第三十五話 B1重戦車
毎度、拙作をお読みいただき誠にありがとうございます。
本日も何とか投稿できました。
ストックとか無いので今後も時折更新が滞ると思いますが
お付き合いください。
ついにタージマ家より招待された当日を迎えた。
朝から緊張していて胸焼けがする。
コンボイ・・・この前タージマ家のアレクサンドルとミーシャと
その部下の皆さんと乗ってきたものと同型のものが宿の前に到着する。
「お待たせいたしました。ムールドチームの皆様。」
執事の様な恰好の方が下りてきて、皆を車内へ案内した。
「よっ。」
「源さん。・・・早いね。」
「おう。」
何かほっとした。
ほら、知らない場所で知ってる人にあうと安心するでしょ。
それ。
「朝食はお済でしょうか?まだでしたらこちらでご用意
いたします。」
「折角ですので何かいただきましょうか。」
ムールド氏がそう言う。我門さんも頷く。
その後は皆バラバラに注文をした。
本当にばらんばらんだった。実にハンターらしい。
ハンターってのは群れていても、その本質は個人にある。
稼げなくなったら、動けなくなったらおしまいだ。
自分の能力が最後には物を言う。結局は個の集まりなんだ。
だからこんな時にはそれが顕著にでる。
皆自分が食べたいものを素直に言う。
他に合わせたりはしない。
--- 3時間後 ---
ついに招待された場所へ到着。
でけー。
サーカスのテントもこんなんでかくない。
剛志は昔一度だけ巨人ファンの父につれられて東京ドームに
行った事があるが。それと同じぐらいあるテント。
正直圧倒されて、はあーとかほおーとか言いながら。
剛志は中に入っていく。
「ちょっと、隊長。しっかりしてくださいよ。」
とか孝道が言っているが。
周りの人からなんか温かい目で見られているが。
剛志は全く気にしない。
「いやだって凄い物は凄いよ。」
「・・・まあ、そうなんですけど。」
仲間達もくすくすと笑っているが。
にこにこしながら剛志は中に入って行った。
--- 別の場所 ---
「どう思う。」
「どうとは?」
「とぼけるなよ。今の連中の評価だよ。忌憚のない所を
聞きたいね。」
「悪い人ですね。恩人を評価しろとは。」
「それはそれ、これはこれだ。俺には責任がある。
そりゃ感謝はしているよ。でも今後の事を考えると・・・」
「わかってますよ。そうですね・・・」
「第1印象は普通ですね。」
「普通?」
「普通に使えるでしょう。」
「ああ、そういう事。」
「ですが・・・まあ会ってみないと何とも言えませんか。」
「ちょいと面白そうな奴もいるって事か?」
「ええ・・・楽しみですね。」
--- 宴 ---
「うめえなこれ。何でできてんだろ。」
何かの煮込み料理を食べながら剛志がそう呟く。
「ひょっとしたら聞かない方がいいものじゃ?」
孝道はへっぴり腰だ。
「可能性はあるな・・・まあ美味いからいいか。」
がつがつと貪り食う剛志。
「ですね。」
孝道はそれでも食べない。
「おーい剛志いいいいーっ飲んでるか―。」
「おい、ユーティリシアに酒飲ませたの誰だ。もう出来上がってる
じゃねえか。この後挨拶あるって言ってたぞ。」
「すみません。水飲ませて寝かしときます。」
「アムリシア頼むわ。注意してくれよ。」
このテント内には数千人来ている。
なんとタージマ家はこないだのジャッカル戦に参加した全員を
招待した。
警備隊の皆さん、タージマ家の人々、ハンターの皆。
全員来ている。で、こんなテントで大宴会。
正直地球時代でもこんなの参加した事ない。
アイドルか何かのイベントかよ。
招待客だけじゃない。もてなす側も凄い人数。
考えてみれば当たり前か。
タージマ家の2万両を楽に超える戦車部隊。
こいつを正しく使うには、経理、輜重等の多数の補助部隊が必要
になる。
数万人いやその家族を含めれば数十万人の一族という事になる。
