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Limitless  作者: 神 賢一
第五章 God knows…

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第82話 Stay Together

 年が明けても剛達は相変わらず放課後に模擬戦や特技訓練を続けていた。

 月に1度程の間隔で妖魔出現による特務実習を行っていたが、剛と希美は勿論の事、翔と奈緒もかなりコンビネーションが良くなって効率的に妖魔を討伐する事ができるようになっていた。

 そんな日々を過ごして時が過ぎ、3月下旬――

 トーイチの卒業式が行われる日であった。


 剛達はトーフ生であるため、同日に第2格技室で行われたトーフの卒業式に参列した後、第1格技室で行われたトーイチの卒業式会場に向かった。

 これまで模擬戦で相手を務めてくれた先輩達であり、その旅立ちを見送りたかったのである。

「星野、今までありがとうな」

「神野、お蔭でだいぶ鍛えられたよ」

 第1格技室から出てくる際に、剛達の顔を見付けてはそう言って礼を言う先輩達の中に、一番回数をこなしてきた一団が見えて来た。


「平沢さん、秋山さん、田井中さん、田中さん。ご卒業おめでとうございます。皆さんSUAD入隊が決定したそうですね」

 希美が代表して祝辞を述べると、平沢は皮肉そうな笑みを浮かべる。

「ありがとう……結局星野には勝ち越されたまま終わったな。それが心残りだ」

 そう言うと平沢は右手を希美に差し伸べる。希美は差し伸べられた平沢の手を握り返す。

「4年後、私がSUADに入隊するまで待っていてください。その時はまた模擬戦をお願いします」


「もっと負け越すかも知れねぇぞ!」

「その前に五体満足で生きてなきゃいけないなぁ!」

「問題起こして首になって無きゃいいけどな!」

 平沢の後ろに居る3人が各々好き勝手に口にすると、平沢は声を出して笑いだす。

「違いない。無事に過ごして星野が来るのを待っているよ。……勿論、神野もだ」

 そう言うと平沢は剛の方を見てニヤリと獰猛そうな笑みを浮かべた。


 トーイチ3年生を見送った剛達は、放課後――卒業式が行われる時期と言う事は明日には修了式が行われるため、授業は午前中で終了しているのだが――昼食のために学食でテーブルを囲んでいた。

「明後日からだけど、いつもの休みと同じで平日は模擬戦で良いかしら」

 希美が模擬戦の予定を提案すると、翔は頷くが剛は口を差し挟む。

「春休み中の予定で提案があるんだけど、去年みたいに屋外修練場で模擬戦やらないか?日付は……そうだな、去年と同じ火曜日で3月31日、場所も同じじゃ面白くないから井の頭公園はどうかな?」


「剛が面白いで提案するのは珍しいな」

 剛の言葉に翔が反応する。

「あたしは家から近いし良いよー。今度はウチでご飯食べてく?」

 奈緒が言うと希美がふふっと笑い、軽く頷く。

「じゃあ今年は3月31日に井の頭公園で模擬戦ですね。奈緒、お家の方によろしく伝えてね」



 2026年3月31日――

 剛は前日持ち帰っていた、専用の収納袋に入った特装器を手にして、JR中央線快速で吉祥寺駅に向かう。

 吉祥寺駅に到着すると、待合せの京王電鉄井の頭線井の頭公園駅――奈緒の自宅の最寄り駅に歩いて向かう。

 井の頭通りから弁天通りと言う車両一方通行の細い道に入ると、20m程先を歩く希美の姿を捉え、剛は軽く駆け足で希美に追い付く。

「希美、おはよう」

 声を掛けられた希美は立ち止まって振り返る。

「おはようございます、剛。無理して走らなくても良かったのに」

 その言葉に剛は軽く笑うと並んで歩き始める。


「井の頭公園の屋外修練場は初めてだな。希美は来た事あるの?」

 剛の問い掛けに希美は軽く首を振る。

「私も初めてね。と言うか、剛達と言った小金井公園の屋外修練場以外、まだ行った事無いわ」

「へぇ……そうだったんだ」

 意外そうに剛が返すが、希美がちょっと呆れたような顔をする。

「トーフに入学してから、剛達とだいたいいつも一緒だったじゃないの」


 言われてみればその通りである事を剛は改めて気付かされた。

 入学式があった初日に剛が希美に模擬戦を依頼するために声を掛けて、翌日には奈緒が強引に決めて模擬戦を行ってから、昼食にしても模擬戦にしても特務実習にしても、常に4人で行動していた。

