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Limitless  作者: 神 賢一
第五章 God knows…

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第80話 Sparks

 トーフに復帰した希美は最初の数日こそ動きが硬かったものの、1週間もすれば元通りのキレのある動きを取り戻していた。

 最初の1週間は第11から第16の格技室で4人だけで模擬戦を行っていたが、翌週からは通常の第5から第10の格技室に戻り、上級生――トーイチ生とも模擬戦を繰り返す。

 そんな4人の元に、伊達と富澤が姿を見せる。

「もう元通りどころか、以前に増してキレた動きだな」

「後遺症も無いようだし、心配無用だったな」


「伊達さん、富澤さん、あの時は本当にありがとうございました。お二人がいなければどうなっていたか……」

 剛は深々と頭を下げて二人に希美の装甲輸送車までの緊急搬送を行ってもらった事に対して礼を言う。

「おいおい、そんなに恐縮するなよ。俺らにとっても星野はもう戦友なんだからさ」

「そうだ。俺達としても、これからも星野には模擬戦相手して貰って、もっと腕を磨きたいからな」

 すると剛と二人が会話しているのに気付いた希美が奈緒との模擬戦を止め、駆け寄ってくる。

「伊達さん、富澤さん、あの時は本当にありがとうございました。お二人が――」

 その瞬間、伊達と富澤は声を出して爆笑し始める。


「ほ、ほ、星野……おま、その台詞、神野と一字一句同じじゃねぇか」

「はっ、ははっ、お、お前達、ど、どんだけ息ピッタリなんだよ」

 腹を抱えて笑い転げるような二人の反応に、剛と希美はお互いに困惑した顔を見合わせる。

 そこに奈緒が割って入ってくる。

「二人はラブラブカップルですから~~♪」

「お前は黙ってろ」


 翔に軽くチョップされた奈緒が、モテない男の僻みーー!女っ毛ゼローー!と喚いているのを無視して、翔も二人に向かって礼を言う。

「ホント伊達さんと富澤さんが剛達の近くにいてくれて助かりましたよ。俺からも礼を言わせてください。ありがとうございました」

 その様子に富澤がどうする?と言った表情で伊達を見ると、思い付いたかのように伊達が話を切り出す。

「じゃあ、お礼代わりに模擬戦の相手をお願いできるかな。俺らに稽古付けてくれよ」

 剛と希美は伊達の言葉にお互いを見合わせ、笑みを浮かべながら頷く。

「分かりました。私達で良ければお相手お願いします」


 二人のための模擬戦、と言う事で、伊達と希美、富澤と剛、伊達と奈緒、富澤と翔、と言う一周目が終わったところで、時間を掛けて感想戦――遣り取りを確認して、ダメ出しをした上で改善を提案して――再び、伊達と剛、富澤と希美、伊達と翔、富澤と奈緒、と相手を変えて模擬戦を行う。

「うわぁ……ヤバい。明日筋肉痛になってそう。って言うか既に足に来てるわ。君らを相手にするのはホント疲れるわ。床と一緒になりそう」

 格技室の床に寝転がって伊達が疲労困憊になっていた。

「ちょっと何言ってるか分かんない。床と一緒ってどう言う事?」

 伊達の言葉に床にうずくまっている富澤が突っ込む。

(あ、何かいい関係だな……)

 自分の事をさておき、翔が二人の関係性が良い事を会話から感じ取っていた。


「またお願いします。勉強になりました」

 剛が礼を言うと、伊達と富澤は……筋肉痛の足を引き摺りながら、4人に正対する。

「俺らの方が鍛えられた……と言うか、まだまだ君らに追いつかないな」

「これ繰り返せば、俺達かなり腕前上がると思うから、何度でも相手して貰えると嬉しいよ」

 そう言うと二人は軽く手を上げて剛達の前から遠ざかって行く。

「私達も終わりにしましょう。もうこんな時間だわ」

 格技室に設置している時計を見ると午後6時を少し回った所であった。2時間程模擬戦を行っていた事になり、大体いつも切り上げる時間である。

 3人は頷くと格技棟のロッカールームに向かって格技室を後にするのであった。



 希美がトーフに復帰してから2週間が経過した10月上旬――

 いつものように放課後に模擬戦を行っていた剛達は、今日もトーイチの上級生との模擬戦を終えてそろそろ切り上げようとしていたその時であった。


 ≪対妖魔警報発令!対妖魔警報発令!妖魔出現場所は杉並区和田。校内に居る特技科生徒は特装具を装着、特装器所持の上、地下駐車場に集合せよ。繰り返す。対妖魔警報発令……≫


