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タンク・ワールド  作者: 米 三昧
46/65

第四十六話 巡航戦車クルセイダーマークⅡ、Ⅲ

毎度、拙作をお読みいただき誠にありがとうございます。

難産でした。

遅れてすみませんでした。

 「履帯の跡がありますね。」


 密偵さんがそういった。

 まあ、密偵さんが言うまでもなく履帯の跡がくっきりと残っている。


 「ジャッカルが来たのは間違いないようですね?」


 マーシャは興奮してそう言っているが。


 「・・・落ち着きなよ。まだジャッカルとは限らない。」


 「剛志君の言う通り、他の人の可能性がある。まあ、ここに来る

 ハンターなんて滅多にいないからまず間違いはないだろうが。」


 アレクサンドルさんもそう言ってマーシャをたしなめたが。

 いよいよ戦いの予感に興奮しているようだ。


 そう言う剛志もジャッカルが居るのは間違い無いと思った。

 だが・・・


 「履帯の数から敵は30両程と思われます。」

 密偵さんがそう言った。

 専門職がそう言うんだからそうなんだろう。


 「待ち構えているだろうか?」


 「どうですかね。それこそわかりません。斥候を出しましょう。」


 アレクサンドルが部下とそう会話し、密偵さんが陰に隠れながら

 奥へ進んで行った。


 このデラスカズアは、何も知らない現代地球人が行ったら。

 工業団地か発電所か。と思うだろう。

 色んな施設用の建物が建っているのだが。見た目では中身を類推する

事は難しい。

 だが、ここは元魔道炉の研究施設。生命力を魔道力に変換する装置の

研究がおこなわれていた場所だ。


 こっちの世界の歴史を紐解くと、この手の施設は何度か作られている

のだが。その都度破壊されている。

 魔道戦車等の魔道兵器が中心であるこの世界では、魔道炉は最優先

攻撃施設なので、戦争が起こる度に破壊されてしまうのだ。


 この世界の魔道はそれこそ千差万別で、元となるエネルギーも

当然バラバラ。一度破壊されてしまうと簡単に作り直せない。

 WWⅢが終了した時点で、まともに稼働する魔道炉はほとんどなく。

魔道戦車もそれ以降の生産量は激減してしまっている。


 剛志達が乗っている魔道戦車も、ほとんどがWWⅢ前の生産物。

 剛志の剛丸などは、元がリンカーン・マシーンという酷さなので、

だれも使わずにほっとかれたと思われる。

 ユーティリシアの戦車も元がクリスティー戦車だからこれもほっと

かれたのだろう。

 進化型を手に入れようとしたら、そう言ったなんでこんなの作った?

