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Limitless  作者: 神 賢一
第五章 God knows…

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第94話 DESIRE ―情熱―

 夏休みが終わる丁度1週間前の2026年8月25日――

 トーイチ・トーニ・トーサンの都内に存在する対妖魔特設高校の三校合同夏季特別講習が行われる日である。

 トーフ――国立東京第一高等学校附属中学校の3年Aクラスに所属している剛、希美、翔、奈緒の4人は、中学生の立場でありながら特別講習の模擬戦に参加する事となっていた。

 中学生の立場、と言うものの、剛達4人は本来であれば簡易特技士として登録されるべきところを、中学2年の段階で特技士に昇格しており、トーイチ生と肩を並べる――どころか、剛と希美は既にトーイチ生を凌駕する実力を模擬戦でも妖魔討伐でも発揮していた。


 4人は格技棟の端末前に集合すると、第10格技室を予約してから学食に向かい昼食の予約を済ませ、格技室に戻ると模擬戦の準備として柔軟体操や素振りなどを始める。

 準備が終わると先ずは剛と希美が模擬戦を開始するのだが、今日はこの後の特別講習で模擬戦を行うのがメインになるため、普段ほどの激しさは無かった。

 剛と希美の模擬戦が終わると、翔と奈緒も同様にいつもより緩いペースで模擬戦を行い、その後気になった所を指摘しあって動きを確認する。

 2年以上、地味ながらもこう言う確認と修正を繰り返してきた事で、剛達はトーフのみならずトーイチを含めた学生特技士の最上位に到達したのであった。


 何度か模擬戦を繰り返し、時計を見ると10時半を回ったところであった。

「そろそろ第1格技室に向かう時間かな」

 特別講習は8時40分に開始されており、開始式と説明で40分、移動で10分、座学が1時間であり、丁度座学が終わった頃の時刻となっていた。

 同じ格技棟内での移動なのでさほど時間は掛からず、剛達が第1格技室に入った時はまだ生徒の数は疎らであった。

「さて……俺達はどこ行きゃいいんだろ?」

 そう言って翔が見回すと、格技室内の一番端で御魂が手を振っているのが見えたので、3人を促して御魂の方に歩いて行く。

 その間、4人を見て――トーフの制服を着ているため目立っており――周囲では声を潜めながら値踏みするように剛達の事を眺めていた。


 定刻となり全員が整列すると、トーイチ特技科の格技担当教官が壇上から簡単な説明を行う。

 その後学年ごと、トーイチ・トーニのクラスごとに15組に分かれ、トーサンは事前に説明されていたのか12、3名ずつが各グループに組み込まれた。

 剛達4人はトーイチ3年Aクラスがいるグループに入れられる。その中にはこれまで何度も模擬戦を行ってきた伊達や富澤と言った面々が顔を揃えていた。

 模擬戦は5戦を予定しており、剛達は順にトーサン、トーニ、トーイチの生徒と対戦後、トーニ、トーイチの別の生徒と対戦を行う事となっていた。


 剛の最初の相手は大薙刀を片手で構える身長180cm程のトーサンの男子生徒であった。

(薙刀か……初めて使う人に出会ったな……)

 同じ長柄武器でも槍遣いは剣士に次いで多く見かけたし、たまにポールアックスを使用する生徒とも模擬戦を行った事はあった。ただ、模擬戦でポールアックスを使う相手は特装器としてはどんな武器を使用しているのか解り辛く、実際に初めてトーイチに入学した時の剛はハルバードの模擬戦武器が無かったためポールアックスを使用していた。

 ただ、薙刀を使う相手と言うのはこれまでに見た事が無く、特装器としてもそのままの形状なのか、類似するものとしてグレイブや偃月刀が存在するが、いずれにしても斬る動作が基本なのは変わらないだろう。

 そう考えた剛は、間合いと相手の初動に意識を集中する。


 開始の合図前、相手の構えが片手で石突に近い場所を握っているのを見て、相手の戦い方が薙刀では無い事に剛は気付く。

(リーチを活かして斬り付ける感じか……俺の斬り付けと似たような感じだな……)

「始めっ!!」

 左からの薙ぎ払いを想定して剛は右前方にステップして突きを繰り出すと、相手は横薙ぎの斬り払いを腕を畳んでハルバードの突きの軌道を変えるが、剛は石突近くで薙刀を更に右に弾くとその勢いで相手は踏鞴たたらを踏む。

