第三十一話 ルノーAMC35
毎度、拙作をお読みいただき誠にありがとうございます。
まだ体調不良につき更新が遅れてもうしわけございません。
体力復活までしばらくご容赦を。
昨日は執筆中にめまいがしてやめました。
急に寒くなってきております。
皆さんもお体に気を付けて、風邪などひかないようにご注意ください。
いよいよ出発。武器弾薬を満載し、出陣じゃ。
今回はドラゴンワゴンは置いていく。
戦闘があるかもしれんし、それは対戦車戦闘になる可能性が高い。
牽引車両を持っていきたいのはやまやまだが、
ドラゴンワゴンがやられる可能性が高いしな。
「さて、奴が根城にしているガザ市にまず侵入する。」
「源さん。どうやんの?」
「うむ。説明するが、まずハイドラから離れよう。」
???ここで言えないと言う事は何を考えて・・・ひょっとして。
源さんが悪い顔をしている。
アレクサンドルは飄々とした顔をしているが。殺気があふれてます。
密かにアムリシア、孝道、ユシスに合図する。
--- ハイドラより出発してから2時間後 ---
「うん。この辺りが適当だろうな。」
源さんが無線でそんな事を言って、車両を止めた。
「そうですな、ここが手頃でしょう。」
アレクサンドルがそんな事言って右手で左手の平を叩いて
音を立てた。
しばらくすると、キュラキュラという音と共に戦車がスモッグの中
から姿を現した。
IS-3戦車が20両。
IS-3戦車のISはヨシフ・スターリンの頭文字。
英語ではJS-3となる。
ソビエト連邦の公用語はロシア語。
ロシア語はキリル文字なのでキリル文字を
直訳するとIS、読みのヨシフを英語に直すとJSとなる。
当然どっちでもいい。読みの訳と書きの訳の違いなだけなので。
JS重戦車とIS重戦車は同じものとだけ覚えておこう。
JS-3はその3番目の型。独裁者スターリンの名を冠しているだけ
あって、カタログスペック上は極めて強力な戦車だ。
最大装甲厚220mm
剛丸の進化を見てきた皆さんならこの装甲の凄さが良く分かると
思う。
10mmとか30mmとか厚くても60mm前後の剛丸に対し、
IS-3は220mmしかも傾斜装甲。
*説明していなかったが。傾斜装甲とは装甲を斜めに装備したもの。
その辺にある板や段ボールでやってみると良く分かるが。
垂直に厚さを測った場合と、斜めに厚さを測った場合では当然厚み
が異なる。斜めに測れば厚くなるに決まってる。
実際にも斜めになった装甲に弾が当たると。通常より厚い装甲と同じ
動きをする上に、角度によっては弾が装甲の上を滑って弾かれて
しまうのだ。
主砲:43口径122mm戦車砲D-25T
122mmとか化け物か。
剛丸の進化を・・・以下略。の皆さんなら分かると思うが。
今の剛丸は37mm戦車砲。弾のサイズが全然違う。
これだけデカいと砲弾の威力も相手にならない。
最高速度時速37Km
これも凄い。装甲が厚くて攻撃力が高い戦車は大抵機動力がない。
IS-3は機動力が高いとは言えない数値だが低くもない。
重戦車でこの性能バランス。
ソ連戦車の真骨頂だ。
さてこの戦車はWWⅡ終盤に作成された。だから某アニメに登場しても
よかったのだが。実戦経験皆無というのがネックになったのかもしれ
ない。
IS-3はドイツのマウスやアメリカのT-28重戦車。英国のトータスと
は違い。量産された。主力戦車だ。
1945年中に1711両も作成されている。
しかし、戦争は最早終結。前線に送られたが戦闘には間に合わな
かった。
何千両も作られた同機だが、ドイツ降伏時にはまだ29両しか完成
していなかった。
だがしかし、戦争が終わった後にこいつの出番が来たのだ。
それは戦闘ではない。軍事パレード。連合軍による戦勝記念パレード
にIS-3は参加した。
IS-3を見た他の連合軍は凄いショックを受け、その後の戦車開発に
大きな影響を与えたという。
因みにソ連兵達の間での愛称は「シチュチー・ノス」
(川カマスの鼻)転じて「シチュカ」(川カマス)
車体前面の形状がシベリア産の川カマスの頭に似ていたらしい。
ついでに源さんとアレクサンドル達の戦車も説明する。
源さんは
74式G型戦車。
日本陸上自衛隊が1974年に正式採用した戦車。
そのG型。
実は74式は小改良を繰り返しており。G型が最終型。
初期型とはかなり変化があり、
APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)を使用できるようにFCSや弾薬架
を改良。
HEAT-MP(多目的対戦車榴弾)を使用できるようにFCSを改良。
最新の弾道コンピューターやレーザー検知装置、
パッシブ式暗視装置、履帯脱落防止装置、サイドスカート等を導入。
主砲の砲身が熱による歪みを起こすのを補正するための
サーマル・スリーブ(砲身の周りに被され、温度を一定に保つ)
を装着。
オリーブドラブ一色だった塗装を濃緑色と茶色の二色迷彩に変更。
特にAPFSDAとHEAT-MPを撃てるようになったのが大きい。
APFSDSは装甲貫徹力は射距離2kmで414mm程度の均質圧延鋼版を
貫徹可能。つまりIS-3も真正面から撃破できちゃう。
さらに、アレクサンドルらは全員アメリカ製の最強戦車M1A2SEP
に乗っている。殺意高え。
SEPとは(System Enhancement Package:システム拡張パッケージ)
つまりM1A2をさらに強化しましたという代物で、
第2世代FLIR(Forward Looking Infrared:赤外線前方監視装置)、
統合型熱線管制システム、
GPS(Global Positioning System:衛星位置測定システム)、
改良型カラー・ディスプレイ(地形地図とキーボード)、
EPLRS(Enhanced Position Locating and Reporting System:
能力向上型方向・位置報告システム)、
補助動力装置(車体に格納)などが積み込まれる。
どれも凄いハイテク装備だが。特に重要なのが実は補助動力装置。
一見地味なこの改良だが、M1エイブラムスはガスタービンエンジン
というのが問題。
こいつは小型軽量な割には出力が高い事。
米軍は航空燃料をがぼがぼ持っているので、ガスタービンエンジン
は航空燃料を使用するため燃料の共通化が図れる事。
等の利点があるが。
一方で問題点として、アイドリング時もがんがん燃料を消費すると
いう困った点がある。ハイテク装置は電気で動くから。
アイドリングしないとバッテリーが干上がってしまう。
折角のハイテク装置もバッテリーが干上がったら機能が使えなく
なってしまう。
そこで補助動力装置。こいつを付けて非戦闘かつ停止時でも
ハイテク兵器が使えるわけだ。(戦闘時は当然エンジン動かして発電)
そうこうしているうちに、一両の戦車が進み出てきた。
ハッチが開いて一人が外に出てくる。
「アレクサンドル・タージマだな、ここから先には行かせねえぜ。」
やっぱな。付けられていたか。もっともそれを知った上で始末する気
満々な吾人がこっちには二人もいらっしゃる。
アレクサンドルと源さんだ。
アレクサンドルの配下の皆さんもやる気満々。
まあ、確かにIS-3は良い戦車だよ。でもエイブラムスや74式に勝てる
戦車じゃない。
アレクサンドルだが、ハイドラ市に来たときには、M4シャーマン
1個中隊で来たらしい。完全に嵌める気満々。
エイブラムスは完全に別ルートからハイドラに入れたらしい。
表から堂々とM4で入場し、出るときはエイブラムス。
酷い詐欺であるが。ハイドラ市内にスパイがいる事を想定し、
さらにその性格まで熟知している。
下手な国家より強いというタージマ家の三男だけある。
源さんも悪い顔してたもんな。何か企んでますって顔だ。
「アムリシア。隊物理防御魔道急げ。自分とユシスに頼む。」
剛志はそう指示をだし、自分にも自分で防御魔道展開。
孝道?孝道も自分で展開できるはず。
孝道はあわてて防御魔道を展開している。
以前からアムリシアとユーティリシアにスパルタ教育受けているんだ
これ位はできないとね。
ああ見えて自己防衛能力は高い。口調が間が抜けているんで油断
しがちだが、孝道はハンターとしての能力は高いと剛志は思っている。
「こっちは何もしないでもいいぞ?・・・他の連中が殺ってくれる
からな。」
剛志は隊員たちにそう指示をだす。
実際問題。アムリシアと孝道以外の戦車砲ではIS-3には勝てん。
いや、剛丸はスキルがあるので実は結構効く。
でも無理する必要性が全く感じられない。
アレクサンドルと源さんがやる気満々だからして、下手に手を出した
ら帰って怒られるんじゃね?