と突っ込みたくなる旧型の車両ベースのものしかいまでは手に入らない

という事だ。

 剛志にとってはむしろこっちの方が良いのだが。

 普通の人は苦行が好きではない。


 10分ほどしたら密偵さんが帰ってきた。しきりに首を捻っている。


 「どうした。ジャッカルは居たか?」

 アレクサンドルの質問に対し、


 「30両程のT-10を発見しました。ジャッカルもいます。」


 T-10重戦車。旧ソ連の重戦車で開発名称はIS-8。

 IS-3とIS-4以降、IS-5、IS-6、IS-7は開発はされたものの、

 全部没となってしまった。

 理由は装填弾薬数が少ない、機動力が低すぎる、等様々。

 IS-5以降の失敗の経験を踏まえてできたのがIS-8ことT-10。

 IS-3とIS-4の良いとこ取りのような設計であり、

 新機軸としてはラジエイターへの冷却送風機構として

エンジン排気のエネルギーを駆動させるブースターを採用。

 これが想像以上に上手くいき、機動力を上昇させた。

 だが、この戦車は量産化が決まったにも関わらずなかなか生産

されなかった。

 理由はエンジンの生産工場が現トルクメニスタンにあったためで、

技術的問題により生産がままならなかったため。

 責任を取らされる事を恐れた技師達はIS-9、IS-10等の設計を

行い何とかしようとしたのだが。

 何ともならなかった。

 だが、そのような事態を一変させる事態が起きた。

 ヨシフ・スターリン死去である。

 これにより、スターリン色払拭しようと言う動きが起き、

 IS-8はT-10となって採用されたのである。

 T-10シリーズは8000両を超える生産量を誇るが、全てソ連内部のみ

の生産と使用。

 外部には一切出さなかった。

 ソ連はこの後は、中戦車と主力戦車に力を入れるようになり、

T-10は最後の重戦車となった。

 1968年のワルシャワ条約機構5ヶ国軍によるチェコスロヴァキア侵攻

時にT-10は姿を現したが。中戦車に劣らぬ機動性能。機械的信頼性の

高さからくる稼働率の高さを見せつけ、西側諸国を驚かせたと言う。


初期型

 最高速度時速43Km

 最大装甲厚200mm

 主砲:43口径122mmライフル砲D-25TA


T-10M(後期型)

 最高速度50Km

 最大装甲厚250mm

 主砲:55口径122mmライフル砲M-62T2


 「でかした。・・・で?なんでそんなに首を捻っている?」


 「それが、何もせずにじっと待っているんですよ。

 まるで何かを待っているかのようです。」


 「それは妙だな?・・・援軍でも来るのか?」


 「アレクサンドルさん。冗談抜きに援軍の可能性はありますよ。」


 「剛志君・・・援軍って?奴の軍隊は前に滅ぼしたろう?

 何が援軍としてくるというのか?」


 「いえ、確かにジャッカル軍は以前壊滅しました。ですが・・・

 妙だと思いません?なんであいつらT-10何ぞ持っているんですか?

