第四話 マークⅠ
剛志が町へ戻って獲物を換金し、源さんの店にて魔道戦車についてあれこれアドバイスを受けている時。
彼らが町に帰ってきた。そう、ムールド氏とユーティリシア達のグループである。
一行は疲れた顔をしていたが、充実した顔をしていた。いい狩ができたのだろうな・・・と予測がつく。
「すみません、源さん。戦車の洗車と塗装についてご相談が・・・って剛志君もいたのか。」
「やあ、ムールドさん。上手くいったみたいだね。」
ユーティリシアも駆け寄ってきた。
「剛志・・・目の周りに隈ができてるよ。疲れてるの?」
「お、そうか。自分じゃ気付かないもんだからね。でも今は気力が充実しているから大丈夫。でも
念のために今日は酒はやめておくかな。」
「ええー」
「・・・源さん。」
ムールド氏は辺りをキョロキョロ見回すと
「剛志君の戦車はどこだい?」
と聞いてきた。ムールド氏は結構戦車好きそうだと思っていたが。ま、男児なら嫌いってことはないか。
「今日はもう切り上げてきたんだ。裏の駐車場にあるよ。」
「・・・なにそれ?裏って、源さん家におきっぱなしかい?」
「そうだよ。昨日は飲んで寝て、一昨日も飲んで寝たから源さん家に泊めたし。」
「ちょっとまった。ズルくない?戦車駐車場は一日1200ギアはするのに。で、人間の宿泊料は
朝晩食事つきで3000ギアはするだろ?」
「あ、俺宿に泊まったことないや。毎日酔いつぶれてる。」
「おおーい。そりゃ隈できるよ。」
考えてみれば当たり前である。
飲んで寝て、起きて狩りして飲んで寝て。ここ二日これの繰り返し。
健康にいいとはお世辞にも言えない。
・・・良く考えてみれば、飯食ってるの夜だけじゃね?飲んで食ってそれだけだ。
これはますい。いくら狩りに夢中とはいえ、飲み食いまともにしてない。
よく平気だったな俺。結構頑丈だな俺。剛志は自画自賛した。
水筒すら持ってない。夜に朝までコースで飲んでその際に酒と共に水もしこたま飲んだだけ。
・・・なんでこんなに喉乾くんだろうと思ったら当たり前じゃねえの。
アホか俺は、死ぬぞマジで。
「源さんすいません。水筒とかあります?」
源さんは滅茶苦茶飽きれた顔をした。銃とかすごい指定してくるくせに何それ?だそうな。
当然の疑問である。
バレットM82もベネリM3もM29所謂44マグナムも全部剛志の指定である。
源さんはサブウェポンを勧めただけ、武器の指定はしてない。
バレットM82はその狙撃性能、命中率および、威力で決めた。
リンカーンマシーン~発展する初期戦車はとにかく動きが遅いのだ。獲物に逃げられてしまう。
だとしたら隠れて狙撃するしかないと思い、威力のある狙撃銃として主力兵器として選んだわけだ。
ベネリM3は取り回しの良さから選んだ。スラッグ弾つかえば威力もでるし・・・と思ったのだが。
実際先程近距離戦闘してしまった際、とどめを刺したのがベネリM3なのかM29なのかわからない。
混乱していたから。よく覚えていないのである。とにかくサブウェポンとしては取り回しの良さを
重視したわけだ。
大型拳銃M29はダーティーハリーのイメージが強いが、街中で使う銃じゃない。これは狩猟用の大型拳銃
である。弾も人向けの弾じゃない。マグナム弾は大型獣向けのもので人間にはオーバースペックである。
先程の狩りでは正直無駄弾使いまくった訳だが、剛志は満足していた。生きて帰れたのが大きい。
自信が付いたし、次は混乱しないでやれる気がする。もっと上手くやれる気がする。
人間最後は精神力だよね?・・・最初から頼っちゃ駄目だけどね。
「水筒ならほれそこの棚だよ。あと携帯食料だが・・・いくつかおいてあるよ。保存食もいくつか
