第三話 菱形戦車ビッグウィリー
昨日源さんと飲んでくだまいたときにいろいろな話を聞いた。
そこで剛志は魔道戦車がどのようにして成長していくのか?といった疑問
について詳しく聞くことができた。
魔道戦車の強さのうち、魔道的強さは、成長させることができること。
各魔道戦車には各々得意な技術、スキルを持っているが。進化型の場合、前魔道戦車が持っていたスキル
を受け継ぐことができる事。
本来特定の魔道戦車のユニークスキルであるはずの技能を他の種類の魔道戦車が持っている事があったので
現役時代の源さんは気になって調べたらしい。
源さんの話は重要だと剛志は思った。源さんの数十年にわたるハンターとしての経験はバカにできない。
基本的にスキルは魔道戦車の成長と共に強化されていくが、後付する方法もあるし、新スキルを勝手に覚える事もある等々、
源さんの話は剛志の今後のハンターとしての方針にいろんな意味で強い影響を与えた。
リンカーンマシーンの初期スキルは
「不整地機動Lv1」 ユニークスキルではないが、新規にスキルを追加したり覚えたりする際の手間を考えるとあるに越したことない。
その名の通り、不整地を移動する際に速度ボーナスと揺れにくくなるものだが、Lv1ではないも同然。そだてなくては・・・
リトルウィリーの初期スキルは
「防盾Lv1」 これもユニークではない。ま、しゃあない。優秀な戦車ではない。そもそもリトルウィリーも没兵器だし。
特定確率で飛び道具をはじくことがある。というもの。初めは重要ではないが、高レベルになると必要となると源さんはいっていた。
両方Lv1だが、鍛えれば成長していくし、スキル追加にかかる費用を考えるとお得である。
「はやくまともな戦車に乗りたい。」
思わず声にでる剛志だったが・・・
「ごめんよ、剛丸。お前が悪いんじゃない。俺がもっとがんばってお前を強くしてやるからな?」
剛志は自分の戦車にタケマルとかいう名前を付けたらしい。もちろん自分の名前の剛志から一字取ったわけだ。
魔道戦車には魂がある。悪口は教育に良くない。剛志の魔道戦車教育方針である。
しかし、初めはいきなり上手くいってしまったが。その後は中々狩りには成功しなかった。
まあ、初めだしな、いきなりそう美味しい事にはならないか・・・
剛志の考えた狩り方針は基本的に待ち伏せである。
源さんに教わった獲物出現ポイント・・・から離れた、狙撃地点を洗い出し、そこにM25で移動。
狙撃地点到着後、荷台の上のリンカーンマシーンの上に乗って、M82を構えて後は獲物が来るのをひたすら待つ。
一発目でいきなり成功した上、このバレットM82、源さんの手入れがいいせいか命中率高い。
素人の剛志が一発目で当てるなんて奇跡的だが、ビギナーズラックというべきか。
ただし、設置が悪いせいかキックバックが酷くて胸が痛い。痛いですんでるだけまだましなんだろうけども。
よし・・・今日はもう上がろう。
昼を過ぎたあたりで剛志はそう思った。
飽きた訳ではない。M82の取り扱いを源さんにもっとよく教えてもらうべきだったと後悔したのである。
M82とは結構長いつきあいになると剛志は思っていた。
ここまで精度のいい銃が乗ってる戦車を育てるにはどんだけ時間がかかるかわからない。
分解やら掃除やら教わっとくべきだった。正直浮かれてた異世界舐めてた。
さっき仕留めた獲物を持って、剛志は町へ戻っていった。
「おいおい、坊主、血抜きぐらいは自分でやっておいた方がいいぞ?」
「おっと・・・そうなのかい?何にも知らなくてさ。」
いきなり源さんに忠告を受けてしまった。
----源さんの獲物の捌き方講座実施中ーーーー
「ありがとう源さん。それで、今さらで悪いんだけど」
「おう、なんだ坊主。言ってみな?」
----源さんのバレットM82講座実施中ーーーー
「おや、もう日暮れじゃないか・・・どうだい源さん、これから一杯。」
「おいおい、坊主。まだハンターギルドはしまってないはずだからそのデスベアー売ってきなよ。
話はそれからだ。だいたい昨日の酒代払ったの俺だろが・・・」
「倍にして返してやるって。」
「威勢の良いのは悪いことじゃねえがな、やることやってから言いなよ。」
「さすが源さん良いこと言うね。よっしゃ初売りといくか」
「なんじゃそりゃ?」
源さんにはちょっと待ってもらい。早速意気揚々とハンターギルドとやらへ向かった。
成程、獲物はハンターギルドで金にするのか・・・昨日聞いとけよという話はおいといて
颯爽とギルドへ向かう・・・
----ハンターギルド到着ーーーー
ハンターギルドは源さんの魔道戦車屋のすぐ横だった・・・考えてみれば、万事抜かりのない源さんが
商売に向いてない場所へ店をだす筈がない。ハンターギルドのすぐそばなんて魔道戦車屋開くには
最高の立地条件だ。源さんが逃す訳がない。
ちょっとびびりつつ、しかしきょどったら舐められるのではないかという恐れでドキドキしながら
ハンターギルドへ入った。
「114番でお待ちのお客様、3番の窓口までお越しください。」
・・・ここは銀行ですか?いや郵便局の方が近いかな?
