第四十話 トルディとトゥラーン
毎度、拙作をお読みいただき誠にありがとうございます。
大変失礼いたしました。
二十三話が抜けていたので追記しました。
ご指摘ありがとうございます。
いよいよ本日はミイカ市跡地への潜入となる。
「部隊を三つに分ける。強襲班、護衛班、後詰班に分ける。
強襲班は俺とユーティリシア。護衛班はクラさん隊長にシナモン、
テニトン、アネッタ、天野。他は後詰。ユシスが隊長。」
「えー。剛志隊長とユーティリシア隊長だけですか?」
「お前ら魔道ちゃんと使えんの?アストラル・ギアわかんないじゃ
ん。」
「あ、・・・そっか。」
「そういう事なんですか?」
ユシスよ。お前まで聞くか?新人ならともかく。
「え・・・そんな目で見ないでください。」
「まだまだだなお前も。」
「よし、じゃあ行きましょう。」
クラさんはやる気満々。
「ま、焦んなくてもいい。周囲の魔物の警戒は怠るなよ。
そこだけは注意しろ。」
『サーイエスサー。』
うむ。自動翻訳がいい仕事してるな。
サーイエスサーとは、頭と後ろにサーをつけろってやつだな。
侵入作戦はあっけにとられるほど順調に進行したが。
最後の最後でボス?というかちょっと大きめの蜘蛛型ロボット発見。
でかい。ビルとビルとの間を縫って、ぬっと出てきた。
全高が11m程はあろうか?全長は20m程だろうか。
「撃て。」
ここまでは護衛班と強襲班で来ている。
一斉射撃を浴びせかける。
「ほう、やっとボスらしいボスがでたか。」
幾分穴が開いたものの。まだ動ける様だ。
「こいつ何なの?」
ちょっと慌てた感じのクラさんだが。
「さあ、ミイカに住み着いた野良の魔物だと思うが。」
「野良?」
今度はユーティリシアからの質問。
「ああ、このミイカ市は戦車工場はないんだ。元々は航空戦力を
製造していた。今じゃただの屑鉄だがな。」
「じゃ、なんでこいつここにいるの?」
「だから野良だろう。蜘蛛型の戦車は都市のビル群や峡谷等なら
役に立つだろ。立体的に攻撃できるからな。」
「へーって・・・撃ってきた。」
クラさんに命中したが・・・爆発反応装甲が起動。
「あー。またお金かかるー。・・・この○○○野郎が。」
嫁入り前の女性が言う言葉じゃないっすよ。
「前面結構硬いな。ユーティリシア、テニトン。右側面に周りこめ。」
『了解。』
「魔道防御を展開する。・・・シナモン。相手の属性は分かるか?」
「魔道測定器作動じゃ。・・・水属性じゃな。弱点は地属性。」
「何?弱点あんのか。よし地属性弾発射。」
「了解じゃ。」
弱点属性ばれちゃうとあっという間。
剛志の魔道も大分腕が上がった。
地属性を砲弾に込めて発射。
シナモンも属性弾発射。
大蜘蛛も慌てて逃げようとするが。
「ファ○○○○。」
怒りのクラさんと。
「側面を取ったわ。いただき。」
横に周りこむことに成功したユーティリシアとテニトンによって
足を吹っ飛ばされて動けなくなり後はフルボッコ。
こいつはタフだし、攻撃力もあるんだろうが。
1対1ならともかく戦車隊相手ではこんなもんだ。
だがこの手のデカ物はそこそこの経験値は手に入る。
「進化じゃ。」
喜ぶシナモン。
シナモンの戦車も進化・・・ギナ・ランガー級マークⅨに進化。
色が黒っぽくなった。白黒の縞々。
見た目は鯛から石鯛になった感じ。
鯛にしては細っこいがね。
ユーティリシアの戦車は
T-64中戦車(オブイェークト432)に進化。
オブイェークト430は採用され正式採用かと思ったら。
しかし直ぐに改修命令がでた。
オブイェークト430の改修案。それがオブイェークト432である。
これはアメリカ軍がM60スーパーパットンを作成したためで、
強力な51口径105mmライフル砲とハイテクFCSによってアウトレンジ
攻撃されてしまう事がほぼ確実となったためである。
105mmライフル砲を上回る砲として55口径115mm滑腔砲D-68T
を採用。
さらに防御力の向上として複合装甲「耐砲弾複合装甲」
(プラチヴァスナリャードナェ・コンビニラヴァンナェ・
ブラニラヴァーニェ)
を採用。
さらに自動装填装置「コルジーナ」(籠)を採用。
