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Limitless  作者: 神 賢一
第六章 悪の華

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第99話 Brave Freak Out

 戸山公園での特務実習が行われた翌日――

 11月も下旬に入り、徐々に寒さが厳しくなっていく毎日だが、放課後の各格技室は熱気に包まれていた。

「おお、神野。昨日は手柄譲ってくれてありがとうな!」

 声の方を見ると、昨日の妖魔討伐に置いてサイクロプスを含む集団を包囲していたトーイチ3年生の大村と藤田が近寄って来ていた。

 剛は笑顔で二人を迎えると、拳を突き出して歓迎する。

「凄いですよ。サイクロプスを倒すなんて、SUAD隊員でも中々経験しませんからね。」


「よせやい。神野が譲ってくれて、しかも雑魚ども蹴散らしてくれたから、俺らでも倒せたんだよ。」

 大村に言葉に藤田も大きく頷く。それもそのはずである。コボルドやゴブリンと言った雑魚とは言え、ちまちま動き回る相手は放置するには厄介であった。

 それを剛が一掃してくれたおかげで、サイクロプスに専念できたと言うのは非常に大きかった。

「それでもサイクロプスを倒したのは充分誇れる事だと思います。」

「おいおい星野。お前がそれ言うか?」

 希美の言葉に藤田が呆れたように返す。藤田の呆れも当然の事で、自分達は8人掛かりでサイクロプス1体を倒したと言うのに、希美は単独でこれ迄に20体以上のサイクロプスを討伐しているのである。

 藤田にそう返された希美は困ったように剛に視線を送るが、似たような境遇の剛は苦笑いして肩を竦めるしかできなかった。



 12月も3週目に入り、冬休み迄10日を切った日の昼休み、4人は学食で昼食を取りながら、冬休み期間の模擬戦について予定を擦り合わせていた。

「今年は25日が金曜日か……土日を休みにして30日まで3日、年明け4日から6日まで3日ってところかな。」

 剛がスマートフォンでカレンダーを表示して、冬休み期間の曜日などを確認していた。

「ま、妥当なところじゃね?」

 翔が剛のスマートフォンを覗き込む。例年通り、12月31日から年明けの1月3日までは学食が休みになるため、その期間は流石に休みにしている。

「じゃあ、元旦はまた初詣に行って、私の家でお昼ご飯にしますか?」

 希美の言葉に奈緒がぱぁっと満面笑みを浮かべる。

「ごっはん♪ごっはん♪」

「お前はホントそれしかねぇな」


「それで……24日は今年も家に来ないか?」

 何となく恒例になっている、クリスマスイブの予定について剛が希美に問い掛けると、希美ははにかむような笑顔で頷く。

「今年もよろしくお願いします、とご家族に伝えてください」

 剛が頷くと奈緒が今度はニヨニヨと言った笑みを浮かべた。

「も~希美んみんと彼ぴっぴはラブラブなんだからぁ~~♪」

 その言葉に剛も希美も苦笑いを浮かべる。


「ラブラブって……そんな関係じゃないの、奈緒も分かってるだろ?」

 剛に言われるがニヨニヨ顔を崩さずに追い打ちを掛ける。

「またまた何言うてまんねん。クリスマスイブを3年連続一緒に過ごすってもぉ恋人同士以外ありえまへんで~~♪」

 そう言うものなの?と思い剛は翔に視線を送るが、こちらも恋人などいない立場なので当然ながら分からないと翔は肩を竦めるだけだった。



 翌週木曜日――2026年12月24日。

 明日が終業式と言う事もあり、トーフでは既に午前中授業となっていた。

 4時限目の授業が終わり、帰り支度を済ませた剛は希美の座席に向かう。

「今日も自宅で着替えてから家に来る?」

 希美は少し思案するが、軽く首を振ってから答える。

「時間も惜しいですし、今日はこのまま一緒に行きます」

 そう言うと希美は立ち上がり、頷いたが剛が教室の出入り口に向かう後ろからついて行く。

 二人がそろそろ昇降口に到着しようとしたその時――


 ≪対妖魔警報発令。対妖魔警報発令。妖魔出現場所は港区南青山。3年生は特装具を装着、特装器所持の上、地下駐車場に集合。2年生は直ちに地下駐車場に集合せよ。繰り返します。対妖魔警報発令……≫