おろおろしていたら、びしっとスーツを着たおっさんに、発券機の使い方を説明された。
122番だった。後八人と言う事か。
「115番でお待ちのお客様、1番の窓口までお越しください。」
結構流れが速いみたいだ。直ぐに自分の番が来るだろう。
自分の番が来る前に、せっかくだからおっさんにいろいろ聞いてみよう。
何か初心者だってばれてるっぽいし。わかるんだろうな多分雰囲気とかで。
去勢張ったって初心者であるのは事実だし。親切そうに見える(さすがプロ)
「すみません、私はハンターギルドの利用は初めてなのですが。登録とか何かしなくても大丈夫なのですか?」
「本日のどのようなご用件でこられましたか?ご用件によっては登録が必要となります。」
にこやかな笑みのおっさん。うーん完璧な営業スマイルだね。
「獲物を売りに来ました。」
「商品の売買でしたら登録は必要ございません。しかしながら、お客様は今後ハンターとしてやっていかれるおつもりかと
存じます。その場合各種特典がつきますのでハンター登録をおススメいたします。ハンターギルドご用達の店舗での割引等お得な特典
がございます。また、嘗てはそんざいしたハンター義務も最近ではめっきりなくなりましたので、ほぼ不利益なくご利用いただけるかと
存じ上げます。」
「ハンター義務ってなんですか?」
「はい、ハンターギルド斡旋の仕事に関する優先履行。ハンターギルドご用達店舗の優先利用。ギルド命令の強制履行など嘗ては
ございました・・・が、5年ほど前からギルド長が変わりまして、改革実行された結果。全て廃止されました。現在のハンターギルドは
組合員による互助会という古き良き体制へと戻ったのです。」
「・・・ギルド命令の強制履行ですか?怖い制度ですね。」
「ええ、ハンターギルドは元々は単なるハンターの寄合所帯だったのですが。だんだんと権力がましていった結果、独裁者が表れてしまい
まして・・・お恥ずかしい話ですが・・・それを現在の組合長が打破したのでございます。今は組合員による互助組織としての機能を
取り戻しております。」
「ふうん・・・ところで退会は自由なんだろうか?」
「はい、今のギルドは入退会全て自由でございます。5年前では考えられないことです。勝手な退会に対する罰則はそれは厳しいもので・・・
今はそのような事は全くございません。どうぞお気軽に入会なさってください。」
話を聞く限り悪い話じゃないな。もちろんこの人の話を全部信用するわけじゃないが、源さんがハンターギルドに獲物を売りに行けといった
事を考えると、今のギルドは酷いものじゃないんだろう。あの人が信用できない所へ獲物を売りに行けとは言うと思えない。
一晩一緒に酒を飲んだだけの中だけど・・・
「わかりました。じゃあハンターギルドへの登録をしてみます・・・獲物の売却と同時に可能ですか?それとも別箇に並ぶべきでしょうか?」
「ご安心ください。別箇に並ぶ必要はございません。獲物の売却と同時に登録可能です。」
「わかりました。ありがとうございます。早速登録してみます。」
ーーーー呑み所 きゃんち ----
え、場面飛びすぎ?何言ってんですか。ただの受付ですよ。異世界ものにありがちなイベントなんてないですよ。あはははは
(涙目)。冗談はおいといて、受付の人はサクサクっと対応。すぐに組合証が発行されギルドメンバーとなったわけです。
獲物の受付もあっというま。さすがプロ。2万ギアで売買決定。
まあ、考えてみれば当たり前。ナターシャさんが言っていた通り、この世界はハンター率ゲロ高。
注意しないと戦車に当たります。いや、マジで。この世界めっちゃ薄暗いし、2キロ先見えません。空は黄色く見えます。
