プロローグ 自分勝手冒険者参上! その5
「――んっんっー!」
シュテルはベットから起き上がり背筋を伸ばす。
そしてすぐ横にいたナズナが濡れたタオルをシュテルに渡す。
「おう」
そしてそれで顔を拭くとナズナにすぐさま渡し返す。
ナズナはお辞儀をして離れる。そしてすぐさまそのタオルで顔を拭く。
「……ヴェルクにも」
「ツォイクにも……」
「はい、どうぞ」
よちよちと目をこすりながら歩いてきた二人にタオルを求められたナズナは用意していた二つのタオルを渡す。
二人はそれを受け取り顔を拭く。そして拭き終わると首をかしげた。
「あれ……」
「……気にしない」
「うん……」
何かを察したヴェルクはツォイクにこれ以上何も考えないように言いつけた。
「さて、飯食って目的地に向かうぞ!」
「はい、シュテル様」
「……おー」
「おー……」
一同は身支度を整えて食堂へと向かった。
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あれから食事をすませた一行は魔学コンパスが差す方向へと歩いて行った。
初めは大きな道を歩いていたが次第に木々が生い茂ったところへと入って行く。
舗装もなにもされていないため、歩くたびに木々が体に当たる。
シュテルはそれをなんのそのとせずに進んでいく。
ナズナは双子二人を肩に抱えながらシュテルの後ろについて歩いて行く。
双子は落ちないようにナズナをつかんでいる。
「――へっ! いかにもって感じじゃねぇか」
「はい。シュテル様」
「カッカッカ! いよいよだ。いよいよ来るぜ」
ニヒヒと下品な笑顔をしながらシュテルは進んでいく。
ナズナは少し喜んだような表情をしてすぐに無表情に戻る。
ヴェルクとツォイクはナズナをじっと見るが表情にもう変化はなかった。
――そうして進んでいると突然道が現れた。
「お――なるほどな。いよいよ来たぜ……」
「さっきと同じこと言ってる……」
「……さっきと少し変わったんだよ」
シュテルの顔がドキドキワクワクしている子供のような笑顔になる。
ナズナは二人を肩から降ろし、シュテルに近づく。
「いよいよですね」
魔学コンパスを確認する。
それはこの道を歩いて行くように方角を示している。
「ああ、さっさと行くぜ」
シュテルとナズナは歩幅を合わせながらゆっくりと道を歩いて行く。
ヴェルクとツォイクも二人の後ろをついて行くように歩いて行く。