第四話
黒板を叩くチョークの音が響いていた。
水無月には授業の声は届いていなかった。
牛の声。
「 お前一人では無理だぜ。
他の勇者を探すんだぜ」
(必要ないわ...中谷君の...破壊神の件は私が何とかする)
「おいおい、無理すんなだぜ」
牛の心配をよそに授業は淡々と進んでいった。
放課後の校門前。
夕暮れの中、中谷省吾は足取り軽く歩いていた。
(今日は返事もらえなかったけど...明日こそは!)
心の中でガッツポーズをした。
省吾の前向きさは無尽蔵だった。
ただ、省吾の通り過ぎた後は、自販機のガラスに亀裂が入っていた。
そこから少し離れた場所。
水無月実花は、物陰からその背中を見つめていた。
(やっぱり...被害が…
危険人物...いや危険破壊神))
このまま、放置してはいけない。
その思いが確信へと変わった、そのとき。
「中谷君」
前方から、凛とした声が響いた。
黒髪が揺れていた。
道を塞ぐかのように仁王立ちで立つ、一人の少女。
「はじめまして、
中谷省吾君、あなたを待っていたわ」
落ち着いていて冷たい声。
「なっなにか...?」
少女は省吾へ近づいていく。
「中谷...いえ、破壊神」
水無月の鼓動が一気に上がる。
「知ってる...この人...まさか?!」
「試させてもらうわ」
少女は何か巨大なものを振り下ろした。
しかし省吾には当たらない。
にやりと怪しげに笑う少女。
(今しかない。協力者がいる今、破壊神を...)
水無月は揺らぐ心を振り払った。
「協力するわ。
今ここで破壊神を倒すわ!」
少女は水無月を見ない。
「何を言ってるの、
ーー破壊神は...私のもの」
そう言って省吾を強く抱きしめた。
「えっ!?えっ!?」
省吾の理解が追いつかない。
青峰はそのまま省吾にキスをした。
「ーーっ!」
時間が止まった。
止まった時間を動かしたのは水無月。
「なにやってるのよ!!
なんなのよ!告白しておいて、他の女とキスして!」
「ちっ違っ...」
水無月の強烈な平手打ちが省吾の頬を張る。
吹き飛ぶ省吾。
(なんなのよ!こんなに悩んで!中谷君の事考えて、もう、あんなの破壊神よ!」
水無月の心が黒く染まっていく。
(絶対に許さない)
水無月は恋を失い勇者となった。