メイドさんや執事さん達が客の間を縫って飲み物や食べ物を入れ替え
ていく。最早芸術的だね。
『えー宴もたけなわですが。ここで主賓の方々から皆様へのお礼の
言葉がございます。』
中央に一部高くなった壇の様なものがある。
そこに司会者みたいな人?が居て、マイクを使ってそう言った。
『あー良い良い。そのままで結構。
私はアルフレッド・タージマ。タージマ家の家長である。』
司会者の横から檀上へ上がった人がマイクを取って言った。
うおっと。一気にざわめく皆さん。
この人がタージマ家を率いる者か。
思ったより小柄な人だった。
いや、勝手にこっちが大きい人だろうと思っていただけなんだが。
口髭がいわゆるカイゼル髭と言うやつで。
髪も目も黒い黒々としている。40歳ぐらいに見えるが、子供達の
年齢を考えるとそれよりは年上の筈だ。
『ここにいる皆さんに心からお礼を言いたい。
ありがとう。娘を助けてくれてありがとう。
1人の親として礼を言う。』
そう言って彼は深々と頭を下げた。
その潔い態度に、会場から拍手が巻き起こった。
『今日は山海の珍味を集めてみた。楽しんで行ってくれ。』
皆の喜びの歓声が巻き起こる。
アルフレッドは手を振って。壇から降りて行った。
しばらくすると、音楽隊が出てきて、メロディアスなミュージックを
流し始めた。
うっとりとそれを聞く者、食事を食べる事に集中する者。
談笑するもの。さまざまだ。
「これも美味いな。もっと取ってこよう。」
「隊長。俺がいきますよ。」
「いや、他にもいろいろ食べたいんでな。自分で取りに行く。」
「じゃあ一緒に行きましょう。」
ユシスと一緒に剛志は飯を取りに行った。
見た事無い物もいっぱいある。
だがここは・・・。アワビみたいな何かにするか。
いや、本当にアワビかもしれないが。。
がっつり取って戻ろうとすると。
「おい、坊主。」
源さんに呼び止められた。
「なんですか?」
「いや、アレクサンドルとミゲーロとナーシャがお前に礼を
言いたいそうだ。」
おお、そういう事ならば。
源さんにくっついてその後を歩く。
源さんの知り合いは多い。移動中にしょっちゅうそこいら中から
挨拶を受ける。源さんは、おっとか後でなとか答えながら、
ずんずん進んでいく。
剛志はその後をゆっくりついていく。
しばらく歩くと、ちょっと人ごみから離れている所があった。
別に壁沿い(テント沿い?)でもないのだがそこだけ人があまり
いない。
理由はすぐに解った。
タージマ家だ。
「あれ、源さんと剛志君。よく来てくれました。」
満面の笑みでアレクサンドルが挨拶してくる。
「どうも、すごい宴ですね。」
そう答えると。
「ええ、流石にこのレベルだと新年会ぐらいしかないですね。」
と答えられた。
新年会って・・・毎年やってんのかい。
「すまねえが、俺は他の知り合いからも呼ばれてるんで、
後は剛志だけで頼むは。」
源さんはそんな事言って、さっさと人ごみの中に消えて行った。
「忙しい方ですね。源さんは。」
「あのう、源さんとはどういったお知り合いで?」
ちょっと気になったので聞いてみた。
「その前に私からもお礼を言わせてください。
本当にありがとうございました。剛志さん。」
アレクサンドルの横にいた美人さん。金髪のウェービーヘアって
やつか?青い目が素敵な美女。
からそんな事を言われた。
あの時は暗がりだったのでどんな人かは全く分からなかったんだが。
まあ、美人だな。兄弟も美男だし当然かな。
「いえいえ、ほとんど源さんと貴方のお兄さんがやったんですよ。」
「でも、ジャッカルを倒したのは剛志さんですよね。
意識は朦朧としていましたが。兄の戦車の中から見てました。」
あら、アレクサンドルに運ばれている時は、ぐったりしていたから
気絶していると思っていたら。見ていたのか。
