プロローグ 自分勝手冒険者参上! その7
「なんで知らんのぉ~うちはすごい発明家なんやでぇ~」
「知らんもんは知らん!」
泣き崩れ顔を手で拭う鞘歌をよそにバッサリと言い切る。
「ううぅぅぅうう。誰にも発明でけへんかった魔学コンパスをうちが作ってここまで来たのに――」
「魔学コンパスだとっ!」
「うわぁへぇ!?」
崩れている鞘歌の前にシュテルはズイッと屈み、顔を近づける。
鞘歌は驚きとまどいながらたじろぐ。
「魔学コンパスといったな、お前。これと同じものを作ったって言うのか」
「あ、あれ、それ、ま、魔学コンパス!? な、なんで――うちの家系にしか伝わってないはずのそれをもってるんや!? 作り方とかも他には漏れてへんはずなんやで!?」
「「!!!!!」」
シュテルとナズナは驚愕し、顔を見合わせる。そして頷く。
「なるほどな……」
「何がなるほどなんかわからんけど、なるほどなんやな――あ、あんたジャパグとのハーフやったよな。もしかしてあんたは……」
「はい……そうです」
「となると、うちとあんたは親戚かなんか何かな? それやと理由はつくしな。そうとしか考えられへん」
うんうんと頷き、納得すると鞘歌は再び左腕を上げくるりと回って左腕を前に突き出す。
「つまりあんたらは創像剣を探しにここに来たんやな!」
「あ、ああ……」
「そうですが……」
「うっしゃうっしゃ! 今回は正解やで!」
「前のは正解も何もなかったよね……」
「……知らないは不正解の意味なんだよ」
呆気にとられるシュテルとナズナ。
言ったことがズバリ的中して喜び飛び跳ねる鞘歌。
そしてそれにツッこむヴェルクとツォイク。
「せやったら早速やでさっき調べた時に見つけた……ここやで!」
「なんだこの穴――魔学コンパスがぴったりはまりそうだな」
「しかも二つあるやろ? ほれ、それ貸してみっ」
パッとシュテルの手から魔学コンパスを奪い壁の穴の中にはめる。
シュテルはその事実に気が付き驚きの声を上げる。
「てってめぇぇえぇぇ! 一つしかない魔学コンパスを!!」
「んー? 何言うてんの。必要事項やないの」
「間違ってたらどうすんだよ!」
「そんときはそん――お?」
突如壁が動き出し扉が左右に動き始める。
徐々に開いていく。すると目の前に階段が現れる。
「ドヤ!」
「結果論だろうが……」
「ま、ええやん。ええやん。行こう行こう!」
「なんか知らんまにおれ達の一員みたいになってるけどまだそういうのは――」
「何言うてんの! ここまでくれば一心同体。死なばもろともやで!」
「あっちょっ階段で手を引っ張るんじゃねぇ! 危ねぇだろうがっ!」
シュテルは鞘歌に手をひっぱられ階段を下りていく。
ナズナ達もそれについて行くように階段を下りて行った。