 誰かが協力しているとしか思えない。」


 「確かにな、それは変だ。ジャッカルのIS-4軍団は倒した。

 誰が奴に戦車を供給したんだ。」


 「それを考えると援軍待ちもありえる。とするとどうしますか?」


 「うむ。今仕掛けて途中から援軍がきたら挟み撃ちに会って

 しまうな。しかし、放っておいても援軍が来たらチャンスを逸して

 しまうかもしれない。今奴は油断しているようだしな。」


 「今仕掛けて殲滅するか。持久戦ならばこちらも援軍を呼ばないと

 いけません。」


 アレクサンドルはしばし悩んだようだが。すぐに決断した。


 「よし、行くぞ。今仕掛ける。」


 ですよねー。じゃないとなんで少数精鋭で来たのかわかりません。


 「聞いたかお前ら。戦闘準備だ。魔道補助を全開。」


 仲間が次々と魔道防御、魔道補助魔道を掛けていく。


 「一気に決着をつける。道幅の関係から隊を三つに分ける。

 剛志君達はCルート、我アレクサンドル以下はAルート、

 マーシャ以下はルート。見敵必殺。かかれ!」


 「剛志、クリス、アムリシア機を前面に出す。魔道防御が切れたら

 直ぐに補充急げ。

 コンドル、ファイス、ユーティリシア、クラが第二列。

 第一列が抜かれたら直ぐに前に出て代わりに前面に立て。

 第三列はテニトン、シナモン、エリオット。前と後ろに注意しろ。

 特に後方。敵援軍が来たら直ぐに知らせろよ。」


 アレクサンドルとマーシャも部下に声を上げて指示を飛ばしている。

 剛志隊は移動開始。Cルートと指示された場所へ向かう。


 「こちらアレクサンドル。Aルート侵攻開始する。」


 「お兄様、少しお待ちください。Bルートまだ到着していません。」


 焦りすぎというか。血気流行っているんだな。

 マーシャの方が落ち着いているという。


 「CルートOK、何時でもいける。」


 「いやー緊張するね。」

 「?何がだファイス?」

 「敵はアストラル・ギア持ちなんだろう?初めての経験じゃん。」


 それだけ軽口が飛ばせれば問題ないな。流石コンドルとファイス。

 頼もしいこった。


 「Bルート準備よしですわ。」


 「よし、進軍だ。突撃!」


 「剛志隊も行く。攻撃開始。」


 「マーシャ隊突撃!」


 おお、流石に泡喰ってるな。ジャッカル達も。


 「なにっ?誰だ?」


 「ははは、ジャッカル、天誅だ。大恩ある親父を刺して逃げ出す

 等、畜生にも劣る所業。覚悟!」


 乗ってるなあ、アレクサンドル。


 完全に不意打ち状態ではあったが。

 ジャッカルも流石で直ぐに立て直してきた。


 最初の砲撃で倒せたのは5両。

 現状は30両対25両だから、勝利にはまだほど遠い。

 若干の優勢か。


 「ふん、そんなものか。」

 「何を言う?ジャッカル。最早全滅は時間の問題だ。」

 そこまで言うかアレクサンドル。


 「ふっ甘いぞアレク。お前のその甘さ。嫌いではなかったがな。」


 不敵に笑うジャッカル。

 何か奥の手でもあるのか?

 ・・・そうかここは魔道炉。そしてアストラル・ギアとは言わば

 マジックアイテム。


 がおーん。がおーん。と音が響く。魔道炉が起動した音だ。


 「ふはははは。これで我は無敵よ。」


 ジャッカル達の車両が蒼く光り始める。

 眩しいと言う感じではない。何か幽霊みたいな感じだ。


 「何だ?くそっ撃て撃て撃て!」

 アレクサンドルが慌てている。

 予想外だったのだろう。


 だが今度の射撃で倒せたのは3両。

 残り22両。


 「ふはは、恐怖するがよい。」

 ついにジャッカルの反撃。


 Aルートに集中攻撃。

 7両が吹き飛んだ。

 いや、強い。

 T-10はM1A2エイブラムスより古い機体で、

 こんなに攻撃力があるとは思えない。

 かなりパワーアップされている。


 「反撃だ。撃ち返せ。」


 アレクサンドルが気炎を上げている。

 彼の配下は10両あったから7両もやられたら凹みそうなものだが。

 まだ気力が衰えていないのは大したものだ。


 「弱点を狙って撃ちなさい。どんな敵にも弱点は存在します。

 タージマの教えを思い出しなさい。」


 マーシャから的確な指示が飛ぶ。

 その通り、魔道防御を施した場合。防御力を?%UPできる。

 この?の部分は実力により上下するのだが。

 あくまで%で上がる以上、強い部分は凄く強化されるが。

 弱い所はやっぱり弱いのである。


 「流石マーシャ。的確な指示ではないか。

 ふふふ、飛んで火にいる夏の虫とはこの事。この戦いの後、

 我が妃としてくれるわ。」


 「・・・ダッケテ、貴方は確かに強引な事もする人でしたが。

 そんなに酷い人ではなかったはず。・・・何があったのです。」


 「偽善等よいわ。我は生まれ変わったのだ!我はジャッカル。

 この世を支配する。」


 大口叩くなあ。この世がどのぐらいの広さか知っていてそんな事

言うのか?地球だって思ったより広いんだよ?