空に舞い上がった粉塵が全部落ちるにはあと数千年かかると源さん言ってます。
ええ、今一緒に呑んでます。人の金で。
話を戻すと、ハンター多いから受付も半端なく忙しい。効率よく捌かないと仕事になりません。
客と個人的に話してる暇はねえええ、ということらしいです。
実際、美人の行員・・・じゃねえ、ハンターギルド受付職員はあまり職場で好まれないようです。
からむやついるから、仕事が遅れていくとか。
受付番号で順番に呼ばれる制度なので、美人の所に沢山人が来るってことはないので、純粋に能力重視に
なるようです。そうなると美人なのが災いすることがあるみたい。大変だな(他人事)
「おら、もっと飲め坊主。おれっちの酒が飲めねえってのかい?」
「おおっと、こぼれるこぼれる・・・横からちゅううーっ」
「品がねえ、品がねえよ坊主。コップに吸い付くとは・・・」
「何言ってんすか、源さんがこぼすからでしょ!・・・もったいない。ぺろぺろ」
「汚ねえ・・・舐めるかよそれ・・・汚ねえ」
「んだよ、酒くらい好きに飲ませろってんだい。」
「わははははっは・・・・」
----翌朝ーーーー
反省した。深く反省した。昨日の2万は酒代、弾代、燃料代ですべて消えた。
・・・M82やM25の整備の仕方教わるの忘れてた。
これじゃあ、借金返すのいつになることやら。
・・・いや、源さんなら酒のましときゃなんとかなるかな(腹黒)
それにだ、源さん以外からも借金できないことないだろう。漂流民は優遇されているんだし(超腹黒)
来たくて来た世界じゃないし、好きにさせていただくぜ。(開き直り)
ただ、20年かけて集めたゲーム、漫画、アニメ、フィギュア達・・・さらばだ(涙目)ぐすん。
お前達の事は決して忘れないよ。
「源さんいるーーーーっ。」
「うるっせいよ坊主。二日酔いに響くだろが!!!」
「・・・いや、源さんの方が普通に声でかいし。」
「で、今日は何の用だい?」
「いや、昨日、M82やトレーラの整備教わろうと思ってたけど忘れちゃったでしょ。
今日も狩りにいかないと金ないから、時間ない。でもちょっとづつ教えてほしいんだ。
毎日来るから。」
「お前もまめだねえ、毎日来るやつなんて滅多にいないぜ?魔道戦車はある程度なら自己回復できるからな。」
「それでもさ、知ってた方がいいだろ?それにM82は意思もってないだろ?」
「ふふふ・・・そりゃそうだ。ま、暇な時に来ればいろいろ教えてやるよ。」
「え・・・忙しい時なんてあったのか?」
「あるぜ、普通に。デカいクランは大抵、大がかりなミッション張って狩猟旅行をするんだよ。
ミッションてのは自分達で決めた目標だが、時々ハンターギルドから依頼される場合がある。
坊主も聞いたと思うが、ハンターギルドから時々ミッション参加の依頼が来ることがある。
昔と違って断ってもいいんだが、大抵の奴は断らねえ、報酬が旨いし実力的にも丁度いい依頼なんでな。
それこそ昔は人命軽視の無理難題で、しかも強制だったんだが。今の体制になってからそれは無くなったんだ。
お蔭で気持ち良くミッションをこなせるってみんな喜んでる。昔を知るおれっちも嬉しいぜ。
このままギルドは無くなっちまうんじゃないかと心配したんでな。」
「へえええ。源さんもセンチメンタルなことをいう・・・いやまて、この店はギルドの傍にあるのが売りだったな
・・・完全に個人利益重視じゃねえか!」
「へへへへへ、ばれたか。」
「ばれないでか?・・・でさ、このM82のここんところなんだけどさ、射撃のたびに胸に当たるんだよね。
なんか設定悪いんかな?」
