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それが家門なら  作者: 懐拳
10/23

10 解毒剤


「ゲームをしよう

毒には毒こそ

解毒の王道


僕がこれから

ありとあらゆる

策を弄して

君のことを

挑発する

籠絡してみる


君は

何にも

しなくていい


挑発なんかに

惑わされずに

今までどおり

寒いところに

住んでる人への

尽きぬ想いを

守るだけ


簡単だろ?


1人の男を

想いつづけて

冬にコートも

着ないと強がる

涙ぐましい

その心意気が


死ぬまで

ほんとに

ビクともしない

気高く一途な

愛なんだか


はたまた

茶化して

ちょっかい出せば

容易にぐらつく

茶番なんだか


聞けば聞くほど

気になって

確かめたくて

うずうずする


だからゲームを

してみたい


君にとっても

いいチャンスだろ?


偉そうに

大口叩く

僕を負かして

みたくない?


ゲームに勝った

暁には

骨折り損で

悔しがる

惨めな僕を

笑えばいい


それより何より

君のその

一途な愛を

証明できる


一石二鳥で

お釣りが来る」


君をあおった

鼻を明かすと

焚きつけた


野卑な冒涜

卑劣な愚弄と

憎んでくれれば

儲け物


自尊心に

火でもつくなら

思うつぼ


解毒剤にも

意地がある


相手は

生ける屍なのに


頑なで

始末に負えない

見ざる

言わざる

聞かざるなのに


こうでも

言わなきゃ

どんな手がある?


これとて

まだまだ

ほんの序の口


解毒剤の効能は

これからとくと

ご覧じろ


帰りのハンドル

握りもせず

アクセルを踏む

気配もない

僕の気ままな

長広舌


何を思って

君は聞いてた?


「負かしたいとも

証明したいとも

思わない」


いつもの威勢で

そう言った


「若い2人の

為になればと

引き受けたけど

あなたが相手で

芝居がしにくい」


とも言った

心なしか

威勢がなかった


「何で芝居が

しにくいのかな?」


どうしても

訊いてみたくて

問いつめたけど


日が暮れるまで

待ったって

返事は

なさそうだったから

答えは僕が

引きとった


「3度も

引っ叩いたから」


賭けたっていい


生まれてこのかた

他人に手なんか

上げようと

思ったことも

ないくせに


気がついたら

僕には勝手に

手が出てた


それも

1度や2度じゃない

3度までも


元々が

他人の痛みを

正視できない

君のこと


3度も理性を

失って

そのたんび毎に

暴力沙汰じゃ


罪の意識が

頭もたげて

居心地ぐらい

悪くなる


芝居だって

しにくくなるに

決まってる


あの日

あのあと

車の中で


逆襲の

名手の君が

道中ずっと

無言だった


自分でも

判ってただろ?

判ってなくても

図星だったろ?


今まで以上に

緊張すること


隙なんか

見せないこと


油断してると

僕に足元

すくわれる


ゲームはもう

始まってるよ




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