プロローグ 自分勝手冒険者参上! その1
森のなかに大きく広がる通り道。空は雲ひとつない快晴であり、木々は風により葉を散らしている。
そんな、あまり人が通ることのないこの場所のに今日は数人の人影がいた。
「――てなわけで。持ってる荷物全部置いていってもらおうかなぁ?」
「へっへっへ。二人の旅人に七人は大人げなかったかなぁ?」
キヒヒと薄気味悪い笑い声をあげながら二人の男女を囲う。バンダナを被ったさまざまな体形の男が短剣を握っている。
「はぁ……」
青年はため息をつき、額に手を当てて顔を振る。青年はカーキ色のコートの背中に背負っている剣に手をかける。
「あん? 何だ手めぇ。やろうってのかぁ?」
囲っていた男たちのうちの一人が青年に向かって駆け寄ってくる。
「お約束キャラ過ぎんだよっ!」
背中から剣を抜く。束ねていた金髪の髪が揺れる。
そして駆けてきた男と青年が交差する。
すると青年が剣を下ろすと男はその場に倒れる。
「わかりきってるだろ? お前らお約束過ぎるんだよ!」
「一人倒したぐらいで調子に乗るんじゃ――」
バンッ!
「あ、あがっ?」
パタン!
「な、何がっ!?」
バンッ! バンッ!
「お、お前らっ――」
ザシュ! ザシュ!
「あ、ああ……」
バタン、バタン、バタン、バタン。
「さて……後はお前だけだぞ?」
「神妙にお縄についてはどうです? 特別にあなただけ命を助けてあげてもいいのですよ?」
男の目の前に見えるのは剣を担ぐ男と銃口をこちらに向けている女の二人と仲間だったものの姿である。いくつも倒れ赤い血を流すものを見て男は体を震わせる。
軽い仕事だと思い、軽い気持ちでやったことによってこんなことになるとは思いもよらなかっただろう。
「ゆ、許し……許してくれぇ~」
男は命乞いをするしかなかった。もはや七対二ではない。一対二なのである。
一対二と言えば数的には勝てない可能性がないわけではない。
だが男はそんなことを思いつけない。目の前の惨劇があるからだ。
「ふふ、いいでしょう。許してあげましょう。シュテル様、お願いします」
「ああ、許しの介錯だ!」
「えっ?」
ザシュ!
男は倒れた。もう動かない。男からは赤い血が流れるだけである。
動かなくなった男達を青年、シュテルは見下ろす。
「ま、おれらの邪魔をした奴が助かると思うのがおかしいんだ」
「その通りです。シュテル様に命を奪ってもらえたことを誇りに地獄へ行けばいいのです」
「その通りだ。さて、ナズナ。やつらの荷物をあされ」
「わかりました」
シュテルに命令されたナズナは銃を腰のホルスターになおし、死んだ男たちの懐をあさり始める。
シュテルはそれを見ながら近くにあった岩に座る。
あくびをあげながらボーっとしていた。
「あん?」
ふと、目線の先に何かもぞもぞする袋を見つけた。気になったシュテルはその袋へ向かって歩く。
そしてその袋に手をかける。
「何が入ってんだ?」
そして何となく袋のひもをほどく。
「!?」
気がつくと二人の少女に喉元に短剣を突きつけられていた。