「ああ、それはな・・・」
ーーーー 本日の源さんのM82整備講座開講中 ーーーー
よし、俺の銃整備スキルは1あがった。・・・かもしれない。
この世界は人間のスキルや能力は数値にならない。
昔の魔道全盛期にはそういう魔道があったらしいんだが、自分のステータスが他人にばれるのは
個人情報保護の観点からも、軍事的観点からもよくないとの事で、禁止された上に、対抗魔道が作られて
全く使えなくなったらしい。
魔道戦車にはスキルがあるし、人間に分かるわけだが。なんでだろう・・・今度源さんに聞いてみよう。
「パンツァーフォー!」
本日も狩りに出発だ。
注意しなければならないのはまず、狙撃地点につくまえに接敵しないことだ。
M25ことドラゴンワゴンはリトルウィリーよりはるかに早く、でかく、重い。
小回り聞かない。当然接近戦苦手。武装ない。言っちまえば只のトランスポーター(輸送機)
体当たりできれば質量と速度による運動エネルギーで敵を赤い霧にできるが、
当たらなければまずいことになる。速攻退却である。
ドラゴンワゴンは魔道戦車と違って自動運転しないから、剛志が自分で運転している。
運転しながら反撃なんて高度な技は今の剛志には無理。
ましてバレットM82はフル装備で13キロオーバーだし、両手で持ったうえでしっかり固定しないと
反動で死ねる。
逃げるっきゃねえのである。しかもまだ土地勘がないから、盲滅法逃げたら最後、遭難間違いなし。
何せ2キロ先が見えないスモッグの世界である。
因みに剛志はガスマスクつけてます。源さんに「お安くしとくよー」と売りつけられました。
源さんは、がんがん売りつける割には、無利子で借金させてくれるし、補助金がでるとはいえ
商売上手いのか下手なのか。
そうこうしている内に、昨日の狙撃地点に到着。
早速ドラゴンワゴンを停車。エンジンカット(清音化するため)
荷台のリトルウィリーへ乗り移る。二度目とはいえ結構きつい。慣れるまでの辛抱とはいえ
荷台に上がってさらにリトルウィリーの上に上ると息が上がる。
呼吸を整えて、M82を今朝の源さんの指摘に従って備え付ける。スコープを覗いて昨日しとめた
奴・・・デスベアーの出現ポイントを見張ると。
「おいおい、またいるじゃねえの?何これバカヅキしてるのか?今後の運を使い果たしたか?」
昨日のやり方を思い出そうとしたが・・・思い出せない。
結構テンパっていたみたいだな。剛志は苦笑した。
だったらやり直すまでよ。今朝受けた源さんの助言を思い出し、狙いをつけて
ズドン
ズドンというかズバンというか、映画の銃声とはだいぶ違う。これでも清音化はしていると源さんは言ってはいた。
ここいら辺にいる普通の魔獣相手だとオーバースペックなので減装弾を使用してもいるのだが。
昨日今日始めたばかりの素人に毛が生えた程度の者には反動とバックファイアもきつい。
当たり前だ。剛志はいままで拳銃もつかったことないのにいきなり対物用狙撃銃とかマゾ?と聞きたくなる。
「ち・・・外した。」
思いっきり逃げられた。
1キロ先とはいえ、当たらんね。昨日は本当にビギナーズラックという他ない。
せっかくなので、周りの風景を見ながら銃の調整をする。
風景見てるのは観光じゃないよ?どっちにどの程度外れたか確認して銃の微調整をする。
10発程撃った所で嫌な予感。殺気がする。まさかと思い、剛志はリトルウィリーの中に手を突っ込んで・・・
「うがおおおおおおーーーん」
表現するとこうなるが、実際には腹の底から響く重低音、腰ぬけるかと思ったが。
剛志は今回勘がさえていた。先程逃げたデスベアーの居場所が分からなかったのでもしや?
