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Limitless  作者: 神 賢一
第四章 Spread Wings.

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第74話 ultra soul

 2学期の始業式もあと1週間と迫った8月25日――

 この日は第1から第4の格技室が使用できないと通知があった。前世の剛も出席していたが、トーイチ・トーニ・トーサンの妖魔特設高校三校合同の夏季特別講習が行われるため、第4格技室までは講習用に確保されていた。

(丁度あと2年か……天道を倒すにはまだ力不足なのはこの間の特務実習で明らかだ……もっと強く、もっと力を……!)

 想いを強く、剛は希美と、翔と、奈緒と模擬戦を行うのであった。


 特技科が最後に行う合同模擬戦はトーフ生にも見学は認められていたため、剛達4人は第1格技室に向かい見学のために入室する。

「うおっ……すげぇ人数だな……」

 特技科はトーイチが5クラス、トーニも5クラス、トーサンが2クラスの12クラスあり、それが3学年で36クラス。1クラスの定員は32名のため、1,100人を超える3校の特技科生徒が一堂に会していた。

 トーイチ生が整列している場所を見つけ、邪魔にならないように壁際に4人は陣取ると模擬戦の開始を待つが、少しするとトーイチ生に騒めきが起こり始める。


(何でざわざわしてるんだ……?)

 剛は隣の希美の顔を見るが、視線に気付いた希美は軽く首を横に振る。

 その内トーイチ生と格技教官が話を始めるが、何故かちらちらとこちらを見られている事に気付く。

(え?まさか俺達……?)

 すると興奮した生徒が声を荒げ、こちらを指さしてくる。

「だって他校生なら良い訳ですよね!彼らは他校生ですよ!」

「中学生は別だ!彼らは見学に来ているだけで、模擬戦をやりに来たわけじゃない!」


 希美は困惑した顔で口元に手を当てており、翔は不安げな表情で剛を見詰める。

 どうやらトーイチ特技科生徒の中で模擬戦で剛達4人と対戦したい、とそう言っている生徒が1人や2人ではなく、それなりの数に上っている様子であった。

(見学に来たのは拙かったかな……これまで30人じゃきかないトーイチの人と模擬戦やってきたから顔もバレてるし……)

 そんな状況の中、奈緒は腰に手を当てて指をV字にして目の横で決めポーズを取っていた。

「奈緒、これ以上目立つことは止めてちょうだい」


 トーイチ生と格技教官の話し合いが終わったのか、教官が剛達に向かって項垂れながら歩いて来る。

(何となく想像つくな……生徒に押し切られたか……)

 剛が思っていると、目の前に来た教官が申し訳なさそうな顔をする。

「済まない、お前達にどうしても模擬戦の相手をして欲しいと言う生徒が多くて……各校の代表1人ずつで良いので、模擬戦をやってもらう事は出来ないだろうか……」

 剛が予想した通りではあったが、各校の代表1人ずつ、とは想像していたより少なかった。

 剛と翔が希美の方を向くと、希美は軽く頷いて答える。


「私は構いませんが、剛と翔はどうですか?」

「俺は構わねぇな」

「俺も全然問題無いけど、奈緒は良いのか?」

 3人が奈緒の方を見遣ると、いまだにトーイチ生に向かって良く分からないアピールポーズを取り続けていた。

 顔を見合わせた3人は同時に溜め息を吐く。

「奈緒も参加と言う事で良いでしょう」


 各校の代表との模擬戦は、トーサンの生徒から始まった。

 通学の都合などでトーフからトーサンに進む生徒も全くいない訳では無いが、話を聞いた限りだと4人はいずれも中学時代に剣道で名を馳せた剣士であった。

(トーフ卒と言ってもDクラスやEクラス在籍だと、残念ながらそこまで実力がある訳じゃ無い、か……)

 トーフを卒業したAクラスからCクラスの生徒の8割以上はトーイチに進学する。DクラスやEクラスでもトーイチを受験し合格する者もいるのだが、Aクラスの実力者には遠く及ばない。それどころか、高校から対妖魔特設校に入学した者は伸びしろしか無いため、トーフで燻っている程度の者では簡単に追い抜かれるのであろう。