 ましてこの世界。どんな広さがある事か。


 砲弾が交差し、アレクサンドルのAルート側はもうアレクサンドル

だけになった。

 マーシャのBルートは源さんとマーシャが頑張っている。

まだ部下も4人ほど残っている。

 ジャッカルは残り18両。


 「剛志隊に次ぐ。全隊前進。全機で攻撃する。魔道防御を全員に

 展開急げ。」


 このままではじり貧であるから。勝負に出た。

 アムリシア、クリス、ユーティリシアそして剛志が魔道防御

 を次々にかけていく。


 「ちっ・・・魔道防御か、味な真似をする。しかしこちらの有利は

 変わらんよ。」


 ジャッカル隊の装填速度が思ったより速い。IS戦車は装填速度の

遅さも問題点の1つだったはずだが。これもアストラル・ギアの

効果なのか。


 再び砲撃が交差し、ジャッカル隊は残り14両。

 それに対して、こっちは剛志隊とマーシャと源さんとアレクサンドル

だけになってしまった。

 アクティブ防御システムも次々に起動。

 爆発反応装甲も使ってしまった車両も多い。


 「まずい、まずいわよ剛志。」

 クラさんが焦っている。


 「いや、大丈夫。問題ない。」


 剛志は強気に返す。


 砲撃が交差し、

 マーシャ機も大破。マーシャが脱出してくる。

 マーシャ配下機も源さんを残して全滅。

 アレクサンドル隊はアレクサンドルのみまだ戦闘中。

 剛志隊は・・・被害なし。魔道防御舐めんな。


 「ちっ。やはり貴様は残っているようだな。」

 あ、ジャッカルが剛志をロックオンしました。

 まあ当然か。前回ジャッカルを倒したのは剛志だし。

 でも車両が大分変ったし、声を交わした覚えもないから。

 ひょっとしたらばれないかなーとか思ってたんだが。


 ジャッカル隊は6両が撃破残りジャッカル含めて8両。

 車両数はこっちが多い。このままいけるか?


 速射性能を生かして剛志隊から数発砲撃。

 ジャッカル隊はさらに3両が吹き飛び、残りが5両。


 源さんも砲撃。残り4両。

 やったか。


 「ジャッカル。今度こそお前の最後だ!」


 熱いなあアレクサンドル。

 しかし、アレクサンドルは大分鍛えてきたな自分の魔道戦車。

 前回はジャッカルにこだわってジャッカルばかし狙っていたが、

今回は周りの取り巻きから攻撃している事も好感が持てる。

 ジャッカルの砲撃を弾きまくっているが。スキルのレベル高いな。

 自分の魔道戦車との繋がりも上手くいっているようだな。

 スキルの発動率が高い。


 前にも言ったが。本来スキルというものは魔道戦車に自分で考えて

実行してもらいたいものだ。だが、魔道戦車の魂は初めの段階では

赤ちゃんみたいなもんだ。意思の力なぞ期待できない。


 そこで確率発動するようにしてあると言うのがスキルの実態。


 例えば、敵弾が命中する瞬間。防御力アップや防盾が発動して

欲しい訳だが。

 赤ん坊状態の魔道戦車にはそんな事分からない。

 確率で発動するように、昔の人が魔道戦車のスキルを作った訳だ。

 でも本当は自分で考えて自分でスキルを使って欲しい。

 それには魔道戦車を自分と共に鍛え上げる必要がある。


 アレクサンドルは上手くやっているようだ。


 またまた砲撃が交差する。

 剛志隊に飛んできた弾はみな魔道ではじく。

 魔道万歳。


 こちらの攻撃が次々と敵車両に命中し、

 ついにジャッカルのみとなった。


 「何か言い残す事があるかジャッカル?」


 余裕を取り戻したアレクサンドルがそういう・・・が。


 「くくくっ何をバカな事を。こんな戦闘茶番にすぎん!」


 「何っ?」


 ジャッカルの奴が何か手に持ったボタンを押す。


 すると・・・激震が辺りを襲う。


 「な、なんだ?これは?」


 皆狼狽する。後一歩で勝利だったのだが。


 「くくくっ魔道転換炉を暴走させた。これでお前達もおしまいだ。」


 「くそっ。生きているものは他の戦車に乗り込め。急げ。」


 縦横ななめに強烈に揺さぶられて真面に動けないが。

 魔道戦車に命令して各員あわてて退却する。


 「ああっ。」

 マーシャさんが転んだ。


 「何やってんだ嬢ちゃん。」


 源さんがマーシャを拾い上げる。


 危ない。


 「させるか。」


 剛丸を源さんとジャッカル機の間に割り込ませる。

 スキル:アブソープション発動

 弾を弾く。


 「ジャッカル。てめえ。」

 「くくくっ。剛志だったな。あれから調べたんだ。」

 「だからなんだってんだ!」

 「・・・てめえはゆるさねえってこった!」


 ジャッカル機が急発進した。なんだこの加速は、

 T-10が機動力あるっていってもこれじゃ軽戦車並みだ。


 「てめえは・・・ゆるさねえ。逃がさねえよ。」


 なんだと?

