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8、夜の告白

夜。

森は静かだった。

昼間の騒がしさが嘘みたいに、音が消える。

風の音と、かすかな虫の声だけ。

ルナは窓の外をぼんやり眺めていた。


特に理由はない。

ただ、なんとなく。


「ルナさん」


「なに」


振り向かないまま返す。

後ろから、アルヴィンの声がする。


少し、間があって、

ぽつり、と。


「ここ、好きです」


「森なんて不便なだけでしょ」


生活環境としての評価は魔法で上がってはいるけど、外に出れば不便なことだらけだ。

だが、


「違います」


静かに否定された。

ルナは、ほんの少しだけ眉をひそめる。


「なにが」


アルヴィンは少しだけ言葉を探すようにして、

それから、ゆっくりと言った。


「ルナさんがいるからです」


「……は?」


ドクン、と。

一瞬だけ、心臓が大きく跳ねた。


「なにそれ」


すぐに言葉で押し返す。


「意味わかんない」


いつもの調子。

いつもの距離。

その、はずなのに。


「わかりますよ、ちゃんと」


アルヴィンは、当たり前みたいにそう言った。

にこにこと。

いつも通りの顔で。

だから余計に、

質が悪い。


「……」


ルナは無言になる。

さっきまで普通だったはずの空気が、

少しだけ、変わっている気がした。


落ち着かない。

妙に、居心地が悪い。


「……寝る」


ルナは逃げた。


「はい、おやすみなさい」


素直な返事。

それもまた、腹が立つ。


「……」


ルナはそのままベッドに潜り込む。

目を閉じる。


が、


「(……なんなのあれ)」


全然寝れない。


「(意味わかんないんだけど)」


思い出す。

さっきの言葉。

声。

顔。


「(なんであんなこと普通に言えるの……)」


理解不能、処理出来ない。


「……」


ごろり、と寝返りを打つ。

落ち着かない。

とにかく落ち着かない。


「(……でも)」


ほんの少しだけ

嫌じゃなかった自分に気づいてしまって、


「……最悪」


小さく呟いた。

その夜。

ルナはなかなか眠れなかった。

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