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Limitless  作者: 神 賢一
第五章 God knows…

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第93話 You Take Me,You Make Me

「で、彼ぴっぴは自分で修羅出現のフラグ立てておきながら、ばっきり折った……違うなぁ。ど派手に燃やしちゃったって訳ね」

 北の丸公園での特務実習の翌日、学食で昼食を食べている時に前日の戦闘の話をすると、奈緒からそんな言葉が漏れた。

「ど派手に燃やした……まあ、そう言われるとそうなるんだけど……」

 剛は困惑気味に応え、助けを求めて希美に視線を送ると、視線を感じた希美は軽く首を傾げる。

「まあ、あれは……剛ですからね」

「むしろバッサリ斬られた?!」


「剛ちゃんならしょうがねぇなぁ」

「彼ぴっぴのやる事だからねぇ」

 希美の言葉に何故か翔と奈緒も同意して頷く。

(何か前世とかでも似たような事あったな……嬉しくないが……)

 剛は憮然とした表情で食事を進めるのであった。



 夏休みに入ると、剛は毎日のように朝9時に格技棟に向かい、希美達と合流して格技室の予約後に学食で昼食の予約を行い、格技室に入り模擬戦を行っていた。

 希美や翔、奈緒とも対戦していたが、トーイチの上級生――特に3年Aクラス、Bクラスの生徒とは対戦していない人を探す方が難しくなる程、様々な相手と模擬戦を実施していた。

 その日もトーイチ3年Aクラスの田村、川島、石田、井上と言う4名と模擬戦を実施していた。

「神野たちは来週の三校合同の夏季特別講習で、また模擬戦やるのか?」

 希美と田村が模擬戦をやっている最中に、川島から尋ねられる。

 剛はその言葉に驚き、首を振って否定する。

「いやいや、去年は成り行きで対戦する事になりましたけど、本来は見学だけしかしないですよ」


「でも、神野や星野は特設校で一番強いんじゃないか?一番の猛者と対戦できないのは勿体ないよな」

 剛の否定に井上が声を被せてくる。トーイチ3年生とは3学年差あり、しかもAクラスの生徒は全員トーフ卒で5年以上模擬戦や対妖魔戦を行ってきている。そのトップレベルの生徒が、3学年下の剛や希美に土を付ける事が出来ていなかった。

「……俺達が参加して、変な習慣にならなければ良いんですけど……」

 色々な影響を考えて剛が懸念を伝えるが、川島に真っ向から否定される。

「いや、お前ら完全に特別枠だから他の参考には全くならないよ」


 川島達の言葉に剛は憮然とする。だが、その言葉は事実のため否定できず、否定できないからこそ憮然とするしか無かった。

 翔や奈緒でもトーイチ3年生との模擬戦の対戦成績は勝率6割以上である。実力差や相性でどうしても勝てない相手がいるのだが、それでも徐々に勝率を上げてきている。

 剛や希美に至っては3年生になってから模擬戦で負けたのはその二人が直接対戦した場合のみで、トーイチ生には全戦全勝であった。

 川島の特別枠と言う言葉も、周りからしたら当然と言える状況だった。


(このままだとなし崩しに俺達も模擬戦に参加になるな……どうしたものか……)

