよー」
エリーさんが用意してくれたのは、パン、牛乳、そして目玉焼き。
こんな食事するの、久しぶりだ。入院中はご飯食が多かったからな。
「どうぞ、召し上がれ」
「はい、いただきます」
「ねえ、マサヤくん」
パンをほおばっていると、マリアに声をかけられた。
「ん?」
「昨日は詳しいことぜんぜん聞けなかったからさ、今聞いてもいい?」
口の中の物を飲み込んでから、俺は答える。
「うん、いいけど……教えられることはあんまりないよ」
「いいよいいよ」
「じゃあ早速……」
俺が頷くと、マリアではなくエリーさんに尋ねられた。
「マサヤ君はあそこの研究所にいたんだよね?あそこはいろいろあやしい噂が飛び交ってるけど、マサヤ君は関係者なのかしら?」
「いいえ、違います。……でも、あやしい噂って言うのは本当かもしれません。俺、あそこの研究者たちに拉致されたんです」
「らち?」
マリアは首を傾げる。
「さらうって意味よ。……って!それってとっても大変じゃない!しかも爆風で飛んできたって事は……下手したら死んじゃうところだったじゃない!」
「そうなんです。もしかしたら俺は……あ!」
かなり重要なことを思い出した。
「マサヤくん?どうかした?」
「俺、死んだと思われてるかも……」
そうだ。きっとみんな俺が爆発に巻き込まれたと思ってる。
あいつは……、俊貴はどうなっただろう……。
「マサヤ君、よかったら電話貸すわよ」
「それが、連絡先とか全く聞いてなくて……」
「電話帳があるよ!」
マリアは電話帳を持ってきてくれた。それの表紙には「北マルア地方版」と書かれている。
「ここ、北マルアだったんだ……」
俺が飛ばされる前にいたところはワーナル地方だ。
「もしかして、これじゃダメ?」
「うん……、俺のいた場所ってワーナル地方なんだ」
「なんだ!そう言ってくれれば話は早いよ!」
マリアはそう言うと今度は「ワーナル地方版」を持ってきた。
それを受け取りページをめくる。
意外とすぐに見つかった。
「あ、あった」
「やったね!じゃあ早速……」
「マリア。朝ごはん食べてから。あんまり急かさないの」
「あ、そっか」
マリアは席に戻り、食事を再開した。
「そう言えば、リッツさんは?」
「お姉ちゃんは仕事だよ。昨日の爆発事故で忙しいんだって」
警察か……。あまり詮索されなかったから、今のところは問題ないかな。
「警察って言っても鑑識さんだからね。マニアックなところよ。あっ、そうそう!リッツの話によると、あの爆発事故、ワーナルの警察の人とお医者さんがその場に居合わせていたそうよ。しかも、瓦礫の中からひとり救助したって!」
……まさか、それってあいつなんじゃ?
「その助け出された人ってどうなったんです?」
「さあ……そこまで詳しく聞いた訳じゃないから……」
「……そう、ですよね」
朝食を済ませたあと、俺は受話器を持った。
やばい……緊張する。
ボタンを押して、耳に当てる。
数コール後に電話は繋がった。




