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Limitless  作者: 神 賢一
第五章 God knows…

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第86話 Have a Nice Day

 吉祥寺での災禍から1週間後の2026年4月7日――

 春休みも終わり、トーフ――国立東京第一高等学校附属中学校の最高学年として、剛達は再び通い始める。

 と言っても平日はほぼ毎日のように模擬戦を行うためにトーフに行っていたため、然程斬新な物では無かったのも事実ではあったが。


 トーフに到着してクラス割を確認すると、当然ではあるが剛は――希美、翔、奈緒も――3年Aクラス所属になっていた。

 剛が教室に入り、自分の席に到着すると、1つ前の席で待ち構えている男の姿。

「やあ、神野くん。やっと君らと同じクラスになれたよ」

 笑顔で話し掛けて来たのは、1年の時に希美と初めての模擬戦を行った桂だった。

「桂か。これから1年よろしくな。と言っても桂ならトーイチでも同じクラスになりそうだが」

 剛に掛けられた言葉に桂はふっ、と柔らかい笑みを浮かべる。

「そうなると良いね。よろしくお願いするよ」


 徐々に教室内に生徒が増えていき、希美が姿を見せ、その後奈緒、翔も教室に入って来た。

 剛は軽く挨拶を交わし、予鈴が鳴った事で自席に戻って椅子に座ると、程なく教室のドアが開いて担任と思しきやや背の高い細身で眼鏡を掛けた男性が入って来た。

 その姿を見て剛は思わず立ち上がって、その男性教官を驚愕の面持ちで見据える。

(……御魂衛みたままもる?!)

 いきなり背後で立ち上がる音がした桂は怪訝そうな顔で剛を見ると、その様子に気付いた剛は慌てて椅子に座り直した。


(どう言う事だ……前世でもトーフ3年Aクラスの担任だったのか?……いや、希美達の様子からそれは無いはず……)

 剛が自分の席に座った状態で思案し始めると、男性教官――御魂衛が教壇と電子黒板の間に立って、ニコニコと笑顔を振り撒きながら話し始める。

「はい。え~、既に知っている人もいるみたいですが、僕が3年Aクラスの担任になりました、御魂衛です。格技授業を主に担当しますが、それ以外にも放課後の特技訓練なども事前に相談して貰えたらお手伝いできますよ」

 御魂の名前を聞いて数名が息を飲んだり、えっと声を出していた。恐らくは何らかの理由でSUADの情報に詳しい者と剛は推測していた。

 それもそのはず。御魂衛と言えば剛は前世でも関わったが、4色個性持ちのSUADのエースであり象徴でもあった。


(ふむ……先程立ち上がったのが神野剛くんですね……何故か僕の事を知っていたような……面識、ありましたでしょうか……)

 御魂はいつも通りニコニコとした笑顔を崩す事無く、一瞬だけ剛に視線を送る。

「まあ、大半の人は既に顔と名前が一致していると思いますが、念のために皆さん自己紹介をお願いします」

 そう言ったものの、御魂としては3年Aクラスの生徒については顔と名前、個性を全員把握済みであった。

(このクラスは星野さんと神野くんのクラスと言っても過言ではないですし、ね……)


 放課後になり、剛達4人はトーイチの特装科工作室があるフロアに向かった。

 入間に特装を製作して貰って1年が経ち、特に剛と希美は先日天道との激闘を行っていた事から、特装のメンテナンスを依頼しようと剛が考えて提案し、全員異存がなかったため入間の元に向かっているのであった。

 いつものようにフロアに設置されているパネルで入間の入室を確認すると、第8工作室に向かいドアをノックする。

「おう、入んなー」

 中から入間の声が聞こえたのを合図に、剛達はドアを開けて工作室内に入ると、作業台の上で特装器を製作している入間の姿が目に入る。


「おー少年少女、久しぶりだな。今日はどうした?」

 顔を上げると作業のために目を保護していたゴーグルを額の上にずらし、入間が4人に向かい不敵な笑みを浮かべる。

 入間との窓口は何となくだが剛になっているので、経緯を説明してメンテナンスを依頼したい事を伝えると、入間は腕を組んでうんうんと頷く。

「丁度気分を変えたい所だったよ。君らみたいに私に作って欲しいと言うリクエストじゃなくて、誰でも良いから作ってくれなんてふざけた有象無象どもの特装製作は飽き飽きして来たところだったわ」