 そんな事を考えている間に、剛は対戦相手と正対する。


 トーサン3年生の4人は、確かに剣士としては優れていた。だが、剣道に適合し過ぎていた、と剛には感じられた。

 実際に手合わせをしてみたが、鋭く正確な剣捌きではあるが素直過ぎ(・・・・)たのである。

 そのため得物の違いや剣道ではあり得ないトリッキーな動きをすると反応が半歩遅れてしまい、剛は敢えて3回その隙を見逃してから、4回目でハルバードの穂先を相手の首筋に突き付けた。

 希美の方も似たような感じだったらしく、殆ど汗もかかないまま模擬戦に勝利していた。

 4人の中で最も正統派な意味でトリッキーな動きをするのが翔で、相手は細かい左右のステップと鋭い突きに翻弄され、翔の突きに対して小手を狙った斬撃を手首の動きで細剣を切り返して弾き、同時に鋭く踏み込んで相手の喉元に剣先を突き付けたのであった。

 違う意味で最もトリッキーな奈緒については正に初見殺しも良いところで、全力で振り下ろされたハンマーを木刀で受け流そうとしたが余りの衝撃で手が痺れてしまい、怯んだところをハンマーで右肩を軽く2回叩かれて万事休す。

 トーニ生との模擬戦も大差無い様子で、トーサン生よりは全員健闘したと言える程度であった。


 最後にトーイチ生との模擬戦になるのだが、剛の相手は平沢――希美との模擬戦の結果は互角に近い、トーイチ一番の実力者と言える男が姿を見せた。

「神野か。君とは初めての手合わせだな」

(星野もそうだが、神野もバケモノ(・・・・)と言って良いだろう……田中を軽くいなす実力……侮ればこちらが負ける。)

 その言葉に剛は軽く頭を下げ、自作の木製ハルバードを構える。

「よろしくお願いします」


 初め、の掛け声で先ずは平沢が鋭い袈裟斬りを繰り出すが、剛はハルバードの突起で受けて右に捻り込む。

 剣が捻られるのを引き戻す事で平沢は回避すると、右に――剛から見て左にステップして半歩踏み込み、突きを放つ。

 左に体を開いて回避した剛は正対する形になった平沢に柄で強引に殴り付けるが、剣を斜めに構えた平沢が受け流すと逆袈裟斬りを放ち、剛はハルバードの石突付近の柄で受ける。

(成程……立ち回りで相手の狙いを外すタイプか……誘うような動きは読まれそうだな……)

 クレバーなタイプである事を認識した剛は、間合いをなるべく取って長柄武器の利点を活かす動きを暫くの間続ける。


(クソっ、踏み込ませてもらえんな……それが長柄物の利点だから当然か)

 自分の間合いに踏み込めず防戦気味となる平沢だが、焦る事なく剛の突きや斬り付けを捌きながら立ち位置を細かく変え、隙を伺う。

 平沢が冷静に剛の攻撃を捌いていると、徐々に、そして僅かにだが、剛の攻撃に雑な部分が見え始める。

(流石に中学2年生では体力が持たないか……ならば!)

 剛の僅かに雑になった突きを長剣で弾き返すと、平沢は体勢を低くして一気に剛の懐に飛び込み、長剣を真一文字に振るう。

 その時、剛がニヤリと笑った光景が平沢の目に飛び込む。


 剛は弾き返された勢いでハルバードを反転させて平沢の一閃を逆に弾き返し、更に反転させて斧頭の斬り付けを見舞い、平沢の側頭部に斧の刃を突き付けていた。

 一瞬何が起こったのか理解できず、平沢は固まったまま剛のハルバードの柄から伸びる自分の側頭部に突き付けられた斧頭を見て、漸く状況を理解して息を飲む。

(まさか……あの乱れすら演技だったと言うのか……?!……こいつら、何てバケモノ(・・・・)なんだ?!)


 かくして、剛は平沢との4分間に及ぶ激闘を制し、一礼のあと希美達が待つ待機場所へと歩んで行くのであった――

第74話 『ultra soul』 B'z

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