 迷っている剛を見て翔は敢えて声を掛けず、参加するにしろしないにしろ剛の決断に従うつもりだったが、そこに奈緒が満面の笑みで口を挟んできた。

「参加しちゃえば、いーじゃん♪いーじゃん、すげーじゃん♪」

「……俺はオマエのネタ元がさっぱり理解できねぇよ……」

 そこに模擬戦を勝利で終えた希美が合流してきた。


「……難しい話ですね。本来は対妖魔特設高校のイベントですので、私達が出ると言うのは好ましくないとは思うのですが……」

 顎に手を当てて希美が考えながら言葉を紡ぐ。それに対して奈緒がえーっと声を上げて抗議する。

「去年も模擬戦やっちゃってるんだし、3年生になったんだから2年生の時より問題にならないよ~~」

 どうすんの?と言った視線が翔から送られてきたが、剛としては中々結論を出せずに希美に視線を送ると、希美は軽く溜め息を吐いて目を伏せる。

「……御魂先生に相談してみませんか?何か考えがあるかもしれません」

 希美の言葉に剛と翔は頷くのであった……


「え?貴方達4人は最初から参加ですよ」

「「「え?」」」

 ニコニコと笑顔を向けてくる御魂は事も無げに言うが、その答えに剛、希美、翔の3人は同じ反応を示した。

「えっと……最初から参加って……どう言う意味、ですか……?」

 混乱したまま辛うじて尋ねる事が出来た剛であったが、御魂は眼鏡の奥の目を細めてニコニコ顔を崩さずに答える。

「当然じゃないですか。都内の対妖魔特設校で一番の実力者である星野さんと神野くんが三校合同夏季特別講習で模擬戦をやらないなんて、生徒達が知ったら暴動が起きますよ」

「暴動って……」


 しかし、暴動は言い過ぎにしても御魂の言っている事はあながち間違いと言う訳でも無いだろう。

 昨年の三校合同夏季特別講習において、現在の2年生、3年生の前で――それもトーイチだけでなくトーニ、トーサンの特技科生徒の前で――模擬戦を行い、あまつさえ剛と希美は当時の3年生の選抜メンバーに勝利しているのである。

 その事実を知っている生徒が大半の状況で、剛達4人が今年は模擬戦に参加しないと言う事が知れ渡ったら、暴動とまでは行かなくても騒ぎは収集を付けるのが難しいだろう。

「まーあどうせ貴方達も模擬戦のためにその日もトーフに来てるんですよね。だったらいつもの延長戦と思って、特別講習の模擬戦にも参加してください。お願いしますね」

 そう言って御魂は剛達に決定事項として模擬戦参加を押し付けたのであった。


「そう言えばこの夏休みの間って、まだ警報出てないよな」

 御魂の元を辞した4人が昇降口に向かっている時に翔が予想外の事を話し始めた。

 思い返すと北の丸公園に妖魔が出現したのは夏休みに入る直前で、少なくとも都内では対妖魔警報はそれ以降発令されていなかった。

「ま~平和なのが一番だよ~。あたしもできれば戦いたくないからね~」

 気楽な感じで奈緒が言うが、妖魔が出現しないのであればその事自体はありがたい事である。ファンタジー小説の冒険者みたいにモンスターを狩って素材などで稼いでいるのであれば討伐する必要はあるが、特技士は妖魔を狩る事で生計を立てている訳ではなく任務として討伐しているのであり、ましてや剛達はまだ中学生なのである。

「奈緒の言う通りだわ。妖魔が出現しなければ、暮らしている人達も命を脅かされる事がないものね」

 奈緒の言葉に希美が同意するように頷きながら話す。


 帰宅後、剛は夕飯の席で三校合同夏季特別講習で今年も模擬戦に参加する事を恵に話していた。

「そう言えばトーニでもアンタ達の名前、よく話題に上がってるわよ。中3なのにバケモノ(・・・・)じみた強い4人組がいるって。特技科じゃないから分からないけど、アンタ達そんな凄いの?」

 凄いのかと聞かれて素直に凄いと答えられる訳もなく、剛としては答えに窮しながら言葉を選ぶ。

「凄いかって言うと……俺と希美が、去年トーイチ3年Aクラスのトップの人に勝った、って言う程度、か、な……?」

「は?」

 恵は一瞬剛が何を言ったのか理解できなかった。トーイチ3年Aクラスのトップと言う事は、都内の対妖魔特設高校のトップと言う事である。そんな相手に、希美と、そして剛が勝った……どう言う意味か……徐々に理解した恵は驚愕で目を見開く。

「はあぁぁぁぁぁぁぁ?!」

「姉ちゃん声でけぇって」


 そんな様子を眺めていた豊が口を挟んでくる。

「まあ、小学生の頃から自分で武器作って素振りとかしてた成果かな。凄いんだな、剛は」

 急に褒められて照れる剛は、父親の顔を直視できずに答える。


「それは……トーフに入ってから、希美と模擬戦やるようになって、強くなったんだよ。今の俺があるのは、希美のおかげだよ」

第93話 『You Take Me,You Make Me』 鈴木祥子

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