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Limitless  作者: 神 賢一
第五章 God knows…

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第97話 Child's Anthem

 剛は今の状況を再整理していた。

 1か月半ぶりに都内に現れた妖魔は200体……僅か200体、である。この中にサイクロプスやケルベロスと言ったランクB妖魔が複数含まれていたら厄介な状況だったが、話を聞く限りランクCのトロルが2体か3体いた程度で、今ならトーイチ1年生でも討伐できる程度である。

 この状況が続くとどうなるか……妖魔討伐などチョロい(・・・・)ものだと錯覚し始め、警戒心が薄くなる。自分達の今の実力で妖魔は簡単に討伐できると考え、慢心して研鑽を怠る者も出かねない。

 偶然ならば良いが、これが意図的に作り出された状況……200から300の妖魔を小出しに出現させ、簡単に狩らせてトーイチ生を満足させ、慢心しきったところに……数千の妖魔を出現させたら、パニック状態に陥りかねない。

(これが杞憂であれば良いのだが……)


 だが、その懸念はそれほど日を置かずに現実である事を剛は理解する。

 前回の特務実習から10日後の次の週の金曜日、対妖魔警報が発令されたが場所は歌舞伎町の大久保公園で、妖魔の数は約300体。

 更に10日後の翌々週月曜日には中野区の本五ふれあい公園に200体の妖魔が出現。

 ダメ押しとばかりにその1週間後の月曜日には、新宿区の富久さくら公園に250体の妖魔。

 いずれも学年順に出撃するため剛達が現場到着した時には殆ど妖魔討伐が終わった状況であった。

 この事で、一見トーイチ生の士気は上がったように見える。圧倒的絶対的エースである神野と星野がいなくても、俺らだけで妖魔を討伐できたと言う自信に繋がっていた。


 だが、それが数千から万を超える妖魔が出現した時に通用するか。

 ここ3回の特務実習ではランクC以下の妖魔しか出現しておらず、しかも出現した妖魔の数は出動したトーイチ生より少ないか、僅かに多い程度。

 その程度の実力で満足していて、ランクB以上の妖魔や修羅、ましてや天道が現れた時に、どれほど通用すると言うのか。

 実際に剛はこれまでの前世以前で、西新宿の大厄災の時に何人ものトーイチ生が命を落としているのを見掛けていた。

 剛は何か手を打たなくてはと思案する。


「え?1対多の地稽古?」

 翌日の昼休み、学食で昼食を取りながら剛が提案した事に対して翔が疑問を返す。

「正しくは、2対多、かな。俺と希美、翔と奈緒が一組で、それに対して多数を相手する」

 そう言う形式はこれまでもやってこなかった訳ではない。現に格技の授業においては、剛と希美は通常1対3、翔と奈緒も1対2で模擬戦をやるのが通例となっていた。

「多数を相手は分かりましたが、何人程同時に相手する事を考えてるの?」

 希美の問いに剛は即答する。

「一組当たり50人を考えてるよ」


 剛の答えに3人は絶句する。剛の言葉をそのまま受け取れば、2対50で対戦すると言う事である。

 多くて10人位かな、と安易に考えていた翔は、1クラス半の人数を相手にする事を想像してうんざりとした顔をする。

「剛、その人数を集めるのはどうやるの?」

 希美の当然とも言える疑問だが、それについても既に腹案があった。

「御魂先生に話を通すよ。場所の件もあるしね。第2格技室を使わせてもらおうと思う」


「中々面白い事を思い付きますね。良いですよ、連絡と手配はしておきます」

 放課後、職員室で御魂に地稽古の事を伝えると、相変わらずのニコニコ顔であっさりと了承した。

「まーその規模だと君達も手加減とか寸止めとかできないでしょうから、参加者は君達も含めて全員プロテクター着用してくださいね」

 言われてみるとその通りである、1対1や1対2程度であれば寸止めで勝負を決めるのも周りが見れば判るが、50人を相手にしていると寸止めしている間に別の相手から攻撃される事も想定される。