買っときなよ。いざというとき役に立つよ。何せこの世界お先真っ暗だからね。ハハハ」
今頃になって、必要なものをいろいろ買い込みながら、ムールド氏とユーティリシアと話をした。
今回の儲けは30万ギア、8人で3万づつ手に入れて残り6万は共同資金にするとのこと。
何があるかわからないからだそうだ。実際今回も魔物の奇襲をくらって1両擱座し、
沼にはまって1両擱座の計2両動けなくなり、引っ張ってきたそうだ。沼に嵌った一両は、
抜け出そうとあがいた揚句にエンコ(エンジン故障の意)したそうだ。
気持ちは分かるけどねえ、とユーティリシアは肩をすくめた。
思った通りとは行かないのが実践だ。かといって何の計画もなしに突っ込んでもやられるだけ。
難しいものだ。
お安くしときますよーと源さんが言っていた。修理費せしめる気だ。
そっちはどうなの?と聞かれたので、素直に2日で3万ギアの利益と答えた。さらに全部使ったと
言ったら、驚かれた。ムールド氏は一人で3万稼いだ事に、ユーティリシアは全部使ったことに驚いたようだ。
そったら事言われてもオラ知らねーと言いながら蛸踊り踊りつつ裏の駐車場へ向かってM25に乗って逃げた。
ああっ、逃げたー・・・とかユーティリシアが叫んでいたが。速攻逃げた。
さて、本日は夜狩りといくか。いや、解ってます。ただ逃げてきただけじゃ
恰好悪いからそのまま狩りにきただけです。えらいすんません。
でも、何時かは夜戦もする気だったし。この世界では夜戦は危険っちゃ危険だが、
剛志のいた地球よりかは酷くない。なぜなら昼間でも視界が悪いから。
しかし、町をでて早々に後悔した。マジで周り見えない。2メートル先がもう無理。何これ怖い。
昼間は視界が遮られるのが負担というレベルだが、夜はもうだめ。これは視力がないに等しい。
一応夜戦装備として赤外線暗視ゴーグルと熱映像探知スコープぐらいはある。
予備電源もあるが、基本的に2時間でメインは電気が切れる。使うしか手はないが・・・
・・・直ぐに帰ろう。そう思った時である。そんな時にこそはいヒット。運がいいのか悪いのか。
第3狙撃ポイントと勝手に決めた場所からフライングエイプ発見。エイプってのはでっかい猿だが、
フライングエイプはメッチャもこもこしており、むささびよろしく体を広げて空を飛ぶと来たもんだ。
何か食ってる。チャンス到来。えっちらおっちらM25の運転席から荷台のビッグウィリーへ移動・・・
うわ、動きにくい。赤外線ゴーグルつけて動くのは初めてだ。遠近感がつかみにくい。
移動中に膝をぶつけた。
「あう、おう、えう、おう。」
変な悲鳴を上げながら所定の位置に移動。菱形戦車の上に乗っかりバレットM82を展開。
いただきまーす。
・・・スパン
実は先程また例によって借金しまして、ええ源さんに、清音装置つけてもらったんですよね。
覚えてらっしゃるでしょう?さっきデスベアーさんが音でこちらの場所特定してきましたよね?
あれやばかったんで、清音装置つけちゃいました。
和太鼓ぶったたいた音から、スリッパで思いっきりぶっ叩いた音レベルまで音量が下がってます。
これなら相手に気づかれる事無く、狙撃ライフを満喫できます。
おおっと来たよデスベアー・・・ふざけんな、その猿は俺の獲物だ。横取り狙いかよ。
・・・スパン
ううん、撃った気がしない。でも安全には代えられないし。しばらくはこのまま清音装置付きで
いくしかない。接近戦が怖くなくなるまでは我慢。
本日の夜の収穫
フライングエイプ3匹、デスベアー2匹
やったね、大戦果。
そしてビッグウィリーは進化した。
マークⅠ雄型へ。
ついに正式戦車を手に入れたぞ。
スキル「ジャガーノートLv1」を入手、ひょっとしてユニークスキルか?