「ジャッカルは俺の事を甘く見ていたのです。まあ俺の戦車はまだ
WWⅡ前の戦車ですから。それだけ見れば戦力外だと思っても当然
ですがね。」
「私もこう見えて戦車乗りです。ご謙遜する必要はありませんわ。
剛志さんは凄いと思います。」
うーん。美女にキラキラした目で見つめられるという経験が全く
無いもんで、落ち着かないな。
あーでも最近はあるか。ユーティリシアとかアムリシアとか。
「いえ、まだまだですよ。」
「そんな事は無いぞ剛志君!」
おっとあの方は・・・アルフレッド・タージマともう一人の男が
こっちにやってきた。
何か二人は良く似た印象を受ける。もう一人の男は黒髪で黒目。
髭が生えていないというかそっているのだろう。
「高橋から話は聞いているよ。なかなか見込みがあるって。」
高橋?・・・ああ源さんの名字だ。知り合いなのか。
「過分にお褒めいただきありがとうございます。」
とりあえず慇懃に返しておく。
「そんなに畏まらなくてもよろしいですよ。そもそもこの宴は
剛志さん達の為のものですしね。・・・ああ、ご紹介が遅れて
申し訳ございません。私はトーマス・タージマ。
タージマ家宗家長男になります。」
そう言った男は確かにアルフレッドに似ているというか他の
兄弟は皆金髪で青い目だが。この男は黒い目で黒髪だ。
父親似なのかな。
「どうも。高地 剛志と申します。」
「このたびは、妹の救出を手伝ってくださり、ありがとう
ございます。お蔭で助かりました。」
「私からもお礼をさせてくれ。ミゲーロ・タージマだ。
本当にありがとう。」
始めからいたミゲーロもここでお礼を言った。
タイミング取りづらかったんだろうな。
「いえいえ、先程も言いましたが。ほとんど源さんと
アレクサンドルさんのお蔭ですよ。私は最後ちょこっと仕事した
だけです。」
「はっはっは。」
かなり豪快にアルフレッドは笑った。
「その最後のちょこっとの仕事がいい仕事なんじゃないか。なあ?」
「父の言う通りですわ。」
その後も暫く歓談した。
魔道戦車の話とか狩りの話とか源さんとの話とかいろいろ話した。
アルフレッドは気さくな人で、それに対し、長男のトーマスは
少し神経質な感じ。ミゲーロやアレクサンドルは豪快な感じ。
マーシャは楽しそうにころころ笑った。
助かってよかったね。
源さんは、その昔、修行の旅に出ていたアルフレッドと共に戦った
事があり、トーマスとミゲーロも修行中にお世話になったらしい。
マーシャもアレクサンドルも今回お世話になったし。
奴には頭が上がらないと笑っていた。
「おっと。」
他の人が来てアルフレッドに挨拶してきた。
「すまんね剛志君。他の人への挨拶もあるのでこれで失礼するよ。
楽しんで行ってくれ。」
アルフレッドはそう言って去って行った。
トーマスも一緒に去った。彼は去り際に会釈して行った。
「それじゃあ俺はこれで行きます。仲間も待っているんで。」
そう言うと。
「御名残惜しいですわ。」
とかマーシャさんが言った。
「また何時でも遊びに来てくれよ。」
そう言うアレクサンドルとマーシャに会釈をして、
剛志は仲間の元へ戻って行った。
--- その後の・・・ ---
「成程な。今のがお前が言うちょっと面白い奴だな?」
「はい。」
「ふふふっ昔の源三郎に似ている。」
「そうですね。ちょっと似た感じがします。」
--- 仲間の元に戻った剛志 ---
「あ。」
剛志はいきなり口を開いた。
「何ですか?隊長。」
ユシスが驚いてそう聞いて来た。
「ジャッカルがどうなったのか聞くの忘れた。」
「・・・どうでも良くありません?」
あきれたように言うユシス。
「いや・・・何かな・・・まいいか。
俺はハイドラへ戻るからお前達は楽しんでけよ。」
「え?帰られるんですか?」
ちょっと驚いた風に言うのはアムリシア。