 剛と希美は顔を見合わせると、そのまま昇降口から校舎外に出て隣接する格技棟に駆け込み、急ぎロッカールームに向かう。

(何でこんな日に……)

 急いで特装具を装着し、特装器を手に取るとロッカールームを出て地下駐車場に駆けて行く。

 剛が到着した時には既に翔と奈緒が来ており、直ぐに希美も姿を現した。


 担当教官の説明によると妖魔出現場所は青山霊園で、約1,000体の妖魔が出現しており、中にはサイクロプスやケルベロスの姿も確認されていると言う。

 場所柄渋谷に程近いため、トーニ生との共同での特務実習になるとの事だった。

 だが剛は出現場所を聞いて険しい顔をする。公園では無く霊園――つまり墓地である。墓石が林立しており広範囲攻撃は使用できないのと、墓石によっては歴史的な価値を持つ物も存在しており、迂闊に攻撃すると破壊しかねなかった。

(トーニ生も居るとなると人数は多いから、1体ずつ虱潰しにするしかないか……)

 剛としては遠距離範囲攻撃が使用しづらい状況と言うのは最大の武器を奪われた状態と言えよう。


 現地に到着すると既にトーイチ生が青山霊園の北側から中に侵入し、広範囲に散らばりながら1対1体妖魔を討伐していた。

 中型・大型妖魔が出現した場所では既に墓石が破壊されているのも散見されており、複数のトーイチ生で取り囲んで対応して被害を食い止めていた。

 剛達4人は顔を見合わせて頷くと、剛と希美が右へ、翔と奈緒が左へ向かい、サイクロプスやトロルなどの頭を覗かせている大型妖魔に対してそれぞれ特技を放つ。

 それぞれの特技を受けた妖魔は頭を弾き飛ばされ、燃やされ、切断されて、塵と化していった。


 そこからは1体ずつ倒さなくてはならず、剛としては激しくフラストレーションが溜まる戦いであった。

 剛にしてみると決して1対1体は強いとは言えず、ゴブリンやコボルドは広い場所であれば剛力斬の一薙ぎで一掃できるのだが、墓石や木立に阻まれて特技を発動できる状況では無かった。

 本来こう言う場所であれば土剣山が有効なのだろうが、既にトーイチ生が乱戦に入っていてどこにいるか分からないため、間違って特技を発動すると味方を串刺しにしかねなかった。

 止むを得ず、剛はハルバードの穂先による突きを中心に攻撃を行わざるを得ない。

 それは希美にしても同様で、長剣での斬り付けの角度が制限される状況に見舞われ、どうしても突きで1体ずつ対処する事が多くなってしまい、いつもであれば一薙ぎで倒せる10体程のゴブリンを相手に1分近くの時間が掛かってしまっていた。


 一方でこの状況を苦にしていないのが翔であった。

 取り回しの良いレイピア型の特装器を使用しているため隙間を狙ってその先の妖魔に突きを入れたり、元々奈緒の大立ち回りをフォローする形で細かいステップで立ち回る事が多かったため、こう言う込み入った状況と言うのは相性が良い。

 このため奈緒が1体討伐する間に翔は3体4体と、次々と妖魔を消し去って行くのであった。


 剛達が現地に到着してから30分程経ち、大方の妖魔を討伐し終わり掃討戦に入った頃になり、SUAD本隊の隊員達が青山霊園に姿を現し始めた。

 出番は終了とばかりにトーイチ生はSUAD隊員と入れ替わって装甲輸送車の方に向かい始め、剛達4人も撤収準備に取り掛かる。

 装甲輸送車まで戻ったところで、剛は今日がどう言う日だったか今更ながらに思い出す。

「……やばっ、母さんに連絡してない……」

 そこに戻って来た翔が不思議そうな顔をする。

「流石に連絡してる暇ねぇんだから、剛の母ちゃんも怒らねぇんじゃねぇか?」

 翔の言葉を聞いた希美は、剛の母親が「あらあらまぁまぁ、遅くなったのねぇ」と言ってる姿をイメージして、クスリと笑うのであった。

第99話 『Brave Freak Out』 LiSA

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