第四十五話 クルセイダー巡航戦車
毎度、拙作をお読みいただき誠にありがとうございます。
休日の方が投稿が遅れるというこの不思議。
・・・ご迷惑おかけいたします。
昼食が終わって午後となっても、お二人のやる気は全くの低下を
見せず。
「さあ、今度こそ勝たせていただきますわ。高橋の小父様。」
「ふっ・・・甘い甘い。俺がそう簡単には負けねえよ。」
『さあくじ引きだ。』
「ちょっとまったあ。」
『何い?』
2人共仲良いな。
息ぴったりだ。
「午後は分け方変えませんか?」
『え?』
おい、そこまで息が合うのか。
「いや、午前中で腕前は分かったでしょう?レーティングつけて
差が無いように分けましょうよ。」
「わかりましたわ。・・・でも小父様と別の組になるようにして
くださいませ。」
「おおっ。あくまで決着をつける気だなマーシャ。ふんいい度胸
じゃねんか。」
源さんとマーシャの間にバチバチと火花が散る。
えーっと。勝手に雰囲気作らないでもらえませんかね。
「無理だよ剛志。」
「・・・ユーティリシア・・・そうだね。」
結局はこの2人が満足するまで模擬戦は続いた。
まあはっきり言うと日暮れまで。
源さんがやべえ母ちゃんに怒られるといって奥さんの所へ戻り、
マーシャがお兄様に叱られると言って帰っていくまで続いた。
「・・・疲れたなあ。」
「そうねえ。」
「大変だったべ。」
「なんじゃあいつらは。」
「・・・まあまあ、良い訓練にはなりましたし。」
まあ、そうなんだけどねテニトン。
めっちゃ疲れたわ。
戦車はまずシナモンが3段階進化し、
ギナ・ランガー級マークⅩⅩⅩ。
WWⅢ前の戦車だと言う。あっそ。
白くなった。何か白いたい焼き見たい。
細くて縦に平べったい。
例によって魚の如くくるっと車体毎回転する機能がある。
妙に進化速度が落ちたな。と思ったら。
テニトン曰く
同じメンバーでの模擬戦は効果が落ちるとの事。
まあ、当たり前か。毎回毎回ごっそりあがるんなら初めからこれ
ばっかりやりまくるわ。
午前中にごっそり上がったのは初回特典というか初心者ボーナス?
みたいな物らしい。
ま、そんなに楽できちゃ困るわな。
また、仲間内のレベルが高いと経験値が入り易いとの事。
・・・ん、つまりこれは源さんのお蔭か。
何か何時も世話になっちゃってるな。
源さんの74式(修理終わって良かった。)はスキルレベルも高い。
当然すごい経験値が入るんだろう。
ユーティリシア機は1段階進化。
T-72A戦車(オブイェークト176)に進化。
レーザー測遠機・照準機(TPD-K1)を搭載した。
砲も最新型51口径125mm滑腔砲2A46に換装。
ワルシャワ条約機構加盟国に駐留するソ連軍戦車師団に優先的に
配備が進められた。結果。アフニスタン侵攻時には使われていない。
エリオット機は3段階進化。
まずは重突撃戦車エクセルシオーに進化。
「速い歩兵戦車」あるいは「重装甲の巡航戦車」を求める声
が現場より出てきた。
もしこのような戦車ができれば歩兵戦車チャーチルの後継が
不要となる。
そこで「突撃戦車」(Assault Tank)という概念ができあがった。
愛称の「エクセルシオー」(Excelsior)とは
「向上、より上質を求めて、さらに高く」といった意味だが、
アメリカ合衆国ニューヨーク州の標語でもある。
何故こんな名が?という疑問の答えはアメリカ製のT1試作重戦車
の足周りを流用したことに対する敬意であるという。
主砲:37.5口径75mm戦車砲
最高速度時速38.62Km
最大装甲圧114mm
なかなかいい戦車だと思うが、没になった。
理由はいろいろあるが。
ぶっちゃけると金と資源と人が足りない。
エクセルシオーは良い戦車だが。
わざわざ新規生産ライン作る程の性能ではない。
巡航戦車よりは遅く。歩兵戦車より防御力がない。
普通の中戦車である。
こっちの生産に回す分がなかったのだ。
だが、この頃の英国はとにかくドイツ戦車との格差を埋めるのに
必死であったため。試作まではしたと言う事らしい。
続けて歩兵戦車バリアントに進化。
歩兵戦車マークⅢヴァレンタインは英国がWWⅡ中に最多生産した
戦車だったが。不満が無い訳でもなかった。
まず何と言っても狭い。そこで余裕あるつくりにした。
搭載砲も大型化して37.5口径75mm戦車砲に換装。
装甲も最大装甲厚が114mmと強化。
ここまでは良かった。
しかし、エンジン出力不足で最高速度時速19.31Km。
