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生命の行方・第二部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第1章・飛ばされてきた場所
1/73

アクロバティックマリア

彼女は走っていた。空を見上げながら、全速力で。

「マリア!急いで!」

「わかってるよぉ!」

友人に急かされ、彼女……マリアは高く飛んだ。民家の屋根に着地し、さらに走る。

「わぁ~!マリア、さすが!」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!マリア!はやくはやく!」


何故、彼女がこんなアクロバティックな事をしているのか。それは、数分前に遡る……。


ドーンという音が近くで響いた。

マリアは下校中だった。友人と一緒に帰っている彼女は、13歳、173センチ。他の友人より頭ひとつ以上背の高い彼女には見えてしまった。

音のした方向から何か飛んできていた。そして、それは人だった。

「人だ!みんな、あの飛んできてるの人だよね!?」

「ホントだ!」

「マリア!あのままじゃあの人地面とぶつかって死ぬかも!」

「あわわわっ!マリア早く!」

「え!あたし!?」

「そうだよ!マリアならできる!」

「わ……わかった!」

彼女は落ち始めてきている人を助けようと、全速力で走り始めた。


マリアは屋根から屋根へ飛び移りながら、だんだんと落ちる人に近づいてきていく。まだ若い男だ。おそらく自分よりもちょっと年上くらいだろうと、勝手に見当をつけラストスパートをかけた。

「もーちょいっ!」

手を伸ばし、落ちてきた男を見事にキャッチした瞬間。



ばき。



「えっ、うそン……」

脆くなっていた倉庫の屋根に穴があいた。



バキバキバキっ、ドシャー!



「マリア!」

「大丈夫?」

「あいたたたたた……」

マリアは人を抱えたまま落ちたため、腰を強打してしまった。

「マリア、その人大丈夫かな?」

友達に言われ、彼女は抱えたままの男を見た。

どうやら完全に気を失っているようだ。額から一筋、血が流れていて、右頬を腫らしている。

「どこかで手当してあげなくちゃ」

「ここからだと、マリアの家が一番近いよ!」

「そうだね、じゃあ、うちに行こう」

「マリア、このまま荷物持ってたげるからね」

「うん。ありがと」

マリアは立ち上がり、気を失っている彼を抱え直した。

倉庫の管理人にきちんと謝り、マリアたちは家に向かった。



「お姉ちゃん、大変なんだよ!人が落ちてきて!」

マリアは手当を友人に頼み、警察関係者である姉に電話をかけた。

『何?人?バカ言ってんじゃないわよ。今忙しいの!さっき爆発事故があって、調査しに行かないとなんだから』

「え?爆発?…あっ!そうそう!その爆発で人が飛んできたんだよ!それで落ちてきたの!」

『……まじ?』

「うん、まじまじ」

『今その人どうしてるの?』

「気絶してる」

『怪我は?』

「どうだろ?ねえ、そのお兄さん怪我してる?」

「えーっと、おでことほっぺかな。あ!包帯巻いてある!いっぱい!」

「え!ホント?お姉ちゃん、いっぱい包帯巻いてあるって!」

『……どうしよう、あたし抜けられないしなあ……。じゃあ一応、フィルに言っとくわ。そのうちくると思うから、待ってなさいね』

「うん、わかった」

マリアが電話を終えて、友人の所に戻ると、手当はもう済んでいた。彼の額にはでかい絆創膏が貼られ、頬には冷却シートが貼られていた。

「ねえ、マリア、どうしよう?包帯ね、ホントにたくさん巻いてあるの。胸とおなかとあと腕にも巻いてあったよ」

「怪我してるかもしれないんだけど……あたしたちが取っちゃうわけには行かないし……」

「お姉ちゃんが、フィルちゃん呼んどいてくれたから、来たら伝えようよ」

「……そうだね」

心配な気持ちもあるが、どうすることもできない。

彼女たちは宿題をしながら待機していることにした。

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