乗員数を3名に減らした。
自動装填装置が導入されたのは100mm砲弾より巨大な115mm砲弾の
発射速度を低下させないためと、何よりも装填手を省いて
オブイェークト430Mの砲塔をコンパクトにするためであった。
エンジンも5TDFディーゼル・エンジン(出力700hp)に換装し、
路上最高速度時速70Kmという、1960年初頭のMBTとしては
世界最高レベルの速度性能を持つ。
まさに機動力、攻撃力、防御力の3つを全て兼ね備えた戦車。
・・・なのだがこいつには当時設計者たちの革新的な構想と
製作現場での技術力のギャップが酷く。
機械的信頼性に欠けるものであり。
特に自動装填装置のコルジーナは装填不良になったり乗員を
巻き込んだりする事故を多発させたといわれ、
「ソ連軍の新型MBTの自動装填装置は人を食う」と西側にまで
噂が広がる有様だった。
生産量も当初3000両予定が年間300両。高コストが主な原因とされる
が、この機械的信頼性の低さも当然理由の1つと思われる。
剛志の剛丸も1段階進化。
2段階にはちと足りなかった。
38MトルディⅠ軽戦車に進化。
ハンガリー戦車でL-60B軽戦車のライセンスを取得したハンガリー
にて生産されたもの。
38Mとは1938年制式の事で、トルディは14世紀に活躍したハンガリー
の国民的英雄の名前である。
主砲:20mm対戦車銃36M
最大装甲厚13mm
最高速度時速50Km
L-60Bに準拠した作り。主砲がスイスのゾーロトゥルン社の
ライセンスで自国生産。
副武装の機銃は自国製である。
取得スキル。
走行時衝撃緩和Lv4からLv5へ上昇。
「よし、他に敵はいないか?警戒しろ。」
「西方向、敵居りません。」
「東OKです。」
「南方向敵いません。」
「北方向もいないな?・・・いよいよ目的の施設だな。
ユーティリシア付いてきてくれ。他は俺達が帰ってくるまで待機。
何かあったら無線ですぐしらせろ。クラさん頼みます。」
「まかせて!」
剛丸から降りて、ユーティリシアと共に廃墟と化した施設へ入る。
かなり脆くなっているから気を付けないといけない。
中に入ってから調査したが。
「何もないね。」
「うーん。先越されたっぽいな。」
足跡等があるし、どうも先越されたか。
しかし、この足跡だが。そんなに古くないな。埃が積もってない。
「一応何かないか探すかね。」
「そうだね折角きたんだし。」
ユーティリシアと二人で調べて回る。
「何これ?ちょっと剛志来て。」
ユーティリシアに呼ばれて行ってみると。
「うお。」
壁から天井から床から。全部に絵が描かれた部屋がある。
「・・・ちょっと待って。写真を撮ろう。」
デジタルカメラを取り出して全部写真に収める。
「ひょっとするとこれは・・・」
「どうしたの剛志?」
「うん。他の部屋を見てみて、絵とか図とかないかな。」
二人で探して回り、いくつかの絵やら図面やら、落書きされたような
紙を集めて回る。
もう紙はボロボロになっているものも多いので、写真に収めて
周る。
「よし、これ以上は何もないな?」
「うん。アストラル・ギアは無かったね。」
残念そうなユーティリシア。俺も残念だよ。
「・・・そうだな。・・・いやだが。いや、そうだ。
まあ、こんなこともあるさ。戻るとしよう。」
「?そうだね。帰ろう。」
紙やら絵やらを集めて持って帰る。
一応ね。ま、戦利品と言う事で。
「戻るぞ。」
外に出て皆に言う。
「剛志。あったの?」
クラさんの無線。
「ない。先越されたみたい。」
「がくっ。」
クラさんノリいいな。
「ま、戻りましょうか。・・・全員市の入口まで退却する。」
剛志より退却命令。
「うーん、そんなにおいしい話はないわね。よし撤退。」
クラさんも撤退。
「ユシス。そっちどうなってる?」
「何にもありませんよ。暇です。」
まあ、あれだけ敵倒しまくったしな。
かなり市内の敵を掃討できているんだろう。
「よし、全員無事だな?」
『サーイエスサー』
「じゃ、補給終えたら帰るぞ。」
『・・・え?』
「だから速攻ハイドラ市へ戻る。」
『えええええ。』
「い、一泊しないんですか?」
何を驚くんだユシス?
