10、恋の芽吹
戦いが終わり、ミレイアは自分の家へ帰った。
「掃除めんどい」
ルナは黒装束が荒らした森をゆっくりと直していく。
アルヴィンは、そんな作業をしているルナを静かに見ていた。
戦いのときとは違う、少し困った表情で。
「……ルナさん」
「なに」
振り返らない。
いつも通りの、ぶっきらぼうな返事。
少しだけ間があって、
アルヴィンは、ゆっくりと口を開いた。
「どうして……助けてくれたんですか」
「家が壊れるから」
迷わずそう言った。
「それだけですか?」
「それだけ」
会話、終了。
……のはずだった。
「……」
少しだけ、沈黙が落ちる。
風が吹く。
葉が揺れる。
その中で、
ルナは、ほんのわずかに視線を逸らした。
「……それ以外に理由いる?」
ぽつり、と。
投げるような言い方。
突き放すようで、でも完全には切らないそんな声。
アルヴィンは、その言葉を聞いて――
少しだけ、笑った。
嬉しそうに。
「はい」
素直に頷く。
「僕は欲しいです」
「………………めんどい」
小さく呟く。
だが、その言葉にいつものキレはない。
アルヴィンは、そんな様子を見て、
また少しだけ笑った。
「じゃあ、これからの生活で探します」
「なにを」
「理由です」
「やめて」
そんな会話は頭からしばらく消えずに残り続けた。
今の関係も曖昧なまま。
「……片付けるの、手伝って」
ルナがぼそっと言う。
「はい」
アルヴィンはすぐに頷いた。
その返事に、
ルナはほんの一瞬だけ、視線を向けて――
すぐに逸らした。
何も言わない。
でも、ルナの口元には小さく笑みが浮かんでいたのだった。