「ずっと一緒でいられたら良いわね……」

 希美の言葉に、剛はこれまで繰り返し転生してきた前世以前の人生を思い返して、少し険しい顔をする。

「ああ……一緒に過ごせるようにしたいな……」

(そのためには……今日、天道が再起できないようにしておかないと……)


 剛と希美が井の頭公園駅前に着くと、既に翔が自販機近くで待っていた。

「おはよう、翔」

「おはようございます、翔。お待たせしました」

 二人が挨拶すると翔は右手を上げてよっ!と返事する。

「後は奈緒ですね」

 希美が軽く辺りを見回すが、奈緒の姿はまだ見えない。


「何かそこらで買い食いでもしてるんじゃねぇの?」

 そうは言ってみたが、見える範囲で開店している店は向かいにあるコンビニくらいで、それ以外に軽食などを買えそうな店は見当たらない。

 3人が暫し待って待合せ時刻の2分前――

「やっほ~~♪希美んみん、彼ぴっぴ、翔んるん、おっは~~~♪」

 駅に真っ直ぐ向かってくる道から横断歩道を渡って、奈緒が――手には食べ掛けのサンドイッチ持って――姿を現した。

「また食ってんのかよ!つーか家で食っとけよ!」

 そして何時ものように突っ込む翔に呆れる希美。

(何かお笑いのお約束みたいだな……押すなよ押すなよ、みたいな……)


 屋外修練場は駅から徒歩で7、8分程歩いた、井の頭池のボート場にほど近い野外ステージの対岸側に存在していた。

 去年の小金井公園での屋外の模擬戦とは異なり、今は入間に製作してもらった特装器――剛としてはこの後の事に備えて特装具も用意したかったのだが、流石に模擬戦には物々しすぎると思い諦めた――を所持しているため、それぞれ収納袋から取り出して準備を始める。

 最初は素振りや型稽古で足場を確認し、ある程度準備が整ったところで模擬戦を開始する。


 剛と希美の模擬戦はトーイチ上級生とのこれまでの模擬戦の成果もあり、1年前とは比べ物にならない早く激しいものとなっていた。

 素早く駆け寄っては討ち合い、斬り、払い、突きを繰り出し続け、躱し、受け流し、受けては押し返して間合いを取ってはまた駆け寄って打ち合う――SUAD指定の屋外修練場なので一般人は足を踏み入れないが、公園の一角であるため場外からその演武のような二人の戦いを足を止めて眺める人も居り、時折歓声や嘆息が聴こえて来ていた。

 4人は相手を変えながら2時間半程模擬戦を繰り返し、特装器を収納袋に収めてから奈緒の家に向かった。


 奈緒の家は屋外修練場から徒歩7分程、井の頭公園駅からでも徒歩10分掛からない住宅街の中に在った。

(結構広いな……ただ、周りに比べると古いと言うか、だいぶ前から建ってるような……)

 築40年近く経ってそうな、今時珍しい引き戸……引違戸と言う2枚の扉がスライドする玄関入口だった。

「ただいま~~!さ、上がって上がって。古い家だけど綺麗に片付いているから~」

「片付けたのは奈緒じゃなくて母ちゃんだろ」

 翔のツッコミを気にせず、奈緒は自宅に上がり3人を案内する。


「へぇ……畳の部屋か。今時珍しいな……」

 剛達が通されたのはリビングと言うよりは居間と言った方が良い、ふすまで仕切られた佇まいの和室であった。

 部屋の中央にちゃぶ台が置かれ、四方に座布団が敷かれており、奈緒に案内されるがまま3人は座布団の上に座る。

「ちょっと待っててね。お昼ご飯できてると思うから」

 そう言うと奈緒は襖を開けて廊下から台所に向かうのであった。

第82話 『Stay Together』 Mr.Big

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