また操向レバーが極めて重い上、フットブレーキの操作には
操縦手が負傷する危険が伴い、ギアの操作性も危なっかしいという
点は人間工学的に見て大きな問題であった。
結局制式採用にはいたらず没となった。
今回の進化の最後は重突撃戦車トータスだ。
A39「トータス」(Tortoise:陸ガメ)はドイツ軍戦車を撃破できる
主砲を搭載し、敵の弾幕をものともせずに突撃するために開発された
重突撃戦車である。
イギリス軍戦車は北アフリカ戦線でドイツ軍の戦車と対戦車砲に
手酷く痛めつけられた。
そこでこの戦車が開発される事になったのだが。
完成したのがWWⅡ終戦後の1945年8月。
結局試作車両6両のみで発注はキャンセルされた。
主砲:62口径32ポンド戦車砲マークⅠ
最大装甲厚225mm
最高速度時速19.31Km
エンジン出力不足で機動力が足りない。
それもそのはず重量79.1トン。
ヤークトティーガーやヤークトパンターに対抗するために作られた
とは言え、くそ重い。
量産されても輸送できないと思う。
ただ装甲の厚さと主砲の威力はすさまじい。
32ポンド砲は英国陸軍がWWⅡで生産した砲のなかで最強の対戦車砲。
実戦に投入されたらどうなったのか知りたかった。
剛志の剛丸は例によって誰よりも進化数が多い4段階進化。
経験値吸い取ってます。
まずは巡航戦車マークⅤカビナンターマークⅡ。
ラジエイター上の装甲ルーヴァーを取り外し、
エンジンの冷却系に手を加えたもの。
・・・車体前部の装甲を外しただと?
まあ、戦えないよりはましか。
だが結局オーバーヒート問題はこれでも解決せず。
さらにマークⅤカビナンターマークⅢ。
車体後部に冷却用吸気口を増設。
でも・・・以下略。
そしてマークⅤカビナンターマークⅣ。
もういい加減諦めればいいのにと思うが。
それだけ英国も物資が不足していた。
戦車が欲しかったんだろう。
何とかしようと頑張った。
マークⅣでは、後部エンジン・デッキ上にさらに吸気用ルーヴァー
を新設した。
そして諦めた。
カビナンターはここで終了となる。
カビナンターが何故こんな事になったのか?
理由の1つはアルミ不足。
試作車がトライアルに通ったのはご存じの事。試作車両はアルミ合金
がふんだんに使われており、軽量で、冷却性能も高かったようだ。
だが、戦局が緊迫してくると。アルミは航空機に優先された。
結果鋼鉄製となり、重くなり、結果オーバーヒートしやすくなった。
2つ目は車高を下げる事にこだわったため。
ラジエイターとエンジンが車体の前と後ろに分かれている理由は
スペース不足。車高を下げる事にこだわった結果。ラジエイタ―
が車体後部に入らなくなった。
何故車高を下げるのにこだわったかと言えば敵弾の命中率を下げる
ためなのだが。
妙に頑固な所がある英国は、無理だとは言わずにラジエイターと
エンジンを前後に分けるこの変態構造になった。
さてカビナンターが終わると、次はカビナンターの姉妹機とも
言える巡航戦車マークⅥクルセイダーである。
進化先はクルセイダーの試作車両A15E1。
はっきり言うと、カビナンターは開発当初からエンジンに不安が
あり、英国陸軍は保険としてクルセイダーも同時開発させた。
結果論だがこれは成功。
前述のようにカビナンターは全然物にならず。
A15E1が完成した時、まだカビナンターは設計段階だった。
英国陸軍がA15の開発者に望んだ仕様は安価で軽量な新型巡航戦車。
そのスペックは、
主砲:50口径2ポンド戦車砲
最大装甲厚40mm
最高速度時速44.26km
英国巡航戦車としては性能が良いが。
ドイツ戦車と比べると火力、防御力で劣る。
また機械的信頼性が低く、1941年6月の戦斧作戦で投入された
クルセイダーの内半分は機械の故障で壊れた。
欠点が多い欠陥車だが。カビナンターを使う訳にはいかぬ。
上には上があると言う事は下には下があると言う事。
アメリカよりM4中戦車がレンドリースされるまでの間。
英国陸軍の主力戦車として北アフリカの大地で戦ったのだ。
取得スキルは、
火炎耐性がL3からLv4へ上昇。
簡易修理がLv4からLv5へ上昇。
突撃がLv3からLv4へ上昇。
防御力上昇がLv3からLv4へ上昇。
また、進化とは別に
オンスロートがLv3からLV4に上昇。
エクソダスがLv1からLv2に上昇。
車体旋回速度上昇がLV3からLv4に上昇。
スキル取得率UPも少しは効果がでている模様。
ハイドラ市へ戻ると、宿へ連絡が届いていた。