一応マークⅠは伝説の戦車だしありえる。
マークⅠへ進化する際に、雄型にするか雌型にするか聞かれた。魔道戦車本人に、
今までは選択の余地がなかったと言う事なのだろう。まあ一直線しか行きようがないものな。
因みに雌型にしたばあいは武装が異なる。大砲が機関銃に代わる。
これは当時のイギリスのドクトリンによるもので、雄型が敵陣を破壊している間。周りをうろつく敵兵
を雌型か機銃斉射するというもの。菱形戦車シリーズは当分この形式になっている。
前回書き忘れたが現在の剛丸のスキルは
ジャガーノートLv1 敵の攻撃を受けても怯まずに前進できる。レベルUPで受けるダメージ減少
怯み硬直時間減少、前進速度上昇。
超壕力Lv1 崖、穴等を乗り越える力がレベルUPで能力上昇
不整地機動Lv1 凸凹道を安全に踏破する。レベルUPで能力上昇
防盾Lv1 飛び道具を確率ではじく事がある。
レベルが2になる前に進化してしまうのでLv1だらけになっている。
しかしもう4つ。元から1つあるから3回進化した計算になる。
2日で3進化。進化しすぎである。
元が弱いから当たり前ではある。最初のリンカーンマシーンは武装もないし。
因みにビッグウィリーからマークⅠ雄型への進化では武装の変更はない。
相変わらず前方が見にくく、砲が前向かない。前方かつ左右の砲の間にいる敵には砲弾が発射できない。
手りゅう弾対策の防網がついたのがビッグウィリーとの大きな違い。
そろそろ帰ろう。何か寒くなってきた。気合が入っている性か不思議と目がさえているが。
ここんところの食生活や睡眠時間を考えるとそろそろ寝ないとまずい。
M25の運転席に乗り移り、急いで帰る。
町が暗い。夜の9時ぐらいだが。もう皆寝ているようだ。
慌てて源さんの店へ向かうと・・・まだやってる。ラッキー。
「おお、坊主。やっと気が付いたか?」
何の事だ?
「え、まだ気づいてなかったの?・・・さっき買った水筒忘れてるよ?」
がっくしと膝をついた。やってもうた。
本日は飲みに行くのをやめて、宿へ・・・は行かず。源さんと飯を食いに・・・行きたかったが店が開いてない。
この辺の店は基本的に8時には閉まってしまうそうだ。
ええ、この二日間呑み所『きゃんち』にはご迷惑おかけしております。二日連続で飲み潰れて眠る客。
さぞご迷惑でしょうね。
乾パンなど食し、水飲んで就寝。ええ、源さん家の駐車場で魔道戦車に乗って寝てますが何か?
だって泊まりたくても店開いてねえし・・・しくしく、すんません源さんお世話になります。
家に泊まってもいいと言われたが、流石にそれは断って剛丸の中で寝る。
さっき買った寝袋あったけえ。ま、失敗半分成功半分。獲物は沢山狩ったし、魔道戦車も進化した。
しかし泊まるとこ予約するの完全に失念して、水筒も携帯食料も寝袋さえ買ってなかった。
まだまだこれから、もっと精進せねば。・・・流石にだんだん眠くなってきた。おやすみぃ。もう十時過ぎ。眠い。
ーーーー 翌朝 ーーーー
昨日の夜、8時とか10時とか言っていたが。あれも実はこっちの世界で源さんから買った時計によるもの
・・・なんだが、これメーカーがよくわからない。セプコムとか書いてあるように見える。
異世界のメーカーっぽい。確かに異世界独自のメーカーがあってもおかしくないわけだし、面白いので
気に入っている。
とりあえず飯でも食うか・・・乾パンと水。そう、この町には朝食やってる飯屋はない。
宿に泊まれば朝食付きはあるみたいだが、何せ一度も泊まったことないし。
もそもそと飯を食う。そういえばこの世界に来る寸前、カップラーメン食っていたんだよなあ。
上下下着だけで、靴下も履いてなかった・・・のだが、こっちきて気付いたら着てた。
町の人たちが着せてくれたらしい。
漂流民の中にはまっ裸で落ちてくる人もいるとか。町の人が服を着せたり靴履かせたりしてくれるそうだ。
すみません。着るものに無頓着なもんで。
因みに今の剛志は、登山スタイルである。ミリオタだったのは中学頃なので、元々無頓着な事もあって
服には詳しくない。動きやすく、サバイバル向きの服ということでそんな恰好となった。靴もがっちりした登山靴。
ただし頭だけはケプラー製の防弾ヘルメット。お値段高いけど頭重要だし仕方ない。当然借金。
借金借金言っているが、漂流民への優遇政策があるので無利子な上、補助金がでるから町の人は丸儲けらしい。
何時も行ってる飲み屋『きゃんち』でも初めつけにしてくれないか?と逆に言われてしまい。断ったら悲しそう
な顔されてしまった。今ならわかる。つけにすると補助金プラスつけの払いで倍儲かる。そりゃつけにして欲しいわ。
つまり、剛志たち漂流民が万が一狩りの最中に死んでも、町の人は損しないわけ。借金が返ってこなくても
補助金で同額もらえるから全く困らない。こんな政策誰が考えたのだろうか?補助金の財源はどこからくるのか?
