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Limitless  作者: 神 賢一
第四章 Spread Wings.

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第75話 Cry and Alive

 夏休みが終わって以降、剛達は放課後の模擬戦で第11から第16の格技室――1対1や2対2で使用する小規模の格技室を多用するようになっていた。

(流石に目立ち過ぎたか……)

 それもその筈である。三校合同の夏季特別講習と言う都内の対妖魔特設高校に通う特技科全生徒と言っても良い集団の目の前で、中学2年生の剛達4人がトーニ、トーサンの3年生に模擬戦で勝ち、トーイチの3年生相手にも剛と希美が勝利を収めると言う、言わばジャイアントキリングを成し遂げていた。

 そのため、今迄みたいに第5から第10までの複数団体で使用する格技室に行こうものなら、トーイチ生から模擬戦の申し込みが後を絶たなくなっていた。

 ただ、小規模の格技室は6部屋しか無いため、既に利用されている場合のみやむを得ず通常の格技室を使用するようにしていた。



 9月に入って3週目となる月曜日――

 剛達は教室で2時限目の授業を受けていたその時。

 ≪対妖魔警報発令。対妖魔警報発令。妖魔出現場所は新宿区西新宿。3年生は特装具を装着、特装器所持の上、第1格技室に集合。2年生は直ちに第1格技室に集合せよ。繰り返します。対妖魔警報発令……≫

 そのアナウンスを受け、剛達は特技科2年であるが特技士として妖魔討伐にあたる必要があるため、格技棟のロッカーに急いで向かう。

「西新宿ってこの辺りじゃねぇかよ。どこに出たんだ?」

「分からない。だが、特別警報じゃないからって気を抜くなよ」

 男子生徒用ロッカーで剛と翔は特装具を装着しながら会話して、装着を終えると特装器を手に第1格技室に駆けて行く。


 第1格技室にはトーイチ特技科生徒約470名と、トーフ3年生、2年生約320名が整列するが、トーフ2年Aクラスは剛、奈緒、希美、翔の4人が列の先頭に並んだ後ろに出席番号順に整列する。

 担当教官の状況説明によると、妖魔出現場所は新宿中央公園。妖魔の数は500体程だが、数体のサイクロプスが確認されている。

 説明が終わるとトーイチの3年Aクラスから順に、第1格技室から特務実習に出動し、中央通りを西に駆けて行く。

(どうしても上級生が先に出動するから、俺達は後からになるんだよな……変な混戦になってなければ良いが……)

 トーイチ3年Aクラスの生徒が出動してから約2分。漸くトーフ2年生の出動の順になると、剛達は新宿中央公園に向けて走り出す。


 新宿中央公園に到着した剛達が目にしたのは、トーイチ生と妖魔が入り乱れて戦う状況だった。

 敵味方が綯交ないまぜになっている状況で、4人は遠距離特技の発動を控えざるを得ない。

 剛と希美、翔と奈緒の二組に分かれ、それぞれの判断で押され気味の場所に介入をしていく。

(サイクロプスは……どこだ?)

 剛と希美は開けた北側ではなく、木立が生い茂る南側に向かって駆け出し、コボルドやゴブリンをあしらいながら進んで行く。

 するとその先に、10名程のトーイチ生徒が包囲するような形でサイクロプス1体を含む20体程の妖魔の姿が現れる。


「状況を!」

 希美が駆け寄る間に大きく声を掛けると、包囲網の1人がチラっと見て剛と希美である事を認識する。

「サイクロプスの雷撃で2名負傷!膠着状態だ!」

 それだけ聞くと希美は走りながら特装器を振るって特技を発動させる。


 〈火炎(flaming)(arrow)!〉


 威力を押さえた20本程の炎の矢がサイクロプスに飛来し、危険を察知したサイクロプスは左手で払おうとするが炎の矢は次々と突き刺さり、サイクロプスの左手は激しい炎に包まれる。

 その痛みと熱さでサイクロプスは狂ったように激しく両手を振り払い、近くに居た小型妖魔を巻き添えにしていく。

 剛はそのタイミングを逃さず、サイクロプスに特装器を向けて緑の法力を込める。


 〈岩石(stone)(bullet)!〉


 コントロールを重視して5個の拳大の岩石を生じさせると瞬く間にサイクロプスに襲い掛かり、腹に、肩に、腕に、胸に、そして頭に岩石は命中してその体を穿つと、サイクロプスは後ろに倒れながら塵と化していった。