と思っていたのだ。デスベアーなんて名前が付くだけあって殺意が高いと聞いていた。
「ありがとう源さん」
剛志はそうつぶやいて、ライオットガンを腰だめに構えて安全装置を外し・・・全弾発射した。
ああそうさ、恐怖で引き金ひきまくった。
今朝、源さんからサブウェポンの必要性について熱く語られたため、ベネリM3とスラッグ弾を
購入してあった。もちろん借金、もちろん補助金付いて源さんはホクホク顔。
※ライオットガンとは暴徒鎮圧銃のことなので、実はなんでもいい。暴徒鎮圧につかえば
拳銃だってライオットガンである。しかし、暴徒を鎮圧するにはある程度の威力、軽量で取り回し
が良いこと、ある程度の効果範囲の3つが必要であるため、ショットガンかマシンガンが好まれる。
剛志の使ったベネリM3はよくライオットガンとして使われることが多いが、それは性能が良いため
であり、普通に軍隊が軍事用につかいます。
全弾撃ち尽くしても恐怖でかちゃかちゃやってたが、あわてて気づき、ベネリM3を後ろへ放って
今度は腰からM29(ダーティーハリーが使用して有名になった44マグナム)を抜いて両手で持って踏ん張ると
「あうあうほうぎうううううおううう」
何いっているかわかないが『死ねえこの野郎』と言おうとしている。
ズバン、ズバン、ズバン、ズバン、ズバン、ズバン、カチャカチャカチャ
あっというまに全弾撃ち尽くして空引きである。
この間数十秒。
やっと落ち着いて良く見てみると、デスベアーは動かなくなっていた。
一瞬ほっとしたが、源さんのアドバイスを思い出す。
「殺ったと思った時が一番あぶないんだぜ。本当に殺れたのかちゃんと確認するんだ。」
まず周りを見渡し、ベネリM3を拾う。
M29もベネリM3も弾を込めなおす。この間デスベアーはピクリともせず。多分死んでる。
でも、アドバイス通りM29を腰に差し直し、ベネリM3を構えてゆっくりとデスベアーに近づくと
・・・すばやく蹴っ飛ばし、直ぐにさっと離れた。さらに頭を狙って一発ぶっぱなす。
・・・動かない。ほっと一安心だが、ここでまた源さんのアドバイスを思い出す。
「殺った後は、周りに注意するんだ。戦闘音を聞きつけて他の魔物達が近づいている可能性がある。
油断しちゃいけねえ。」
・・・しまった。油断した。剛志は慌てて回りを警戒する。
さらに咽頭マイクで魔道戦車に指示。『周囲警戒せよ』・・・もっと早くいっとくべきだった。
折角の魔道戦車。自分の手足として使いこなせなければハンターになった意味がない。反省である。
『周囲反応なし』・・・無機質な声が返ってきた。少なくともリトルウィリーには周りに敵がいるように
見えないらしい。性能的にあんまり信用できないが、剛志がやってもそれ以下の偵察能力しかない。
やれる事に大して差は無いのだ。狙撃地点は一応獲物出現ポイントから外れているわけだし、信頼しても
いいだろう。剛志はどさっと地面に腰をおろし、一言つぶやいた
「タバコ吸いたい・・・無理だけど」
剛志は一度タバコも吸ってみた事があるが、むせまくって死ぬかと思った。二度と吸うかあんなもん
そう思っていたが。つい吸いたくなった。ストレスが凄い。早よ帰って酒飲みたい。
やばい、アル中になる。気を付けよう。何か他にいい気晴らしでも考えるか。
そんな事考えつつ、剛志は立ち上がると、ドラゴンワゴンについてるウィンチを使って獲物を引き上げ、
捌き始めた。習ったばかりなので上手くはないし、時間もかかったがなんとかやれた。
血抜きした獲物を荷台の端に乗せると。次の狙撃地点へ向かった。
狙撃地点で血抜きはやめた方がいいな。臭すぎる。この世界の生き物は視界が効かない分、音と匂いに敏感である。
ここは当分使えないな。また失敗した。かなりへこむ剛志。
だが、この教訓を忘れずハンターとして成功してやる。と、思い直してドラゴンワゴンを運転する。
この後なんとかもう一匹しとめた。
リトルウィリーはビッグウィリーへと進化した。
剛志はなんか嬉しくて、ちょっと泣いた。
ビッグウィリー
ついに菱形戦車になったー。サスペンション?なにそれ旨いの?履帯の形状みろ、そんなん無理だから。
相変わらずの鈍足、乗り心地最悪。だがこいつはコンペンションに合格し、ついに試作戦車となった。
別名に『センチビート』(ムカデのこと)『マザー』(今後の戦車の母体となったため)等多数の名称あり
ついに武装もついたー。海軍用の6ポンド砲
※ 英国は砲をポンドで表したがる。これは砲弾の重さからきており、砲自体の重さとは異なる。
砲の大きさも分かりにくい。マジ困る。同じポンド数の砲だからって性能違ったり、形も違ったりする。
さらに言うと、その弾の重さも違う重さの弾が打てたりする。後から違う砲弾が新規開発されたんだろうな、
と予想はできるものの。なんじゃそりゃといいたくなる。
因みにビッグウィリーは57mm40口径砲です。