興味はつきない。
飯を食い終わったら一応、源さんにあいさつ。駐車場貸してくれてありがとう。
また、お願いね?、え、また?とかいうやり取りをして、町を出る。ハンティングタイムである。
相変わらず緊張感が襲う。気合をいれて狙撃地点2へ向かう。昨日と同じく獲物はいるだろうか?
しばらく同じ所で張って、デスベアー2匹程狩って手当したところで、めずらしく同業者に出会った。
(手当=血抜きなどの狩りの後の獲物の処理の事)
人が静かに張ってる所へ「おおい」とか声掛けてきたので一瞬撃ち殺そうかと思ってしまった。
血気逸っている自分に反省し、
「何だ?今忙しいんだけど?」
「忙しいって・・・寝そべってるだけじゃん?」
こいつ俺に喧嘩売ってんのかな?そうかな?
魔道戦車のキューポラ(車長用の顔出し口、主に砲塔上部についている)から能天気な赤毛君が顔をだしていた。
戦車の種類は三号戦車だが・・・何型かまではわからない。そもそも、改造型なら魔改造するから型番意味ない。
「・・・おい、馬鹿な事言ってんな。すまない。道に迷ってしまって・・・町はどっちなんだ?」
おっともう一人出てきたぞ?変だな・・・いや決めつけは良くない。知っての通り、魔道戦車は一人で動かせる。
何人も同じ戦車に乗る必要がない。しかし、何か特殊な狩りの仕方があるのかもしれない。剛志がやってるのも
かなり特殊な方法だし人の事は言えない。
「折角の狩りにケチがついた。一旦戻るからついてこいよ。」
狙撃は集中力が重要だ。特にこの世界では。獲物は薄暗い煙の中にいる。
「悪いな、助かる。」
礼儀正しい奴だ。黒髪に灰色の目をしている。
初めの奴も、今の奴もドイツ軍服(旧軍じゃない。今の陸軍制服のようにみえる。改造が激しいので分かりにくいが)
をきていて、背は高くないようだ。この世界は食料が貴重だ。デカくなりにくいみたいだ。
剛志がマークⅠ雄型から降りてさらにM25の運転席へ移動すると。驚きの声が上がった。
「なんだそれは、一台の戦車じゃないのか?」
じつにいい反応だ。だが、剛志はこの狩りの方法をあまり公表したくなかった。1に恰好悪い。2にまねされると
獲物の実入りが確実に悪くなると予想される。
4日目だが、素人もどきの剛志でも結構狩れる理由はこの待ち伏せ狙撃方法。
同様の方法を取る奴を見た事がない。剛志が考えるに、1、この世界は暗くて狙撃に適さない。
2、待ち伏せするより、魔道戦車の機動力、防御力、攻撃力を生かして突撃する方がいい。
3、この辺の敵には通称幽霊兵器と呼ばれる、前世紀の遺物が野生化した魔道兵器達がいない。
4、一人で狩りをやるやつは実は少数派。
などの理由から突撃砲であっても敵を見つけたら全速前進で最悪でも敵をひき殺せとなる。
外しても仲間がいればフォローしてもらえるし。仲間がいない場合も、車載機銃が大抵あるから
それで撃てばいいわけだ。(時々何故か機銃ついてないとか、変な戦車もあるがその場合も剛志のようにサブウェポン
持っていればいいわけだ。)
ようは、剛志の方法より良い方法いっぱいあるよ。と言う事。
剛志の魔道戦車は速力が時速6キロ弱、早歩き程度なので突っ込んだら逃げられる。機銃の数は多いが、
それは1つ1つの銃の射撃可能な範囲が狭いので沢山つけてあるだけである。
結局、戦争ならともかく、狩りと言う事になるとこの戦車は適さない。
塹壕乗り越えるのは得意・・ただ中の人はしんどい。前から言っているが構造上サスペンションつけられない。
乗り心地最悪。死ぬよりましだろ?と聞かれたらそうですねと答えるそんな戦車。
「ああ、これは戦車トレーラーに自分の魔道戦車を乗せているだけだ。あんま吹聴するなよ?