 サイクロプスが消え去るのを見て、10人程のトーイチ生は残党狩りとばかりにその場にいるゴブリンやコボルドを狩っていく。

 その状況に、希美は剛の顔を見て頷き、次の場所へと駆け出していく。


 混戦となっている状況で、むしろ厄介なのはオークであった。体長約1.8mで一般成人と大差無く、体長約4mのサイクロプスのように的となる場所が見えないため、近接攻撃を仕掛ける必要があった。

 公園の手すりであったと思われる鉄パイプや、標識看板そのものを振り回すオークに、トーイチ生は有効な打撃を与える事が出来ずに疲労だけが蓄積していた。

 駆け寄る二人は特装器を翻し、ハルバードの一閃でオークの首を撥ね、長剣の一閃でオークの太い胴を真っ二つに切り裂く。

 特技が使い辛いため1体ずつではあるが、味方を傷付けないよう細心の注意を払いながら剛と希美はオークを退治していく。


 その時であった――

「うわああぁぁぁぁぁん!!」

 剛達の耳に飛び込んできたのは子供の泣き声。

 本来であればトーイチ1年生が避難誘導して、民間人は既に退去しているはずの状況であるにもかかわらず、逃げ遅れた子供がいたと言う事になる。

 声が聞こえた管理事務所の方に剛と希美が駆け付けると、巨大な棍棒を振るって駐車している車両を破壊しているトロル5体と、破壊された車両から這いずるように遠ざかろうとしている5、6歳くらいの男の子の姿。

 無造作に動き回っているトロルの1体の足が、男の子を踏み潰そうとしたその時――


 〈飛翔(leaping)(slash)!!〉


 希美が特技を発動して発生した空気の刃がトロルの足を切断する。

 だが、足を切断された事でトロルが体勢を崩して男の子に向かって倒れ込もうとしていた。

 その様子を見て希美は男の子に全力で駆け寄る。


 〈岩石(stone)(bullet)!!〉


 援護のため周囲のトロルに向かって剛が岩石弾を放つ。倒れ込むトロルにも命中し、男の子の上ではなくその奥にトロルは倒れて消滅した。

 駆け寄って男の子の無事を希美が確認したその時であった――希美は頭部に強烈な衝撃を受け、5m程弾き飛ばされる。

「希美!!」

 頭に残る激しい痛みと剛の悲痛な声を最後に、希美は意識を失ってしまう。


 倒れ込んだ希美に駆け寄ると剛はその体を左手で抱き抱えると、その頭部からは血が流れ、剛が贈ったシュシュに血が滲んでいた。

 素早く周囲を見回し、剛は法力を込めながら特装器を振るう。


 〈溶岩(lava)(bullet)!!〉


 拳大では無く銃弾のような大きさの溶岩数百を、近くに存在する妖魔に向けて弾幕のように叩き込むと、妖魔は炎を上げながら塵のように消え去る。

 剛の周囲から妖魔の気配は消え去ったが、剛の腕の中には力無く横たわったままの希美の姿。

「誰かー!!誰か来てくれーー!!」

 声を聞きつけて現れたのは長剣を携えた二人――トーイチ2年の伊達と富澤だった。


 ただならぬ様子の剛と……横たわる希美に二人は駆け寄ると、富澤はグローブを外して希美の首筋に触れる。

「脈はある……大丈夫だ、生きているぞ」

 伊達は柵を乗り越え、斜面を下って公園大橋の下に走り、装甲輸送車が配置されている事を確認すると二人の元に駆け戻る。

「病院に搬送しよう。装甲輸送車が停まっているから、俺と富澤で運ぶ。神野は周囲を警戒しておいてくれ」

 剛から希美を受け取った伊達と富澤は両脇から希美を支えて立つと、足も持ち上げて二人で抱えるように公園大橋の下の装甲輸送車まで運び込む。


 希美を装甲輸送車内に横たえ、後ろから押すように剛に乗車する事を促す。

「星野と一緒に居てやれ」

「こっちの事は任せておけ」

 伊達と富澤はサムズアップを見せて、装甲輸送車の扉を閉めるのであった――

第75話 『Cry and Alive』 BREAKERZ

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