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それが家門なら  作者: 懐拳
9/23

9 4度目は


負けず嫌いの

僕を笑って

君は病気と

言ったっけ


君の最後の

1投を

思い出すだに

悔しくて

ビンタ相手に

徹夜で練習


成果を見せると

翌日懲りずに

君連れて


懲りずに4千

またスッた僕に

君が言ったろ


手ぶらの

射的の帰り道

あの湖の

まん前で


病気だと

治療が要ると


それなら君の

その利かん気も

僕よりはるかに

病気だろ?


君の方こそ

何度言ったら

その強情な

薄着をやめる?


北風が

吹き荒れようが

吐く息が

白かろうが


真冬の戸外で

ジャケット1つで

身を縮こめて

強がってる


寒くないかと

声かけても

見るに見かねて

マフラー貸しても


冬にコートを

着るのは嫌い

暖かい格好

するのは嫌いの

一点張り


尋常じゃない

湖畔の冷気に


「お節介」と

貸したマフラー

突き返す


自分1人が

ぬくぬくするのは

嫌いだと


愛する人が

寒いところに

住んでるからと


君のそれこそ

病気と言わずに

何と言う?


恋の中毒

とどのつまりは

病気だろ?


寒いところに

住んでるという

その人が

百歩譲って

生きてるんなら

いざ知らず


逝ってしまった

人への想いを

それほどまでに

引きずって

それも10年

しがみついてて


中毒じゃなかったら

一体なんだ?


ただでさえ

か細い体で

寒さに強くも

ないくせに


-寒いところに

あの人がいる-の

一念で

唇かんで

薄着でいるのを


毎日いやでも

横目で見ながら

心配せずに

いられるか?


構うなと

睨むからって

はいそうですかと

放っておけるか?


お節介だと

振りきったって

女の力で

僕には勝てない


有無を言わさず

腕に包んで

引き寄せた

力ずくでも

抱きしめた


コートは着ない

マフラーも

お断りなら

こうでもしなきゃ

今に凍える


判らないんだろ?

寒さも何も

感じないんだろ?

麻痺してて


でも

麻痺してるのが

体じゃなくて

心なら


抱きしめて

温めたって

たかが知れてる


一時しのぎの

コートの代わりじゃ

屁にもならない


君にほんとに

必要なのは

解毒剤


中毒を

芯から治す

解毒剤


「僕がその

解毒剤に

なってやるから

利用してみろ」


腕に力を

込めたまま

顔も見ないで

そう言った


顔なんか

見なかったけど


君の体が

離れたがった

次の瞬間

右の手首を

わしづかんでた


じゃなければ僕は

4度目の

ビンタを食らう


4度目はもう

ご免こうむる


悪いけど

君がこの次

何するかぐらい

顔なんか

見なくたって

想像がつく


当たってたろ?


出逢った直後の

1度目だけは

別として

2度3度目は

食らう瞬間

判ってたって


でもわざと

引っ叩かれて

やったんだって


理由は今でも

判らないけど

この女なら

引っ叩かれても

構うもんかと

思ってたって


僕が言ったら

君は疑う?


それとも


しくじった

4度目に免じて

信じてくれる?




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