 いきなり車体前部がめくれあがって。

 ウィンチというかマニュピュレーターアームが飛び出した。


 「しまった。」

 剛丸を上からがっちりと掴みやがった。


 「剛志隊長!」

 「剛志!」

 仲間が呼びかけてくるが、ちくしょー。動かねえ。


 「剛志。こっちに飛び乗って。」


 ユーティリシアが近づいてこようとするが。


 「くるな!もう時間が無い。・・・俺は大丈夫だよ。

 ユーティリシアは皆を連れて戻ってくれ。・・・

 なるべく早く帰るからさ。」


 「剛志・・・」


 「ユーティリシア、剛志がああいったら梃子でも動かないぞ。

 全速力で離脱だ。・・・帰ってくるんだろうな剛志?」


 「ふん、必ず帰るったら帰るよ。コンドル。

 俺はな、嘘をついた事が無いのが自慢なんだ。」


 「・・・この大嘘つきめが。」


 コンドルとファイスがユーティリシアを促して離脱していく。


 「さて、最後に悪あがきさせてもらうぜ。ジャッカルよう。」


 「ふん。そう簡単には行かねえよ。剛志!」


 爆発というか、閃光が辺りを真っ白に染め上げた。

 音もなく、熱もなく、ただ懐かしいような。


--- 3時間後 ---


 「帰ってこない。剛志が帰ってこないよ。」


 「落ち着け。ユーティリシア。」


 「あいつは帰って来るって言ったんだ。」


 「でもコンドル、ファイス。ここには」



 何にもないよ。

 デラスカズアは消滅した。



 今回の戦闘による魔道戦車の進化は以下の通り。


 シナモン機2段階進化。

 ギナ・ランガー級マークⅩⅩⅩⅡ


 ユーティリシア機1段階進化。

 T-72AV戦車に進化。

 「EDZ」(エレメントゥイ・ディナミーチェスコイ・ザシータ=

 爆発防御ユニット)と呼ばれるERAを装備。

 それに合わせてFCSも新型に換装した。

 FCS関係を有機的に繋ぐシステム(1A40)が導入された。

これはそれまで、レーザー測遠機で得たデータを砲手が

マニュアル操作によりアナログ弾道計算機に入力し、諸元を得て

主砲操作を行うという手順を経ていたために、せっかく

砲塔と主砲の安定装置が導入されていてもT-72戦車シリーズは

事実上走行間射撃が不可能であったことを改善し、

併せて操作時間の短縮を図ることを狙ったものである。

 ただし、上記改修に伴い重量が増加したため機動力が落ちた。

 最高速度時速55Kmである。


 エリオット機は2段階進化。

 まずは歩兵戦車ブラック・プリンスだ。

 1943年にチャーチル歩兵戦車の車体を拡大して17ポンド砲を搭載

する発展型が開発されることになった。

 「スーパー・チャーチル」と呼ばれていたが。やが正式名称が

ついた。それがブラック・プリンス。A43の通し番号も貰っている。

 チャーチル譲りの装甲は最大装甲厚152.4mm

 17ポンド砲はあのシャーマン・ファイアフライにも積まれた品。

 威力は折り紙つきである。

 が、こいつも遅い。めっちゃ遅い。

 最高速度時速17.703Km

 よって没である。

 エンジンの換装も考えたらしいが。エンジン出力を上げると

 足回りの大改造が必要となる事から断念してしまった。

 また、この頃の英国は巡航戦車と歩兵戦車の2パターン制は

 いかんのじゃないか?と疑問に思いつつあったようだ。

 アメリカがM4シャーマンで全局面をゴリ押しする事に成功したのが

大きいようだ。優れた中戦車は巡航戦車も歩兵戦車も二役できる。

と気づいたとの事。

 そのため残念ながら制式採用ならず。と相成った。


 次は、中戦車センチュリオン試作1号機。

 優れた中戦車は歩兵戦車も巡航戦車も二役こなせる事に気づいた

 英国陸軍は、両方を統合した汎用戦車を開発するに至った。

 以下陸軍が求めたその仕様。

 1.高い信頼性

  カビタンナーとクルセイダーのせい。

  信頼性が高くないと主力戦車として使いづらいと言う事。


 2.3000マイル(約5000km)以上の連続運航が可能な耐久能力

  1ともつながるが。戦闘と戦闘の間に毎回整備している時間が

  あるとは限らない。連続運転できないと辛いと言う事。


 3.40t以内の重量と10フィート6インチ(3.19m)以内の車体幅

  実用型では約50t前後の重量、3.4mの車体幅にまで膨らむことに

 なった。


 4.ドイツ軍の8.8cm高射砲を上回る装甲貫徹力を持つと共に、

 歩兵支援戦闘で充分な威力を発揮できる高性能榴弾を発射できる

 主砲の搭載

  対戦車砲の決定版として完成させた17ポンド(76.2mm)

