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破壊神と恋  作者: 南蛇井


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第一話

中谷省吾、十四歳。

今日はいつもより30分早く家を出た。

理由は単純明快、憧れの女子、水無月実花に告白するからだ。

告白するという決意だけで、心は高揚していた。

(言うんだ今日こそ言うんだ)

いつもの見慣れた景色が省吾の強い気持ちの中に溶けていく。

省吾の視界にあるのは「告白をする」それだけだった。


「水無月さん好きです」


脳内で告白シーンを何度となく繰り返しながら歩く。

いや、もはや突進していた。


信号?


そんなものはもはや告白の前では飾りであった。

しかし現実の信号は赤だった。


キキーッ!!

耳をつんざくブレーキ音。


ドン!

(あっ!?)

痛みはなかった。

ただ、視界の中で空とアスファルトが、ぐちゃりと混ざった。

省吾の体は宙を舞い地面に落ちた。


痛みはなかった。

代わりに意識が遠のいていく。

(あ...)

頭の中に水無月実花の名前が浮かぶ。

「...告白...告白するんだ」

それが決意なのか未練だったのかはわからない。

ただ、一つだけ確かなことは

中谷省吾、十四歳の最後の言葉は

「告白」

だったという事。




目を覚ました。

目を覚ましたという表現が正しいのかどうかはわからない。

中谷省吾は真っ白な空間に立っていた。

床も、天井も、壁もない空間だった。




「えっ?この状況...死後の世界的な...?」

ーーー正解じゃ!!

どこからともなく、やけに元気のよい声。

「うわっ」

省吾は飛び上がった。

声に姿はない。

ーーー正解じゃ!!

「正解!とか元気に言われてもさ!!こっちは死んでるんだからうれしくないんだけど!!」

ーーーそうか死ぬのは初めてか?

「普通は初めてだよ!」

ーーーそうか、ならば仕方がない説明してやろう。

ーーーお前には二つの選択肢がある。

「二つ?」

ーーーそうじゃ一つは死んで消滅する。

「消滅?死後の世界とかじゃなくて?」

ーーー消滅じゃ、消えてなくなる。

「じゃあもう一つは?」

ーーーもう一つは転生して人生やり直しじゃ

「じゃあやり直すよ」

即答だった。

ーーーほう、そうかそうか。

天の声は嬉しそうにうなずいた。

ーーーならば転生するが良い。

「よし!!」

光が省吾を包み込み、飲み込まれ消えていった。



省吾は通学路の途中に立ち止まっていた。


「いっ生きてる!?」

自分の体を見て手足があることを確認する。

制服も、靴もいつも通りだった。

「...まっ、いっか良しとしよう!」

違和感も疑問もいっぱいあった。

でも、今やるべきことじゃない。

今やるべきは、 『告白』 すること、それだけだ。

水無月実花 その名前を思い浮かべ、鼓動が一段と強くはねた。

さっきまでの、もしも、が本当でも嘘でもどうでも良くなった。

省吾は歩き出した。 今度はちゃんと前を見る。

横断歩道の手前で止まり、今度はちゃんと信号を確認する。

赤。

ちゃんと止まり青になったのを確認する。

「...よし」

青。

左右を見て、道路を渡る。

何事もなく景色は流れていく。

やがて校門が見えてきた。

こうして中谷省吾は事故に遭わず、光に包まれることも、天の声を聞くこともなく。

無事に学校に着いた。

胸の奥に引っかかる気持ち悪さはある。

しかしそれを遥かに凌ぐ『告白をする』という思いが全てを消し去り省吾の足を前に進めていた。



朝の教室は静かだった。

まだ、誰も来ていない教室に机と椅子と少年が静かに存在していた。

中谷省吾は自分の席に座りながら落ち着きなく、背筋を伸ばしまわりをきょろきょろと見渡していた。

(来る...水無月さんが来る...)

心臓の鼓動がドクンと跳ね上がる。

誰もいない教室で待つ事で緊張が巨大化し我慢の限界が近づいていた。


ーーーガラッ。 扉が開く音。 「っ!?」 反射的に背筋が跳ねる。

入ってきたのは水無月実花。 ショートカットの髪が朝の光を反射して揺れる。

(は、早い...!) 心臓がドクドクと暴れだす。

(話しかけなきゃ)

省吾は拳を握りしめる。

声を!声を出すんだ!

(話しかけーー)

「ねえ。ちょっといい?」

「は!?」

話しかけたのは省吾ではない。

省吾は慌てて振り返る。

目の前には間違いなく水無月実花。

(え、え、え、!?)

話しかける予定が話しかけられた。

それだけで真っ白になる。

反射的に立ち上がり、机に膝をぶつける。

「あっ...!」 頭の中で言葉が渋滞を起こしていた。

(言え...言うんだ!)

ここまで来た。

逃げるな。

省吾は、勇気を全部かき集めて、叫んだ。

「すっ好きです!!」

---その瞬間。

「破壊神!!殺す!!」

二つの言葉が、教室の空気を切り裂いた。

「えっ?」

『殺す』と『好きです』

決して交わることが無い二つの言葉が同時に省吾に届く。

(えっ?どういう?)

理解が出来なかった。

意味が分からず呆然とする省吾。

次の瞬間。


カチャリと金属音。


省吾を巨大な影が覆う。

影の先には巨大な剣。

水無月実花は巨大な剣を構えていた。

それは教室には不釣り合いな程巨大な剣だった。

「えっ?なんで?」

省吾の問いは届かない。

制服姿で教室で巨大な剣を構え省吾をにらみつける。

(なんで?なに?どういう?」

全く意味がわからない。

ただわかっていることがひとつある。

それはめちゃくちゃピンチだという事。

「うわぁ!」 走って逃げだす省吾。

振り下ろされる剣。

剣は省吾をかすめ机を真っ二つに切り裂く。

(死ぬ...)

足がすくみ動けない。

水無月の2撃目。

かわせない。

(殺される)

最後のあがきで右手を前に出し防御する。

次の瞬間。

パリィィン!!

乾いた音とともに、水無月の剣が粉々に砕けた。

刃は粉々に砕け光の粒となり宙を舞う。

「え?」

腕は無事だった。

痛みも、血もない。

ただそこに腕があるだけだった。

省吾は腕と粉々になった剣を交互に見つめ

「なに...?これ?」

一方、水無月は。

「...っ!」

悔しそうに唇をかみしめていた。


省吾は全く理解が追いついていなかった。

頭の中は真っ白だ。

ーーーなのに。

省吾の口は勝手に動いた。


「…す、好きです!

 水無月さん!」

静まり返る教室に、その言葉が響いた。

水無月の動きが止まった。

「…っ!?」

顔が、みるみる赤くなる。

「なっ何を言ってーー!」

柄だけになった剣を握りしめ、視線をそらす。

「は、破壊神のくせに...!!」

声が、わずかに裏返っていた。

「力が目覚めている以上、私ひとりの力じゃ無理ね。

 ここは一旦引くわ」

そう言い残すと水無月実花は教室を飛び出していった。

残されたのは粉々になった剣の名残と中谷省吾。

沈黙...静かな教室の中、状況が理解できず、茫然とする省吾。

だが...。

「告白!告白出来た!」

ちゃんとはっきり二回も出来た。

状況は最悪だったけど、告白は出来た。

それも二回も。

告白できたという満足感がこれまでの違和感をすべて打ち消していた。


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