「隊長。私もですか?」
「アムリシア。考えてみろ。アレクサンドルさん達はやる気満々。
もとから嵌め技しかけてるんだから。・・・俺達が手を出すのは
野暮ってもんだよ。」
「・・・それもそうですね。防御に専念します。」
「頼むわ。特にユシスがやられないように気を付けて。」
「ダース。」
アムリシアの防御魔道は一級品。流石元軍人は違う。
威力と言うより、技術が凄い。的確に防御するその反応。
何時も助けてもらっております。
つっても普段は別部隊なんですがね。
ダンジョンの時から一緒にやっていて、副官状態だからつい
甘えちゃうな。反省反省。
さくっと戦闘終了。
だって最初の一撃で半分近く吹き飛ぶんですもの。
アレクサンドルとその配下の6両のエイブラムス、
さらに源さんの74式がかかれば一気に7両行動不能。
3発で・・・10秒程で戦闘終了。
あっけないもんだ。
M1A3SEPエイブラムスの唯一の問題点は装填が手動である事なんだが
アメリカ軍はそれをあまり弱点と思っていない。
手動の方が短時間での装填速度は上がると思っているし、4人乗り
である事が重要だと思っているようだ。
日本の90式や10式は3人乗り。フランスの最新戦車ルクレール
(ルクレールはWWⅡ時にフランス解放に貢献した将軍の名。
因みに偽名。本名は別。ドイツ占領下の家族に迷惑をかけないため
偽名を使っていたらしい。余談だがルクレールは稲妻という意味で、
エクレアと言えばよく知ってるあの洋菓子の名前も同じ意味。
日本語に翻訳される際にエクレアとルクレールと分かれているだけ。
このお菓子も稲妻の如く素早く食べないとクリームがこぼれるという
事からエクレアとついたという説がある。)
もまた3人乗りだ。自動装填装置を使用しているためだが。
フランス戦車は乗組員を出来るだけ減らそうとする伝統がある。
恐らく、少ない人数でたくさんの車両を動かすようにしたいの
ではないか?
その方が戦力があがると思っているのだろう。
アメリカはそれに対し、戦車の乗組員は4人が最適と思っている感
がある。戦車の乗組員の仕事は戦車を動かす事だけではない。
迷彩を施す。壊れたら修理する。いろいろやる事はあるので、
3人は少ないと思っているようだ。
さて、こんなあっけないくだらない戦闘でも経験値は入る訳だ。
正直申し訳ない感でいっぱいではあるが。
何せ剛志達は何もしてない。防御を固めて見てただけ。
でも進化してしまう。・・・剛丸は。
他は流石に進化しない。
剛丸のみ1段階進化。
ルノーAMC34生産型に進化。
砲塔がAPX-1に換装され、主砲も30口径47mm戦車砲SA34に換装
された。
短砲身ながら、47mm砲なので威力アップである。
IS-3とは戦えるレベルじゃないけどね。
取得スキル。
ダメージ上昇がLv4にアップ。
「それで?これからどうするの?」
「こいつらは雑魚よ。ジャッカルのおこぼれに預かるハイエナ共。」
「これからが本番です。気を引き締めていきましょう。」
「そうっすか・・・で、どうやって潜入するの?」
「それはついてからのお楽しみさ。」
さいですか。多分地下通路とかあるんでしょうな。
--- 3時間後 ---
予測通り地下通路でした。
「どうだい?」
どうだいって言われてもなあ。
「予想通りでしたが何か?」
「ちっつまんねえの。」
そんなむくれても困るよ。
「この通路はガザができた際には防空壕として使われた物なの
ですが。今は廃墟と化しています。」
おっとアレクサンドルさん説明ありがとう。
「いえいえ。」
ジャッカルがガザ市を要塞化したのには訳がある。
元々このガザ市は軍事基地としてWWⅢ時に使われたものであり、
そのため要塞化がしやすいという事だ。
だがその一方でこのような誰も知らない・・・
いや違うかアレクサンドルは知っていた。
調べたのかな?
「実はこの通路は俺が現役時代に見つけた物だ。」
流石源さん。成程ね。
「お蔭で戦車による侵入作戦などと、普通はあり得ない作戦が
立てられたわけです。」
良かったですねアレクサンドルさん。
「この後ここの守護者が出る。そこは気を付けないと駄目だ。」
「なんすかその守護者ってのは?」
「この防空壕の守り手、もっとも命令を下した奴は今頃墓の下
だろうが。ずっと命令を守っていて。やられても復活するもん
だから・・・」
「現役時代においしくいただいたと?」
「うむ。」
流石源さん。ゆるみないね。
「まあ今の俺らの相手ではないな。何せ現役時代は1人でやってた
んだから。」
「さすが源さんですね。」
いや本当そう思うわ。
内部は暗い。剛丸にも暗視関連スキルをつけるべきか?