「何故?早く戻ろうぜ?」
「・・・そうですね。戻ってから休みますか。」
「その方がいいだろ?戻ったら休暇にすっからハイドラ市戻るよ。」
『サーイエスサー』
中島が死にそうな顔してるが。
何やってんの?このぐらいでへばるなよ。
--- 3日後 ---
「さー戻ったなハイドラ。」
「ふう、今から休暇でいいんですか?」
期待を込めたユシスの声。
「おう、いいぞ。皆お疲れ―。今回みたいな強行軍は滅多にないから
いい経験になったろう?」
「ものは言いようだね。」
ユーティリシアとクラさんは苦笑している。
しかしこの2人もタフだね。
帰りも当然ユシス機にワイヤー掛けて引っ張ってきました。
24時間行軍を3日。
新人共は再びゾンビ化してます。
中島は最早ロボット化。
行った事をおうむ返ししかしません。
「ま、ゆっくり休めば元に戻るだろ。」
「だね。」
鬼な剛志とユーティリシア。
「あら、剛志さん。ムールドさんから連絡が入ってますよ。」
「おっと女将さんいつもお世話になってます。
・・・で、内容は何ですか。ここで聞いても?」
「ええ、戻るのは2日後になるそうです。」
そうか。後2日何するかな。ま、1日は休暇にしてやるとしよう。
「さ、俺達も休むとしましょう。」
「そうね。ま、戦車も良いけどやっぱりベッドで寝るのが良いわ。」
「私はお風呂入るー。」
「僕はお腹すきました。」
ユシス、ユーティリシア、クラの3人は各々休憩を取る。
帰りの3日間も全く順風満帆というわけでもなく幾度か戦闘
があったのだが。
新人達も落ち着いたもんだった。
今回の遠征も全くの無駄ではなかったな。と思う。
最も剛志にとっては、無駄所か得るものも結構あったのだが。
・・・それは。
それはさておき、帰りの戦闘によって剛志の剛丸は2段階進化。
まずは38MトルディⅡ軽戦車に進化。
性能はトルディⅠと変わらないが、各種コンポーネントを国産に
したもの。例えばエンジンをハンガリー製にした。
続けてトルディⅡa軽戦車へ進化。
主砲を40mm戦車砲37/42Mに換装。
さらに装甲を増加。最大装甲厚が33mmになった。
ただ重量増加により若干の機動力低下。
最高速度時速48Km
取得スキル。
経験値取得UPがLv3からLV4へ上昇。
修理がLv3からLv4へ上昇。
ユシス機はまだ進化しない。経験値不足だそうだ。
シナモン機も1段階進化。
ギナ・ランガー級マークⅩに進化。
何か周りにごてごてくっついた。
くそっ。どんな変化なのかわからん。
ユーティリシア機は1段階進化。
T-64からT-64A戦車(オブイェークト434)に進化。
正直言って、T-64(オブイェークト432)は西側諸国の戦車と戦う
のには性能が足りない。
それに機械的信頼性に欠けて現場から不評をくらっている。
そこで更なる性能アップを図ったのがT-64Aことオブイェークト434
である。
1962年頃にソ連に亡命したイラン陸軍の将校がいたのだが。
この人アメリカ製のM60スーパーパットンに乗ってきちゃった。
そこで西側戦車の実力が、想像以上であった事に驚いた。
まずは主砲が51口径125mm滑腔砲2A26に換装された。
115mm砲では威力不足である事が分かったためだ。
