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Limitless  作者: 神 賢一
第四章 Spread Wings.

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第70話 I'll Be Over You

 奈緒の呼び掛けに応じてくれたのは、トーイチ2年Aクラスの男子生徒2人組だった。

 二人とも身長は175cm程あり、剛や翔と10cmちょっと、希美とは15cm程、奈緒に至っては20cmは身長差があった。

 我々と模擬戦やるのが問題無いのか、剛が尋ねると二人とも頷いて答える。

「君達だろ?トーフ2年生なのに特務実習で遠距離から特技で妖魔倒してたのって。話によると特技士に昇格して前線に立つ事になるって」

「それにさっきの模擬戦見てたら、油断していたら俺らの方が危ないくらいだ。むしろお手合わせ願いたいところだったよ」


 富澤と伊達と名乗ったトーイチ2年生はどちらも長剣を手にしていた。特技士としては最も使用する人が多く、それだけに戦い方のバリエーションが豊富で、まだ立ち会った事が無い剛達からするとどのような太刀筋なのか見当が付かなかった。

 だからこそ、違う相手を模索しようと考えていた剛達にとってはありがたい相手である。

「俺らはいつでも行けるけど、君らはどうだい?」

 伊達が促してくるのに対し、翔が一歩前に出る。

「俺からお願いします」

「ああ、よろしく頼むよ」


 開始と同時に翔が三連突きを繰り出したのを伊達は二発を半身になって躱し、最後の一発を長剣で軌道を変えて避ける。

 突きの軌道を変えられた翔は素早く細剣を手元に戻してバックステップで一旦距離を取って追撃に備えるが、まだ伊達は様子を見ているようであった。

(受けからのカウンタータイプなのか……誘う動きじゃ乗ってこなさそうだな……)

 とは言え、お互いに様子見していては膠着状態になる。そう考えて翔はじわじわと距離を詰め始める。

 その動きに忌避感を持ったか、伊達は長剣を八双に構える。

 ならば……と翔は突きを繰り出すと伊達は左に開く動くと同時に右袈裟に斬り掛かり、翔は細剣を斜めに構えて右袈裟を受け流して再び突きを見せると伊達の剣に弾かれて軌道が変わり、翔は手首を返して弾かれた方向から円を描いて左袈裟に斬り下ろすと、伊達は思わず左手で刀身を握って長剣の腹で受ける。

 その後も翔が攻め、伊達が受けからの返しが続き、一進一退の攻防は決着を見せずに5分の制限時間を迎えた。


 伊達と異なり富澤はツーハンデットソード――ファンタジー物だとツヴァイヘンダーと呼ばれる――柄の先にも握る場所が存在する、1.2m級の長剣を構えた。

 相対するのは奈緒。ハンマーを肩に担いで、何故か「ふっふっふっふ……」と意味の分からない笑みを浮かべる。

(ちょっと何考えてるのか分からないな……)

 お互いパワープレイヤーと認識したが、奈緒が何故自信満々なのか分からない富澤としては慎重にならざるを得なかった。


 そんな富澤の思いを吹き飛ばすように、奈緒はハンマーを振るいまくる。

「ホームラン!ホームラン!ホームラン!」

 ハンマーを左右に斜め上に向かって振り続ける奈緒に対し、富澤は避ける事しかできない。

 剣を振りだすがハンマーに質量が及ばないため弾かれるだけで、どう対処するのか富澤は想定できないまま押し込まれる。

 決定打は生まれないまま、5分の制限時間を迎えた時には富澤はへとへとになっていた。

「この子……何なの……?」

 その言葉を聞いて剛は苦笑する。

「そう言う子なんですよ。お疲れ様でした」


 次の対戦は、一休みした伊達に対して剛か希美のどちらが相手するかだった。

「伊達さんと富澤さんの戦い見て、どっちが嫌だった?」

 その言葉に対し、模擬戦を確と見ていた希美が答える。

「私は富澤さんの方が苦手かもしれません」

 その言葉を聞いて、剛は不思議な可笑しみを感じていた。剣と長柄物で、やはり相手が長剣とは言え相性が違うのは確かであり、その差がお互いの届かない所を補い合う一端だと感じた。


