4、不本意な同居人
仕方なく。
本当に仕方なく。
ルナは少年の治療を始めた。
「……なんでこうなるの」
ぶつぶつ文句を言いながらも、手は動かす。
回復魔法。応急処置。最低限の安定化。
「はい終わり」
雑に締める。最低限でいいだろう。
――数時間後。
「……ん」
少年のまぶたがゆっくりと開いた。
「……ここは」
第一声、テンプレ。
ルナは間髪入れずに返す。
「起きたなら帰って」
早い。
余韻ゼロ。
少年――アルヴィンは、ぼんやりとしたまま周囲を見回し、
そしてルナを見て、ぽつりと呟いた。
「……ここは、天国ですか?」
「違う、だから出てけ」
即否定。
夢も希望も粉砕。
アルヴィン、きょとんとしている。
完全に処理が追いついていない顔である。
数秒の沈黙のあと、
「……あなたが助けてくれたんですよね?」
なぜか好感度が上がった気がする。
「違う、事故」
全力で否定。
だが伝わらない。
むしろアルヴィンは、少しだけ安心したように微笑んだ。
「ありがとうございます」
「だから違うって」
会話が成立しない。
ルナは顔をしかめる。
これは関わっちゃ、ダメなタイプだ。
確信した。
「とにかく起きたなら帰って。今すぐ」
強めに言う。
関わる前に切る。それが最善だ。
アルヴィンはこくりと頷き、ゆっくりと体を起こそうとして――
ドサッ
「……」
無言で倒れた。
見事なまでに綺麗な再ダウン。
「はぁ……」
ルナ、顔を覆い、天を仰ぐ。
追い出し失敗だ。
「なんで起きたのに倒れるの……」
当然である。最低限の治療しかしてないのだ。
「これじゃ今日中に追い出せないじゃん……」
その一言で、すべてが決まった。
――また数時間後。
「……ほら、水」
「すみません……」
「喋らなくていいから寝て」
「はい……」
看病、開始。
完全に巻き込まれた。
「……最悪」
口ではそう言いながらも、毛布をかけ直す手つきだけは妙に丁寧だった。
なお本人に自覚はない。




