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第5話 宝物庫での会話


「なぜあの塔に一人で居るんだ?」


「私が病気だからです」


「病名は?」


「貴方に答える必要はありません」


「・・・そうか」


「貴方の妻はなぜ死んだのですか?」


「お前に言う必要は無い」


「そうですか」


・・・長い沈黙の後、エレベーターが止まる。


どこに着いたんだ?位置関係から予測するにかなり城から離れた・・・西の森の中じゃないのか?


扉が開くと、威圧的な鉄格子があった。シが人差し指を鍵穴に入れると、ひとりでに開いた。


非常に金の掛かった金庫システムになっているようだ。


中に入ると、想像以上の大量の貴金属、絵画、美術品が博物館のように並べられていた。


おかしい。俺の住む国はそんなに裕福じゃない。はずだ。城もボロボロだし、特にこれと言った資源や産業があるわけじゃない。


ニシン漁で栄えた地方で、小規模なウイスキー製造工場、あとは風力発電ぐらいで・・・


しかし、微妙に心当たりがある。道路や上下水道、街の景観はやたらキレイだ。この国に移住してきて長いが、確かにどこも整備されている。


「なんでこんなに金があるんだ?」


率直に姫様に疑問を投げかける。


宝石がついた豪勢な剣、金で出来た小さな彫刻、白磁に青で装飾された壺、なぜこんなものがここにある。


「ああ、知らないのですね。それは当たり前なのですが、国民には隠されているのです」


姫様は目当ての宝石を探しながら、片手間に答える。


「偽物を作っているのですよ。この国は。紙幣、絵画、彫刻、宝石・・・」


「だからこの国、妙に税金が安いのか」


「安い分には文句は言われませんからね」


「国が詐欺をやって許されるのか?」


「なら告発すればいいでしょう。死にゆく私にはもう関係のないことです」


「・・・」


確かにそうだ。俺には関係のないことだ。・・・これは俺の問題ではない。俺の人生の問題は別にある。



「ありました」


姫様が見つけたのは、ガラスのケースに入れられた、オパールのブローチだった。昆虫の姿を象徴とした、小さなブローチ。


「なぜそれなんだ。もっと大きい宝石があるだろう」


ここにはバカでかいダイヤもサファイアもある。


「それは・・・」


シは言葉に詰まる。何かを考えているようだ。


「理由は・・・ありませんわ。私が、ただほしいのです。これを。」


「・・・・・・・・・・・・そうか、なら・・・そうだな」


シは17歳ぐらいの年齢のはずだ。見た目から推測するなら。

その恥ずかしそうに顔を伏せ、笑顔で答える姿に、俺は動揺を抑えるので精一杯だった。


「では開けてください」


「鍵はお前が持ってるんじゃないのか」


「ありませんわ」


「貸してみろ」


ブローチは手のひらサイズの箱状のガラスケースに入っていた。

持ってきた銃の金属部分で殴れば割れるだろうと思って軽く殴ってみる。


「・・・割れねぇ」


強化ガラスなのか、とにかく硬い。


「割れませんか?」


「ダイヤがあったろ」


ここにある美術品は全部がガラスケースに入ってるわけじゃない。小さなジュエリーボックスに入ってるものもある。


そこからダイヤを取り出し、力を入れてガラスをひっかく。


傷が入ったガラスは強度が弱くなる。そこを叩くと簡単に割れた。


「泥棒の才能があるのですね」


「お前のためにやってんだ」


「ありがとうございます」


取り出したブローチを胸に着け、機嫌のいい顔になる姫様。


反対に、俺の気分は沈んでいく。鉛のように。苦しい。


「それでは、理由を話しましょう」


「理由?」


「私が一人で居た理由です」


ああ、そうだったな。


シは、高そうな椅子に腰掛け、話しだした。


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