アレクサンドルからの連絡で、明日、密偵が戻ってくるので、
テントまでご足労願いたいとの事。
「いよいよだな。」
「そうね。」
ムールド氏も戻ってきて少し話をする。
「いよいよですね。準備は大丈夫ですか?」
「難しいね。でも備えはしている。何とか無事に帰ってこれるよう
努力するよ。」
「ふふふっ。剛志君がそういうなら問題ありませんね。」
「ムールド隊長。それは買いかぶりすぎだよ。」
「いや、私はそうは思いませんね。・・・まあ頑張ってください。
まず生きて帰る事が第1ですよ。」
「はい、分かっています。」
何時もの事ながらムールド氏は人の心を掴むのが上手いよな。
人命第1というのも好感が持てるし、人件費をケチらないしな。
ハンターは腕が全てだ。タージマ家のように集団戦に特化した
チームは実の所珍しい。
いい腕のハンターが集まる事が良いハンターチームを作る1番の
近道だ。
それには報酬をケチらない事だ。
誰にでも出来る仕事ならともかく。
ハンターってのは一種の特殊技能職みたいなもんだ。
腕の差がはっきりとでるからな。
またムールドチームに戻ってこれるよう。全力を尽くす事に
しようか。
・・・そして次の日。
剛志隊の全員を叩き起こして集め。タージマのテントへ向かう。
途中で源さんとも合流し、11両でテントへ向かう。
「よく来てくださいました。」
アレクサンドルが満面の笑みで出迎える。
こいつもやっぱり流石タージマ家だよな。
何時いかなる時でも満面の笑みで出迎えるのは簡単そうでいて
やってみると大変だとわかる。
人間は調子の良い日と悪い日というものがある。
バイオリズムがある。機嫌の良い日と悪い日がある。
声の調子の良い日と悪い日がある。
運の良い日と悪い日がある。
何時でも何処でも、誰にでもというのは難しい。
「いえいえ、それで何か連絡があったとか?」
「まずは中へお入りください。」
アレクサンドルの案内でテントの中に入る。
すでにマーシャともう1人・・・密偵の人かな?がいる。
剛志達が中に入ると立ち上がり、席へ着くようにと促される。
全員席に着いたところで、まずはアレクサンドルから話始めた。
「偵察部隊からの情報をまずは話してもらいましょう。
・・・おい、頼むぞ。」
アレクサンドルとマーシャ以外にいるタージマの人間がやはり
密偵のようで、アレクサンドルのその声に促されて話を始めた。
「どうも、偵察部隊のK-28と言います。」
「K-28ですか。本名ではないですよね?」
「ええ、本名はあってないようなもんです。毎回名前を変えます
のでね。K-28は偵察部隊の登録番号です。」
ですよねー。本名の訳ないですよね。
「まず私は剛志さんより指示された5地点の内、デラスカズアと
呼ばれる地点へ行きました。」
「・・・デラスカズアかあ。一番行って欲しくない所じゃないの。」
剛志は頭を抱えた。
「デラスカズアって何?」
ユーティリシアから当然の質問が飛んできた。
ま、いきなりそんな事言われたってな。分かる訳ないな。
漂流民だし。この世界の事詳しくないし。
「デラスカズアと言うのは、過去に魔道式研究炉があった所さ。
簡単なイメージで言えば。魔道用の発電所みたいなもんだな。」
「そんなものが・・・」
「生命力を魔道力に変換する事が出来る様だ。」
「生命力?」
「湧いてきた魔物を魔道炉に放り込んで魔道力に変換するのさ。」
「魔物を?」
「・・・オウム返し辞めてくんない?」
「ごめんなさい。あまりに意表を突かれたので。」
「まああれさ、魔道戦車は魔道で作るだろ?
世界が霧やスモッグに覆われる前は魔道船とか魔道飛行機とか
いろいろあったのさ。全部魔道が必要だろ?魔道力が沢山いるんだよ
ね。戦争ってやつは。」
「それで魔道炉を・・・」
「うん、それがデラスカズア魔道式研究炉なのさ。
ここは数ある魔道炉の中でもちょいと特殊でね。」
「特殊って?」
「・・・だからオウム返し辞めてよ。しゃべりづらい。」
「御免なさい。でも知らない事は突っ込みづらいわよ。」
ユーティリシアは肩をすくめた。
さっきからユーティリシアと剛志しか話してない。
周りを見渡すと・・・皆絶句している模様。
「魔道炉に必要なのは生命力なんだ。それを魔道力に変換する。
それは魔物である必要はない。」
「ま、まさか・・・連れ去られた人達が?」
「そ、そんな。」
アレクサンドルとマーシャが狼狽している。
「いや、それは無いと思う。それはもったいない。」
一瞬2人はほっとしたが。何がもったいないのか?
