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それが家門なら  作者: 懐拳
22/23

22 家門なるもの

(1)


「起き抜けの

素顔のままで

祖母は決して

祖父の前には

出なかった


愛してるなんて

口にできない

時代に生きた

祖母にとっては

その身支度が

せめてもの

-愛しています-

だったはず


だから私も

見習いたい


早起きして

薄化粧して

毎日あなたの

前に立つ


昔の人を

見習って

真面目な気持ちで

毎朝あなたの

前に立つ」


訥々とした

こんな言葉を

面と向かって

聞くことが

僕の人生に

あろうだなんて


それほどの価値が

僕にあるかと

総毛立つほど

身がすくみ


その価値のある

男になろうと

聞きながら

心に決めた


身に余る

決意の吐露に

敬意と脱帽


そして


口の端に

こんな言葉が

さらりと上る

女性に君を

育てた家族に


心の底から

敬意と脱帽


時代錯誤と

世間が笑う

つつましやかで

素朴な家風を


日々淡々と

守って生きる

家族に脱帽



(2)


「この家に

生まれ育った

孫娘だが

死ぬときは

婚家の人間


これまで

我が家で

してきたように

今日からは

婚家の人を

喜ばせるのが

おまえの務め」


老家長が

口にしたのは

どこまでも

厳しくゆかしい

(あるじ)のはなむけ


君を見つめる

眼差しに

宿した

祖父の淋しさを

決して口には

しなかった


「君の家族の

一員として

これから命を

全うする子だ


この家に

二度とふたたび

戻してくれるな」


その昔

血も涙もない

商人ですと

啖呵を切った

不届き者が


啖呵を切った

その相手から

婿として君を

託される

不思議と

感謝と

面映ゆさ


戒めを

胃の腑の底で

噛みしめながら


-婿は盗っ人-


古来の至言が

身に沁みた


この家と

この家族にして

君ありと

つくづく思う


そしてまた

君だからこその

この家族だと

つくづく思う


縁を結んで

集った人を

家族と呼ぶと


縁に引かれて

集った家族が

日々憩う場を

家と呼ぶと


(えにし)のあやに

笑って泣いて

その家で

その家族らが

歳月かけて

紡いでいくもの


それが

家門だと


崇めるものでも

けなすものでも

決してないと


君の家と

君の家族が

言わず語らず

そう教えてる


僕も家門を

興したい

そんな家門を

築きたい


ダナ

君といっしょに






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