「じゃあ、俺が伊達さんと」

「なら、私が富澤さんと」

 二人は顔を見合わせて、これから狩りをすると言うような獰猛な笑みを浮かべるのであった。

 格技室の一角で、討ち合うためのこれからの場所に剛は進んで自作のハルバード型の模擬戦武器を構える。

「伊達さん、お願いします!」


 戦いは一方的であった。長柄武器であるハルバードを模した得物に対し、伊達が使っている長剣は重さとしては半分程のはずであった。

 それなのに手数は剛の方が多い。このため、受け流しから反撃や後の先を得意とする伊達は、反撃する前に次の剛の一撃が来る事に辟易へきえきとしていた。

 十合、二十合と打ち合うが反撃のいとまも見いだせず、防戦一方であった伊達の繰り出した起死回生の一撃は……ハルバードの裏突起に絡められ、伊達は手元から剣を失っていた。

 喉元に穂先を突き付けられた伊達は、声を絞り出す。

「君に勝てる奴って、どんなバケモノなんだよ……」

「そこに、美しいバケモノがいますよ」

 剛が見遣った方を伊達が見ると、涼しげな顔をして長剣を手にした希美がいた。

「……君ら全部、バケモノだろ……勝てやしないや」


 一周目の最後は、富澤に対して希美が前に出る。

「一番強い相手か……模擬戦なら、負けて悔いなし、かな」

「負けたら悔いしか残りません。勝つ事こそ、戦う意義です」

 ふっ、と富澤は息を吐き、長剣を正眼に構える。

「他の相手ならそうだな。でも、君相手なら負けて悔いなし、だよ。よろしく頼む」


 長剣同士を手にした希美と富澤が向き合う。

 希美は右手一本で構え、富澤は更に大きな得物をツーハンデットソード特有の鍔の先を右手で、鍔の手元を左手で構える。

 開始と同時に仕掛けたのは富澤。鍔の先を持つと言うツーハンデットソードの特性を活かし、てこの原理で大剣を振り下ろす。

 襲い掛かる大剣を容易く見切った希美は左にスライドしてその斬撃を避けると、右逆袈裟にその剣を振るう。

 富澤はその斬撃に対して右手で大剣を引き起こして受けるが、希美はその反動を殺して懐に入り込み、横一文字に剣を振るう。

 たまらず富澤は倒れ掛かるような体勢でその一撃を回避するが、その次の希美の一撃を避ける事は出来ず、喉元に剣を突き付けられるのであった。


「正直、本田と鈴木も強かったが、星野と神野はちょっと俺らで太刀打ちできるレベルじゃないな」

「星野と神野か。俺達も改名して『野』を附けるか?」

「お前は『富野』になるから良いけど、俺は『伊野だの』って意味分からんわ」

 そうやって茶化した言い方をする上級生二人に対し、剛も希美もふっと笑顔になる。

「またお願いしてもよろしいでしょうか」

 希美の言葉に二人は頷く。

「むしろこちらこそお願いしたい。機会があったら是非」


「まだいませんかーー!!トーイチの2年生、3年生で我こそはーーと言う猛者、お待ちしてまーーーす!!」

「おい止めろ!何挑発してんだよ!」

 奈緒が更なる模擬戦の相手を呼び込む声に対して、翔が制止しようとするが、その時には既に剛達の方に向かってくる4人がいた。

「私達に稽古を付けてもらっても良いかな?トーフの英才君達」

(ま……マジかよ……この人達がいたのか……)


 剛が声を掛けて来た4人を見ると、トーフ生である剛達でも分かる錚々たる面々が居並んでいた。

 田中、田井中、秋山……そしてトップエースである平沢。

 4人はそれぞれの得物を手に、話題であり出る杭である剛・希美・翔・奈緒に対して、力を示そうと進み出て来ていた。

 そんなトーイチ3年Aクラスの上澄み(・・・)が剛達の目の前に存在していた。

 その状況に剛は……ふっ、と息を吐いて恫喝な笑みを浮かべる。



(来た……好機が……ジャイアントキリングの最大の好機が!!)

第70話 『I'll Be Over You』 TOTO

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