 入間の言葉に剛は驚きの表情を見せる。

「えっ、じゃあメンテナンスは……」

 入間は指を3本立てて大きく頷く。

「3時間だ。3時間もあれば終わっておろう。どうせ模擬戦でもやってるんだろ。その後また来るが良い」


「入間さんは話早ぇな」

 模擬戦前に昼食を取るため、トーフの学食に向かっている時に翔が素直な感想を述べる。

「でも良いのかしら?恐らくトーイチ新入生の特装の製作依頼が入っていたんじゃないかしら」

 希美としては特装の製作を後回しにして自分達の特装のメンテナンスを行う事で、製作に遅れが出るのではないかと懸念していた。

「入間さんの事だから、遅れた分は徹夜してでも取り戻すんじゃないかな?」

 一番入間と接してきている剛としては、性格的に入間ならそうするんじゃないかと確信的に思っていた。


 模擬戦のために第5格技室に入ると、意外とまばらだった。流石に始業式初日から模擬戦をやる生徒は少なかったようである。

 ただ、その中でもこう言う日に模擬戦をすると言う事は一層の研鑽を積みたいと思っている生徒達であり、剛、希美、翔、奈緒と言う、トーフどころか学生特技士で最上級の猛者が来た事を、彼らは犇々(ひしひし)と感じ取っていた。

 そんな中、近寄ってくる二人の姿が確認できた。何度も模擬戦をやってきた、4月で3年生に昇級した伊達と富澤である。

「相変わらず模擬戦中毒だな、君らは」

「ま、俺達も君達が来るの期待してたんだけどな」


 気の良い、大恩ある先輩の顔を見て、4人は顔を綻ばせる。

「最初はこのメンバーでやりますので、1時間後くらいから私達とお手合わせお願いできますでしょうか?」

 希美が言うと、二人は声を出して笑う。

「むしろ俺らがお願いしたいから来たんだよ」

「俺達にもっと指南お願いするよ」


 1時間ほど過ぎて、伊達・富澤との模擬戦にあえて最初は剛が前に出た。

 対戦するのは伊達。長剣を片手で振る、受けを中心とした技巧派の剣士である。

 開始早々、剛は突きを繰り出し、弾かれた勢いを活かして斧頭での斬撃を放つが、以前だったら受けるのがやっとだった伊達も、かわしながら袈裟斬りを繰り出してくる。

 半年前とは違う動きを見せる伊達に軽い驚愕を受けるが、剛としてはこれまでの100回を超える人生の中でもっと凄腕の猛者を相手してきており、軽く捌くと突きと斬撃のコンビネーションを見せる。

 斬撃に対して一太刀合わせて弾き返した伊達は、低い体勢で剛に向かい隙を少なく剣を鋭く振るう。

(できる?!いつの間にこんな戦い方を!!)

 剛は瞬時に床を蹴り、間合いを取ってハルバードを大きく振るうと、伊達は流石に剣で受けるしか無く、数m押し返される。

 その一瞬を突いて剛は伊達に詰め寄ると、伊達の喉元に向けてハルバードの穂先を突き付ける。


「やべぇよ。やっぱ勝てねぇな」

 その顔は嬉しそうで、満足している顔だった。


 剛達が模擬戦を終えてトーイチ特装科第8工作室に辿り着くと、部屋の主と化している入間が、いつものように白衣を開けて自慢の胸を強調するように腕組みをして背筋を伸ばして待ち構えていた。

 その立ち姿を見て、希美より豊かな胸を擁する奈緒が同じように腕組みして胸を持ち上げようとするが、入間のボリュームには全く及ばず、ぐぬぬと言う唸り声をあげる。

「何してんだお前」

 翔が軽くチョップすると、奈緒は貧乳に人権をー!乳差別はんたーい!と喚くが、剛はその様子を見て苦笑いする。


(姉ちゃんがこれ聞いたらマジ切れするなぁ……奈緒どころか希美より無い(・・)んだから……)

 その実情は剛には知りえる事ではないのだが、胸のサイズとしては入間のGカップを頂点に、奈緒がEカップ、希美がCカップで、入間にぺったん呼ばわりされている恵はその言葉に違わずAカップと言う、剛の身近な女性の中でダントツ最下位であった。

 (別にそれが人の価値に直結する訳じゃ無いんだし……いやでも、姉ちゃんは少し器量狭いか、な……)

 本人の前で言ったら間違いなくぶん殴られるような事を、剛は考えていた……

第86話 『Have a Nice Day』 Bon Jovi

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