プロローグ 自分勝手冒険者参上! その16
「はぁ……」
「シュテル様……」
あの後、一行は宿屋に戻ってきていた。ガックリとうなだれているシュテルをナズナは心配そうに見ている。
鞘歌はイマジナフングをじろじろと見ていた。
「なんかあの後また喋らんようになってもうたね」
「これじゃ何も分かんないね……」
「……適当に旅すればいいよ。きっと楽しい」
「それじゃ駄目なんだよなぁ~」
ぐったりとしながら立ち上がったシュテルは話している三人のほうを向きながら喋る。
「シュテル君はうちと違って別にいろいろ知りたいから創像剣を集めてるわけやなさそうやね。力が欲しいんか?」
「……そんなことはどうでもいいだろ」
「ま、出会ってそんなたってないしすべてを話すには早すぎるわなぁ~」
「て言うかいつの間にかおれ達の仲間入りしてんのな」
「なんか知らんけど離れる気にはならへんしな。創像剣。イマジナフングのこともあるしな」
そう言って壁に立て掛けるように置かれているイマジナフングをつつく。
「そうか……」
「ほう。追い出そうとはせえへんのやな」
「そんな気にはならねぇんだよ」
「さよか。ならええわ」
そう言うと鞘歌はつつくのをやめる。そしてベットの上に向かいねっころがる。
「ま、ここから先はまた明日考えればええやん」
「明日って。明日になったからって何かあるってのか?」
「眠いから寝んねん。難しいことは明日考えよー」
そう言ってベットの中に顔が隠れるようにもぐりこむ。
ベットがもぞもぞすると中から白衣が放り投げられる。
「白衣――おいおいお前まさか――」
何かに気がついたシュテルは白衣が飛んできたベットのほうを向く。
するとそこには既に黒いジーパンが脱ぎ捨てられていた。
「……だらしない」
「そーだね……」
「はぁ……ナズナ」
「はい。整頓しておきます」
放り投げられた衣服をナズナは拾い、丁寧に折りたたんでいく。
「もういいわ。おれも寝る」
「寝よう……」
「……うん」
そう言うとシュテルは服を脱ぎ、机に置かれていたウエストポーチから寝巻を取り出し着替える。
ヴェルクとツォイクは二人で一緒のベットにもぐりこむ。
「人数も増えたし、お前もちゃんと休むようにしろよ」
そう言ってベットの中へと入っていった。
「……わかりました、シュテル様」
ナズナは少し悲しそうに返答した。