「こんな時間にかよっ!もう日が暮れてるじゃねぇか!」

 ロッカールームに走りながら翔がぼやくが、暦は2週間程前に秋分を迎えており、翔が言う通り既に日没の時刻は過ぎていた。

(夜間……とまでは行かないが、薄暮での戦闘か……気を付けないと人を傷付けたり妖魔を見落としたりしかねないな……)

 剛は慣れない薄暗い状況での戦闘に懸念を感じながら特装具を装着し、特装器をロッカーから取り出すと、翔と共に地下駐車場に急いで向かう。


 地下駐車場に向かうと次々とトーイチ特技科生徒が駆け込み、180人程がその場に集まった。

 妖魔出現場所は東京メトロ丸の内線東高円寺駅1番出口近くの蚕糸の森公園なのだが、隣接する小学校の校庭にも妖魔が溢れだしているらしい。

 その数300体。サイクロプスやケルベロスと言ったランクB妖魔は居ないが、トロルが20体以上確認されているとの事だった。

(トロルか……今度は確実に仕留めてやる!)

 前回の苦い経験から、剛は決意を新たに闘志を燃やす。


 装甲輸送車がトーイチを出て青梅街道を西進して東高円寺駅前に到着すると、既に妖魔は青梅街道に溢れて周辺の建物を破壊し始めていた。

 歩道上には妖魔に襲われて命を喪った人や意識を失い動けなくなった人の姿も確認されていた。

 後部ハッチから飛び降りると剛と希美、翔と奈緒のいつもの組合せで、妖魔の群れに向かって駆け出していく。

 希美は手近な妖魔の群れを認識すると、真っ直ぐ駆け寄って特装器の長剣を振るう。


 〈飛翔(leaping)(slash)!〉


 ゴブリンやコボルドが多く蠢いている場所に向かって希美が特技を放つと、10体を超える小型妖魔が切り裂かれて塵となり消えていく。

 その先に建造物を破壊しているトロルやオークの集団の姿が見えた。


 〈(ivy)生蔦(cluster)!〉


 翔が特技を発動すると7mを超える蔦が何十本も発生し、トロルを含む20体程の妖魔を絡め捕り、動きを止める。

 動きを止めた妖魔は他の者でも倒せるため、剛は違う方向の妖魔の群れに向かい、異なる特技を発動させる。


 〈岩石(stone)(bullet)!〉


 片側二車線の青梅街道の両脇は歩道に街路樹が立ち並び、その奥には商店などが隙間なく存在している場所である。

 剛は周囲の被害を極力減らすため法力を絞り、10個の拳大の岩石を発動させて妖魔に放つと、ゴブリンやコボルドが弾き飛ばされながら消滅していく。

 すかさず希美の方に駆け寄り、周囲を警戒するのだが、既に日没から30分以上が経過しているため少し離れると敵味方の区別すら付き辛くなる。

 剛はその状況に対して警戒を怠らずに思考する。

(……この暗さを何とかする……炎……いや、それより光……可能なのか?いや……イメージだ。イメージを固めて……)

 剛は特装器を振り上げて法力を――緑でも赤でも無く、白の個性で――込める。


 〈聖なる(secred)(lite)!〉


 剛が特技を発動させると頭上30m程の上空に眩く輝く光の球が発生し、辺りを昼間のように照らし始める。

 その輝きによって路上に居る姿が、トーイチ生なのか妖魔なのかはっきりと判別できるようになっていた。

「助かります!剛!」

 希美はトロルを中心に集結している妖魔に向けて駆け出し、法力を込めて特装器の長剣を横薙ぎに振るう。


 〈(flaming)(blade)!!〉


 希美のその一閃で、トロルを含む20体程の妖魔を燃やし尽くして消し去るのであった。

第80話 『Sparks』 浜田麻里

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