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それが家門なら  作者: 懐拳
4/23

4 去りがたくなる苑


偽善者は

狩りの「か」の字も

おくびに出さず

一蓮托生

誓った顔で


君とも

君の家族とも

慇懃無礼に

交わった


そして感じた

家風の気品

名門宗家たる所以


日々のしきたり

季節の設え

衣食住から

世間に対する

振る舞いまで


君が生まれて

育った家は


派手ではないが

素朴でゆかしい

僕など

見聞きしたこともない

諸事穏やかな

苑だった


いつ何どきも

如何なる客も

それが

敵でも味方でも

誠意で迎え

手厚くもてなす


来る者を

決して拒まず

拒む非礼を

戒める


あるがままを

隠さず見せて

繕う虚栄を

戒める


乞われれば

応じて与え

惜しむ吝嗇を

戒める


来た者が皆

去りがたくなる

苑だった


薄汚い

獣ごときが

足踏み入れる

ことじたい

そもそもが

場違いな苑


それでも

うっかり

足踏み入れて

ささくれた

心が和らぐ

苑だった


居住まいを

正したくなる

苑だった



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