最低ヒーロー
そのヒーローは最悪だった。
「また負けたー。いったい、いつになったら勝てるんだ?」
ヒーローは万馬券を握りしめていた。そのヒーローは賭け事が好きだった。
「クソ!もう金がねぇ!」
また、金を借りようと考えていたが、まだ先月借りた金を返せていない。
「オーイ、佐藤さーん」
ヒーローの名前は佐藤 悠真。45歳で独身。一人暮らしだ。
「先鉈金融さん…」
「先月貸した、お金を集金しに来ました。」
悠真は、今の万馬券を当てて返そうとしたが無理だった。
「お金、今無いんです」
「じゃあ何でここにいるんですか」
「馬を見に」
嘘だ。しかし、口が裂けても本当のことなんて言えない。言えるわけがない。
「そうですか~、んな訳あるかボケぇ!早返せ!コラァ!」
「今、無いんです」
「働け、ヒーローやろ。お前」
職業はヒーロー。しかし、今までヒーローのような良い活躍はしていない。
「働いたら、返せるやろ」
無理だ、ヒーローと言えど直ぐに金が入るわけでわない、スポンサーがついて、テレビ出演やグッツを出さないと金は入らない。
「半年や、半年待ったるから活躍せぇ」
「半年も良いんですか!」
「ああ、二倍で返したらな」
二倍、簡単だ。活躍すれば良いんだから…と悠真は思っていた。そして、悠真はヒーローとして世の中で活躍する準備をするために家に帰った。
次の日
(何をしたら良いんだ?この世のなかに怪物は存在しない。てか、居たらこの仕事に就いていない。事件は?事件は、日常的にそんなにないし)
「そうだ、あそこに行こう」
そう言うと、靴を履いて小走りで出ていった。
数十分後
「なんで?どうして?どうして来たの?ここじゃなくて、ヒーローの所に行ってよ。」
ここは、先鉈金融。悠真が金を借りた所だ。
「活躍したいが、何をすれば良いんだ?」
「普通に良いことすればいいんだよ」
普通に返された。しかし、後ろから声が聞こえた。
「山下~適当すぎだ~」
「うっす、すいません」
「仕方がない、俺が教えてやるよ」
渋くて、とても低い声が聞こえた。奥から男がやって来た。よっこいしょ…と言ってソファーに座った。
「君は、ヒーローがする良いことって何だかわかるか?」
「それは…犯人を捕まえたり、怪物から皆を助ける」
悠真は自分が思っているヒーローの良いところを言った。
「そうか、君に質問だ。大きい事件しか解決できないヒーロー、小さなトラブルや困った事しか解決できないヒーロー、どっちになりたい?」
どちらもヒーローだ。僕は悩んだ結果。
「大きい事件しか解決できないヒーロー」
男は、ため息をついた。やれやれ…という感じだ。
「大きい事件を解決して何になる、その事件から人は、ヒーローが助けてくれるから大丈夫、そう思ってしまう。ダメなんだ。人は努力をしなくなると生きれなくなる。」
「しかし、ヒーロー以外に事件を解決できる人はいないんじゃ」
その言葉を聞いて男は机を叩いて言った。
「ヒーローも人間だ!人だ!つまりなぁ、誰でもなれるんだよ!いいか、病院とか警察があるんだから!本当はヒーローなんていなくて良いんだよ!」
その言葉を聞いて目が覚めた。何でヒーロー何かになろうとしたんだ?…そう思った。
「わかったな、ヒーローなんてこの世に要らない」
そうだ、要らないんだ。僕は、お金が欲しかった、有名になりたかった、ただそれだけだった。甘かった。
「仕事なら、用意してやる。ここで働け」
「はい、わかりました」
最低ヒーロー。彼は、ヒーローになることを諦めた。最低ヒーロー。