 対戦車砲の搭載が予定された。


 5.ドイツ軍の8.8cm高射砲に耐えられる装甲防御力


 6.速度・機動性能

 歩兵戦車チャーチルは思いのほか機動性が良かった。

 速力こそ不足だが、登坂能力、車体回転能力等見るべきものがある。

  よってこれをベースにエンジンを換装。

 ミーティア V型12気筒液冷ガソリン・エンジン(出力600hp)

 を乗せ、さらにサスペンションを重巡航戦車用として新たに開発

 されたホルストマン式サスペンションにした。

  さらに幅広な高マンガン鋼精密鋳造履帯を組み合わせ、

 敢えて路上速度を重視せず特に路外・荒地での安定した走行性能

 を追及した。


 7.余裕ある戦闘室容積

 この余裕がセンチュリオン戦車の後の成功に繋がる要素の1つで、

 主砲の換装やパワートレイン交換等の大改修を可能にし、

 結果として本車を息の長い戦車とすることになった。

 このセンチュリオンの成功を受けてその後の西側の戦車は

 このパターンが多い。戦闘室容積を大き目にとっておき、

 後に改修していく。

 アメリカのM1、ドイツのレオパルト1、2もそうだ。


 センチュリオンは息の長い戦車で、書く事は沢山あるが。

 まだ次もあると言う事で今回はここまでとする。


 17ポンド戦車砲と20mmポールステン機関砲各1門を、

砲塔前部のそれぞれ独立したマウントに搭載。

 砲塔後部に円形の脱出用ハッチを装備。

 これが試作1号車から10号車までの特徴。

 微妙に形を変えて試作は続けられる。


 剛志の剛丸は3段階進化。


 まずは巡航戦車マークⅥクルセイダーマークⅠ。

 いよいよ生産型・・・だがまあほとんど試作車との変更点がない。

 このころの英国は焦っている。1両でも戦車が欲しい。

 カビタンナーはいつまでたっても完成しない。

 実は試作車完成前に量産決定していたりする。

 このパターンは大抵良くない事が起こる。

 でもそうするしかなかったのだ。


 次は、巡航戦車マークⅥクルセイダーマークⅡ。

 英国陸軍は車体前部左側に銃塔を装備する事を要求した。

 それにしたがってマークⅠは作られたが。

 しかしながら現場からは大不評。外されて、その分装甲を厚くした。

 最大装甲厚が40mmから49mmに変更されている。


 続けて巡航戦車マークⅥクルセイダーマークⅢ

 主砲を43口径6ポンド戦車砲マークⅢに換装。

 だが戦闘室に余裕が無いので、6ポンド砲を乗せると

 装填手が砲塔に入れない。

 実質の戦闘力は落ちたという。

 機動力、防御力は変わらない。

後で登場させようと考えている戦車・・・駆逐戦車に

英国陸軍のアーチャーがあります。

こいつはドイツ戦車に歯が立たない現状を見て、間に合わせで作られた

対戦車自走砲です。

英国陸軍自身が間に合わせといってますから間違いないです。

17ポンド砲をむりやり歩兵戦車マークⅢヴァリアントに乗せました。

したらば重くて前に倒れます。そこで後ろ向きに砲を乗せました。

つまりアーチャーは後ろ向きに前進するわけです。

しかもむりくり乗せてますので、砲を発射するときは操縦手がどかないと

後退する砲で頭をたたかれます。あぶねえ。

 だがこの対戦車自走砲、現場で大人気。大成功作品になったのです。


なにが言いたいかと言うと。適当に作ったら面白いのできたって事もある

反面。頑張ってもカビタンナーとか失敗する事もあるって事。

 でも頑張るしかないよ。結局頑張って作った方が良い物出来る率は

高いしね。と自分に言い聞かせる今日この頃。

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