不評の自動装填装置も後のT-72戦車等と同じ「カセートカ」
(カセット)システムに変更された。
また夜戦用装備として、主砲左側の「ルナ」(月)アクティブ式
赤外線投光機と組み合わせた暗視照準装置TPN1-49-23を装備した。
こうして1960年代当時のいかなる西側MBTをも撃破できる戦車を
開発したのである。
--- 宿の剛志の部屋 ---
「・・・やはり、しかしそうなると。」
剛志はあの後ずっと自室にこもっていた。
「ふん、こいつは実に興味深いぞ。」
その手にはデジタルカメラが握られている。
机の上には幾つかの図面が広がっている。
「・・・しかし、いったい誰が俺達の先を越したんだろうな。」
こんこんっ
「はい、どなた?」
「私、ユーティリシア。」
「えええ。何?」
「いや、明日また狩りにでも行こうってさ。
シナモンちゃんとテニトン君も来るって。」
「おお、やる気あるなあいつ等。で?ユシスは?」
「なんかおじいちゃんに手紙書くとか言ってた。」
「・・・成程。そうだな。2人っきりの家族だもんな。」
「そうだねえ。」
家族か・・・もう会えないんだよな。
「おっとしんみりしてもしょうがないよね。
じゃ、明日朝呼びに来るから。」
「え、悪いなあ。まあよろしく。」
「そこでノーと言わないのが剛志らしいね。」
「ま、な。」
二人は顔を見合わせて笑った。
次の日。朝から剛志とユーティリシアとシナモンとテニトンは
狩りに出かけた。いろいろフォーメーション組んだりして
いろいろと戦型を試してみた。
昼も過ぎ、遅めの昼ごはんを取りにハイドラ市へ帰還。
ユーティリシア機は1段階進化。
T-64A戦車(1969年生産タイプ)
車体側面部に対HEAT用の展開式エラ型補助装甲を持っていた
(このエラ型補助装甲はT-72戦車にも装備されたが1970年代後半
には旧式化したのか姿を消していった)。
シナモンはギナ・ランガー級マークⅩⅠ。
言ったいいくつまであるの?と聞いたら。
ギナ・ランガーはWWⅠからWWⅢまで改良というか魔改造されて
続いた戦車との事。まだまだ続くよーと言われた。
菱形戦車が現代でも走っているようなもん?
それは違うか。
そうかこの進化型魔道戦車はこの世界独自技術の品なんだな。
そこがアムリシア機とは違う所。
剛志の剛丸は2段階進化。経験値取得UPのスキルが効いてる。
まず、42MトルディⅢ軽戦車に進化。
さらに装甲を厚くし、最大装甲厚35mm
主砲と機動力に変化はない。
良い戦車だとは思うが。
トゥラーン中戦車の生産が始まり12両しか完成しなかった。
続けて40MトゥラーンⅠ中戦車に進化。
こいつは40年制式化されたが実際に量産されたのは42年から。
主砲:51口径40mm戦車砲41M-40/51
最大装甲厚60mm
最高速度時速47Km
悪くない性能の戦車だと思うが。
この頃の敵はソ連軍でT-34やKV-1を相手にするにはちと不足。
取得スキル。
戦車砲がLv3からLv4へ上昇。
防御力上昇がLv2からLv3へ上昇。
ハイドラ市へ戻った4人を待っていたのはなんと
アレクサンドル・タージマだった。
焦った顔で若干憔悴しているように見える。
何でだ?
また何かあったのだろうか。