「狩りがしたくなった。アルフレッド・タージマに会ったから
かな?」
「なんですかそれは。ふふふっ。」
「まああれだ。皆は折角だからいろいろ楽しんできな。
俺は俺で楽しむとする。狩りをな。」
「全く狩りバカですね。」
などと孝道がいうので。
「おい、孝道・・・一緒に行くか。」
「ひえええ、ご遠慮いたしますです。」
「ふっ冗談だ。お前は宴を楽しみな。」
そう言って剛志はテントを出て行った。
外で待機している人に帰る旨告げると驚かれたが。
アルフレッド氏との歓談によって闘志が湧いてきたので狩り
に行くというと、
「そういう方もいるかもしれませんね。」
等と言われた。ハンターてのはほんと千差万別。
いろんな奴がいるもんだな。
再度3時間かけてハイドラ市へ戻った。
そして剛志は剛丸に乗って狩りへ出かけて行った。
戦車の油と火薬の匂い。
銃の硝煙と大砲の爆風と砲煙。
1人で扱える魔道戦車。
狩りをした。
ハメ技も使わず。敵を集める事もせず。
日暮れまで戦った。
剛丸は2段階進化した。
B1重戦車生産型に進化。
主砲が機銃2丁から30口径47mm戦車砲SA34と7.5mm機関銃M1931に変更
された。
続けてB1bis重戦車に進化。
前にも言ったがbisとはフランス語。日本語に訳すと二度目とか
改良とか言う意味なので。
B1重戦車改という事になる。
車体の前面と側面の装甲厚が60mmと厚く、WWⅡ開戦当時のドイツ軍
には破壊が難しい強敵だった。
いくつかの部隊では慌ててアハトアハト高射砲を持ち出してやっと
撃破したという。
装甲の増大とともにエンジンを大出力のものに換装してるので機動力
に変化はない。
最高速度時速27.6Km
砲塔をAPX-4に変更し、32口径47mm戦車砲SA35に換装。
車体前部にはB1と同じで17口径75mm戦車砲SA35を装備。
取得スキルは、
防御力上昇Lv1 を新規に取得。
装甲の硬さがレベルのよって上昇する。
ダメージ上昇のレベルがLv5へ上昇。
宿に戻るとムールド氏が待っていた。
「ユーティリシアさんとコンドル君もいますよ。」
あら、隊長会議するの?
「ええ、明日の事で話があります。」
「明日?」
「とりあえずついてきてください。」
--- 別室 ---
「実は我が隊に入隊希望者が数名来ております。」
「おおっ。」
「明日。面接を行いますので。隊長の皆さんは参加してください。」
おおっと。
「そうか。調整したね?」
指を弾くコンドル。
「どういう事コンドル?」
不思議そうなユーティリシア。
「多分結構前から参加希望者は来ていたんだよ。
でもタージマ家の宴の後で面接をするようにしたんだと思う。」
「ああそうか。」
面接か。自分で受けた事はあるけど。
自分がする側になるのは初めてだな。
「使える奴が多いといいな。」
そんな事言うコンドル。
「そうだね。」
無邪気なユーティリシア。
「申し訳ないですがそういう事ですので明日は1日いてくださいね」
あれま、じゃあ明日以降にするか。
「剛志君?何か言いたい事でも?」
「うん、ちょっと面白い物を見つけたんで探しにいきたいと思って
いたんだよ。でも面接後にする。」
「またですか?」
あきれたようなムールド氏。
「またって。ルシアの件は向こうから来たんじゃないの。
俺のせいじゃない。今度は俺の用事さ。」
「うーん。ちょっと相談させてください。次の作戦もありますし。」
「いや、急ぎじゃないから。クエストがあるならそっちを優先
するよ?」
「そうですか。うーん。しかし上手くやれば・・・」
何か考えているムールド氏。
「兎に角。明日は面接よろしくお願いしますね。」
『了解。』
そうして本日の夜は更けていく。
「いい人が入るといいね。」
「そうだね。」
ムールドチームもどんどん人が増える。
何時かタージマ家の様になるのだろうか?