ダンジョンの時は照明を使ったが。
今回は隠密行動?なので、使用できない。
まあ、魔道も使えるし。困ったりはしないがね。
暗視魔道を実行し、しばらく源さんとアレクサンドルの案内で
進む。
「この次がボス部屋だ。」
「属性は?特殊攻撃は?」
ダンジョンで知った。属性重要。
「基本的に地属性だな。後結構硬い。物理攻撃メイン。」
地属性か。初対決の属性だな・・・などと緊張していた時も
ありました。
さくっと終了。
当たり前だ。
7発ものAPFSDSがスタート直後に炸裂し、砲煙で敵が見えなくなる。
敵はどうもモグラ型ロボットというかゴーレムになるのか?
だったようなんだが。初めにちょろっと見えただけで、
いきなり吹き飛ばされた。
特にM1A2SEPエイブラムスの120mm砲は威力が凄い。
しょっぱなからズタボロにされた敵は反撃しようとするが。
はい、再度炸裂。
4秒もあれば再装填終わる訳で、敵の攻撃前に再度炸裂する戦車砲。
「はい終了。」
源さんの呑気な声がする。
この戦力はひょっとして正面突破も可能なんじゃ。
「いよいよ要塞内だ。こっから気を引き締めていけよ。」
ええ、まあ、はい。
正直モチベーションを維持するのが大変なんですけどね。
あまりに楽な戦闘は終わった。
先程の戦車戦といい、今のボス戦といい。
流石の剛志も、
「こんなんでいいんだろうか?」
と一寸悩んだ。
「ま、いいか。」
直ぐ悩むのを辞めたがね。
さてお待ちかね?の進化ターイム。
どんなに楽な戦いであっても、敵が強ければ経験値は入る。
強い敵を一瞬で倒す。RPGとかでレベル上げする基本だよね。
孝道、ユシスそして剛丸それぞれ1段階進化した。
孝道機は
CV90120軽戦車に進化。
CV9040歩兵戦闘車をベースに開発した戦車で、
旧式化したIkv.91水陸両用軽戦車の代替え戦車。
主砲:50口径120mm低反動滑腔砲CTG
CTGとは Compact Tank Gun:コンパクト戦車砲の事。
低反動砲とはいえ、120mm砲は現在の多くの国で使用されている
主力戦車砲の規格。攻撃力は上昇している。
機動力も高い。最高速度時速70Km。
防御力・・・。軽戦車なのでしょうがない。
フィンランド、スイス、ノルウェイ、デンマーク、オランダ等の
北欧中心にヨーロッパに輸出された。
ユシス機は
T-29に進化。
こいつはT-28ベースの試作車両。
T-28のサスペンションをソ連大好きクリスティー式にしたもの。
T-34とは違い。こっちはクリスティー式の特徴である
装輪装甲する事が可能。
履帯はずして転輪にタイヤを履いて走行する事ができる。
タイヤと履帯を履き替えるのはもちろん手間暇かかるが。
広いソビエトの領土を走るにはこれがいいと思われていたのだろう。
サスペンション以外には変更点がない。
相変わらずの多砲塔戦車。T-35程の数の砲塔は持っていないが。
剛志の剛丸も進化。
ルノーAMC35(AGC1型)初期生産型になった。
以前説明した通り、AMC34は戦闘車両の割には小さく使いづらい
とのフランス陸軍からのクレーム?により、AMC34ベースに
新設計されたもの。
初期生産型は量産型と異なり、主砲が47.2口径25mm戦車砲SA35
を使っている。
正規生産型は32口径47mm戦車砲SA35。
車体が大型化したのにあわせエンジンを換装したおかげで、
機動力が低下せずに大型化に成功している。
砲塔がAPX-1からAPX-2に換装されている。
最大装甲厚も20mmから25mmに上昇。
取得スキルは
突撃がLv2に上昇。
大ボスを倒した後は特に敵もでずに進む。
「いよいよガザ市内。要塞内部に入ります。」
「まさかこのままかちこみかけるわけじゃないよな?」
「はい、実は内部に手引きするものを紛れ込ませています。
その者にまずは会います。」
敵のスパイは欺き、味方のスパイを忍ばせるとはやるな。
流石タージマ家三男。
「そろそろ時間だなミゲーロが軍を率いて攻めかけるはずだ。
その隙に侵入するぞ。」
源さんの言葉に頷く。いよいよ侵入ってわけだな。
正直このメンバーなら負ける気はしない。
だが問題なのは人質だ。
マーシャさんが無事ならいいのだが。
さて、どうなっているか。