 更に突きを繰り出すと辛うじて薙刀で受け流すが、剛は左手を柄に添えて円を描くようにハルバードを閃かせると逆袈裟の斬り下ろしで相手の側頭部に斧頭をピタリと突き付ける。

「それまで!!」

 開始僅か7秒。剛の完勝であった。


「相変わらず神野の攻撃はえげつないな」

 自分達の順番を待っている間に剛達の模擬戦を観戦していた富澤が思わず本音を漏らす。

「そのえげつない攻撃に少しずつ目が慣れてきている俺らも大概だがな」

 その横で頷きながら伊達が応える。

 今日は伊達も富澤も剛達4人と対戦する事が出来ずに悔しい思いをしていたが、こうやって他人との模擬戦を見るだけでも色々と勉強になる事を理解して、剛の一挙手一投足を見逃すまいとしていたのであった。


 模擬戦は希美の方も20秒も掛からず勝利しており、翔と奈緒も危なげなく勝ちを収めていた。

 その後もトーニ生、トーイチ生、トーニ生と3戦いずれも4人とも勝利で終わらせており、最後のトーイチ生との模擬戦となる。

 剛の対戦相手は石田――1週間前に模擬戦を戦った中の1人である。

「神野とやるのは3度目か。よろしく頼むぜ」

 そう言うと石田は木刀を両手で握って正眼に構えた。


(正統派の剣士と言った感じだったよな……隙が少なくて動きが素早い。間合いを如何に上手く取るか、だな……)

 石田が使うは木刀は刃長75cm程。希美の長剣の1mや翔のレイピアの90cmに比べると短く感じるが、それ故に取り回しが良く攻めるにも受けるにも鋭さが増す。

 剛は手製の木製ハルバードを両手で握り、開始の合図を待つ。


「始め!!」

 掛け声と同時に剛は左手一本で突きを繰り出すが、石田は軽く剣で捌いて軌道を逸らすと大きく踏み込んで左の小手を狙った鋭い振りを見せ、剛が手を引いて柄で受け流すと受け流された左に石田は流れて真一文字に剣を振るう。

 左に回転しながらバックステップで間合いを取ろうとするが、袈裟斬りから逆袈裟斬りの連続技で剛に襲い掛かる。

 剛は袈裟斬りを受け、逆袈裟斬りを躱してハルバードを力任せに振るが、石田は力を逃がすように斜めに受け流すと鋭く踏み込み突きを繰り出す。

 石田の突きを体を開いて躱した剛は受け流されて右上に掲げた状態のハルバードを振り下ろして斧頭の一撃を加えようとするが、迎え撃つ形で石田の剣が受けて逆に剛は押し返される。


(上手い!俺の事を充分研究している……だが、それでも!)

 押し返された剛は石突で石田を牽制し、ハルバードを一閃させて間合いを詰めさせないようにすると鋭く突きを3回繰り出し、石田は2回を左に――剛から見て右に細かくステップして躱し、最後を木刀で受けた。

 剛は石田の木刀が裏の突起に挟まっているのを見るやハルバードを捻り、石田は木刀を奪い取られないよう剣を引いて構え直すが、その瞬間体制を低く飛ぶように石田に向かって突進する。

 その動きに動揺を見せた石田は真っ向斬りに木刀を振り下ろそうとするが、それより早く剛のハルバードの穂先が石田の首筋に突き付けられた。


「そこまで!!」


 お互いに武器を収めて正対して礼をした後、石田は手を差し出して握手を求め、剛はそれに応える。

「ははっ、俺にしては上出来だったけど、まだまだ差があるな。俺ももっと修行しないと」

 その言葉に剛は軽く首を振る。

「ここまで対策されているとは思いませんでした。またお願いします」

 二人が頷き、握手の手を離したその時であった――



 ≪対妖魔特別警報発令!!対妖魔特別警報発令!!妖魔出現場所は小金井市関野町!推定妖魔出現数は2,000から3,000体!!東京第一高校の特技科生徒は特装具を着用、特装器所持の上、地下駐車場に集合せよ!!繰り返す!対妖魔特別警報発令!!対妖魔特別警報発令!!妖魔出現場所は小金井市関野町!――≫

第94話 『DESIRE -情熱-』 中森明菜

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