恰好良いとは言い難いしな。しかたなくだ。」
すると、連中は顔を合わせてぼそぼそと相談し始めた。キューポラで顔を合わせた男が二人でこそこそ・・・
「・・・できているのか?」
「できてない!!!!!」
速攻で返事が返ってきた。からかい買いのある奴らだ。
「で、何だ?乗りかかった船だ。可能な事なら協力するぞ?」
「・・・実は」
―ーー 30分後 ―ーー
「成程、見事に嵌ってるな。」
「うん、抜け出せなくなっちゃって。頼む、助けてくれ。」
源さんから剛志が教えてもらった危険ポイントの1つの沼地に見事に魔道戦車が嵌っていた。
「よし、ウィンチを使って・・・って名前なんだっけ?」
「・・・名前?」
「あんたたちの名前だよ。自己紹介まだだったろ?・・・俺は剛志。いまさらだがよろしくな。」
「俺はコンドル、こっちの赤毛はファイスっていう。こちらこそよろしく剛志。」
「おう、で、お前の魔道戦車だが・・・重さどのくらいだ?」
「Ⅳ号戦車A型無改造だから、18トン強くらい?」
「じゃあ持ち上げるのは問題ない。まず引っ張り出して、自走可能ならそのまま町へ戻る。
不可能なら牽引する。」
「荷台には・・・ってさすがにスペースがないな。」
「もう一台あれば引っ張れるが、俺の魔道戦車は結構デカい。場所がない。」
「ちょっとまってくれよ。」
「なんだ、ファイス。」
「お前の戦車を自走させればいいじゃん。」
「俺の戦車は時速6キロでないぞ?牽引した方がまだ早い。」
「何それなんでそんな遅いの?」
「型が古いんだよ。」
「何で古い戦車に乗ってるの?」
こいつ、歯に衣着せぬ物言い。空気読めない子ちゃんかよ。
「ファイス、お前の戦車だって最新型ってわけじゃないぞ?その言い方はないだろう。
人それぞれこだわりってものがある。お前だってⅣ号にしないでⅢ号D型だろうが。」
おっと、コンドル君ちょっとお人よし過ぎないかね?知り合ったばかりのハンターに
自分達が進化型使っているって教えてどうする。
「・・・コンドル。それは秘密だっていったろ?」
ファイスの奴はあわててコンドルを止めようとするが既に遅し。
成程な、ファイスは空気読めない天然のようだが、結構計算高い所もあるってことだな。
一方、コンドルはしっかりしてるようで抜けている所もあるってことだ。
いいコンビじゃないか。
「進化型使ってる奴は少ないって聞いたんだがな?」
コンドルは一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに自分の失敗に気が付いたようで渋い顔をした。
「誰に聞いたのか知らないが、当たってるよ。今までに俺達以外で進化型を使っている奴
を見たことはない。」
「ふうん。・・・聞いちゃいけない質問かもしれないが、お前達はいつもはどこで狩りをしているんだ?」
「いや、それは」
「ファイス。多分剛志は俺達がこれから行こうとしている町の人だよ。
・・・俺達は隣町のグシから来た。あんたはマテロの人だね?」
「何故そう思う?」
二人は顔を見合わせるとニヤリとした。
「最近マテロは羽振りがいいと聞いている。漂流民が来たとか、数十人来たとか言われている。
行政は特に何も言わないが、補助金がでるから急に羽振りが良くなるのさ。それで分かるのさ。」
「剛志はひょっとして漂流民なのかい?」
剛志もニヤリとした。
「その通り、だからあの町には進化型使いは結構いる。俺も含めて。」
「やっぱりか・・・それでマークⅠ雄型なんだな?」
「流石にここまで古いの使っている奴は他にいない。でも今あそこは新人ハンター祭りの補助金祭りだな」
「まじか?これは当たりかなファイス」
「そうだねコンドル。」
「どういうこと?」
「町によっては治安も悪いし、金回り悪いと品揃えも悪くなって悪循環になるんだよね。」
「俺達は世界中を旅をして回っているのさ、いい町に出会えたら嬉しいだろ?マテロは期待できる。」
世界中を旅して周る・・・いいな、やってみたい。だがそれももう少し剛丸が強くなってからだな。
結局、コンドルの魔道戦車は泥がシャーシにまで入り込んだせいでまともに動かない。牽引して町へ連れて行った。
2014/11/07 誤字修正