 相手を倒したとするには、直当てするしか方法は考えにくかった。



 剛が御魂に地稽古を提案して2日後の放課後――

 第2格技室にはトーイチ3年Aクラス・Bクラスの生徒を中心に、見物を含めると300人程が集まっていた。

 プロテクターを着けて木剣や木槍など模擬戦用の武器を持ったトーイチ生100人に対して、同じくプロテクターを着けて各々の得物を手にした剛、希美、翔、奈緒の4人。

 それとは別に、特医科3年の生徒が10名程駆り出されていた。

 剛は対戦する相手を見ていてあれ?と思い、見物に集まった人の方を見ると、伊達と富澤は手ぶらでプロテクターも付けずにその人混みの中に居り、剛は二人に駆け寄って行った。


「伊達さん、富澤さん、抽選に漏れた……いや、3年Aクラスは最優先だから辞退したんですか?」

 3年AクラスとBクラスの生徒は希望すれば必ず参加でき、それ以外の人数を希望者から抽選となる事を御魂から聞いていたが、こうやって見物人として来ていると言う事は参加希望しなかったと言う事であろう。

「ああ、俺らは外から神野と星野の動きをしっかり見させてもらう事にしたよ」

 伊達が剛の質問に答えると富澤が話を継いで剛に応える。

「何十人もの乱戦の中だと追うだけでも大変だから、集中して見ようと思ってな」

 二人の言葉に剛はなるほど、と思う。見取り稽古と言う方法があるように、他人の模擬戦などを注視する事で動きを把握し、自分に反映させると言うのも稽古としては一つの手段である。

「分かりました。お二人とは別の機会にまた模擬戦やりましょう」

 そう言うと剛は二人から離れ、戦いの場へと向かって行った。


 剛と希美が背中合わせで立って得物を構えると、その周囲を50名のトーイチ生がぐるりと取り囲む。

 対妖魔戦であれば50体100体の真っただ中に突っ込んだ事が何度もあるが、対人戦では初めてとなる経験である。

 こんなに沢山の学生特技士に囲まれてこれから戦うと言う高揚感に、剛は肌が粟立つような感覚に襲われて凶暴な笑みを浮かべる。


「オラ、ワクワクすっぞ!」

うるせぇ黙っとけ」

 翔と奈緒も剛達と同じように、50名のトーイチ生に囲まれて地稽古の開始を待っていた。

 翔は肩関節のストレッチを行ったり細剣を腕だけで振って感触を確認しており、奈緒は頭上でハンマーをくるくる回している。

「さ、どこまでやれるか試してみるか」


「始め!!」

 戦闘が開始されると剛達に向かい、長柄武器を持つ15人程が先ずは駆け寄って突きや斬り付けを繰り出す。

 背中合わせの剛と希美は一度に当たる相手を減らすべく、剛の右――希美の左に移動して突きを払い捌くと、剛の突きで3人が早くも脱落し、その空虚に希美が踊り込むと2人を切り伏せる。

 右手の敵が減ったところで剛は左にハルバードを大きく振るうと2人が柄で弾き飛ばされる。

 希美は更に前に進んで時間差で進んできた剣やハンマーを持つ相手に細かいステップで斬撃や打撃を回避すると、長剣を閃かせて1人の剣を跳ね飛ばして胴を打つと別の相手に突きを見舞う。

 神速の斬撃と突きに怯んだのを見逃さず、希美は袈裟斬りで左肩を打つとその右横の相手に返す刀で逆袈裟で右肩に一撃を見舞う。

 その間剛は相手が放った突きをハルバードの突起で絡めて跳ね飛ばすと斧頭の一撃を脇腹に与え、希美の側面後方を取ろうとした者を見逃さず突きの一閃を加える。

 最初50名だったトーイチ生は、たった2人のトーフ生によって徐々にその数を減らしていくのであった。


「そこまで!!」

 10分程の激しい戦闘が終わった後にその場に立っていたのは、額から夥しい汗を流しながら肩で息をする剛、希美、翔、奈緒の4人の姿だけであった……

第97話 『Child's Anthem』 TOTO

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