「何がもったいないのですか?」
「アストラル・ギアの量産にログレス大佐は成功していた。
ログレス大佐以外の精神も入ったアストラル・ギアはある。
それを増殖して、一般人に装備させまくるとどうなるか。」
「え・・・強力な軍隊ができると言う事ですか?」
「うん、しかもログレス大佐。いやジャッカルに忠実な。」
「そ、それは滅茶苦茶危険なのでは?」
「魔道炉が手に入れば大量生産できる。そうなれば・・・」
「ま、まずいですよ。直ぐに討伐しなければ。」
「そういう事。急がないとどうなってしまうか一寸想像も
つかないんだよね。」
「それは・・・今からすぐ行くべきですか?」
「行くべきだと思うよ。少数精鋭がいいね。迅速に行く必要がある
し、多すぎると軍事行動と思われる危険がある。何せ隣の国に
あるからねえ、デラスカズアは。」
アレクサンドルとマーシャがばたばたと忙しく動き始めた。
テントを行ったり来たりして1個中隊程の人数を厳選する。
「坊主よ。お前案外冷静だな。」
「うん。アストラル・ギアの量産を軍が認めなかった理由が
分かっているからね。」
「なんだ?それは?」
「うん・・・それは・・・」
「剛志さん準備整いました何時でもいけます。」
「源さん。後でね。・・・よしじゃあ出発しましょうか。」
アレクサンドルが号令をかけて皆で出発する。
「よし、出発だ。」
アレクサンドルとその部下で1個中隊。
剛志隊10名と源さんとマーシャで12人2個小隊。
30両の戦車が一斉に発信する。
ただし、剛志隊には遅い戦車がいて行軍速度が落ちるので、
そいつらはトレーラに乗せてドラゴンワゴンで運ぶ。
目的地はデラスカズア。
1千キロ先だ。しかし国境が間にある。
そこが今までの遠征とは違う所だが。
タージマ家の権力で問題なしとの事。
タージマは隣の国にも貸しがあるらしい。
傭兵軍団タージマ家の面目躍如だね。
・・・1個中隊以上行けたんじゃね?
と思わくも無いが。流石に無理かな。
ジャッカルとの次の戦いは激戦になるだろうし。
被害を考えるとやっぱり小数精鋭の方が良いか。
さて急ぎなので24時間移動だ。
と言っても魔道戦車で24時間飛ばすわけじゃない。
タージマのコンボイ部隊登場。
戦車を乗せて時速80キロぐらいだして舗装路を吹っ飛ばす。
運転手は交代しながら24時間吹っ飛ばす。
到着は12時間半後。
今からなら夜中2時ごろに到着だ。
しかもコンボイが故障した際の事を考えて予備のコンボイが
同時に並走している。
・・・正直こんなんで国境超えられるのか?
これでも十分侵略行動と取られても仕方がないんじゃ?
と思ったが。
これまたタージマ家の権力発揮。
隣の国にも縁があるらしい。
流石傭兵集団タージマ家。
因みに密偵さんはバイクを使って時速200キロで吹っ飛ばして
行ったらしい。
え?24時間だって・・・そんな無茶な。
舗装路を使えばちょっと遠回りになるが2日ぐらいで行き来した
らしい。すげえタフだ。
流石特殊部隊。
さて剛志達はこれまでになく楽に目的地に到着した。
コンボイで寝泊まりし、食事は豪華。
今までの剛志の強行軍とは雲泥の差。
タージマ家の宿泊可能コンボイは凄いわ。
執事にメイドさん付。
1人づつ個室で、風呂、食堂付。
これに慣れたらいかんぞ。と剛志は言ったが。
皆ほーいとかへーいとか言って上の空だった。
・・・まあ、しょうがないかな。
しっかり皆休んで戦闘に備えろよ。
次回はいよいよデカラスカズアだが・・・どの程度ジャッカルが
準備できているか。奴が逃げてから3、4日たってるわけで。
どのくらいの事をしでかしているか。
さて、どう戦うかね。
2014/11/30 誤字修正。
困った事追加。
困った事シリーズ。
第四十四話は
巡航戦車カビナンター
第四十五話は
クルセイダー巡航戦車。
巡航戦車と車名が前後しているが。
これは元にした資料にそう書いてあったから。
どっちやねん?と思うが。多分翻訳段階で前後しているだけだと思う。
多分どっちが間違いって事は無いんだと思う。
すると、英国戦車は巡航戦車や歩兵戦車に付くマーク(型番)
と車名につくマーク(型番)があるので余計ややこしくなって来たり。
始めに謝っておきます。間違ってたら御免なさい。
2014/12/03 誤字修正。カビタンナーって何よ。カビナンターだよね。
大変失礼いたしました。




