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Limitless  作者: 神 賢一
第四章 Spread Wings.

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第69話 Raise your flag

 夏休みまでの間の3か月程の期間で、剛達はあと3回の特務実習を行っていた。

 トーフ2年生なので、3年生と同じく見学……看取り稽古に近いが、本来なら手を出す事は無いはずであった。

 だが、都度都度危険な生徒がいるため、剛に限らず希美、翔、奈緒も特技を発動して、妖魔討伐の一端を担っていた。


 そんな夏休みを前にしたある日。剛達は指導室と呼ばれる個室に呼ばれていた。

 室内に入ると、トーフの校長と教頭、それに学年主任が待ち構えていた。

 4人は身構えるが、ソファーに……3人掛けなのに4人が無理やり座るように、窮屈ながらソファーに座る。

「君らには驚かされるよ。トーフ生どころか、トーイチ生を凌駕するとはね」

 言われた剛達にはそんな記憶は無い。ただ、これまでの特務実習でそれぞれ支援として、特技で妖魔を倒したのは一度や二度ではなかった。


「すみません。何故呼ばれたのか全く分からないのですが……我々に何か問題がありましたでしょうか?」

 剛の疑問は当然である。全く話が見えていないのが現状である。

 その疑問に対して、校長が答える。

「君らには、今後簡易特技士ではなく、正式な特技士として活動して貰いたい」

 言った言葉は分かった。だが、言われた意味が全く分からなかった。

「その……どう言う事でしょうか……?」

「要するに、君らは本日以降、特務実習においてトーイチ生と共に妖魔殲滅を行ってもらいたい、と言う事だ」


 いや、言っている事は分かる。

 しかし、剛達はまだトーフ――再確認しよう。国立東京第一高等学校附属中学校の生徒であり、中学2年生である。

 前例など何処にも無い。3年生ですら前線に立つ事がないのに、2年生である剛達が前線で妖魔を退治すると言う事を言っているのである。

「ですが、それは法的に問題があるのでは……」

 希美の言葉に校長は軽く首を振ると、前屈みになって剛達に告げる。

「特例法第7条3項にある。在学生を凌駕する場合、特技士としての資格を与えるものとする。と、な」


 おかしな事になったな、と剛は思った。当然である。まさか中学2年生の内に、トーイチ生徒のように妖魔を倒す事を求められたのだから。

 だが、剛としてはこれはチャンスだとも感じていた。

(妖魔と直接対峙できる。今の俺がどれだけできるか、試せると言うのは大きいな)

 元々断る事が出来ない決定事項ではあるが、簡易特技士ではなく特技士として活動できるのであれば、妖魔だけでなく修羅を――天道光を――倒す事も不可能ではなくなる。

 その事実を剛も、希美も、まだ気付いてはいなかったのだが――



 翌日。夏休みまであと3日と迫った水曜日――

 剛達4人はいつものように学食で昼食を取っていた。

「夏休み期間の模擬戦はどうしますか?1年の時は夏休みも冬休みも週3回にしていましたが」

 希美の問い掛けに対して剛と翔は少し考える。

「そうだな……俺は毎日でも良いけど、翔はどうだ?」

「俺も毎日でも構わないが、週1日か2日は休みを入れた方が良い気もするな」

 休み、と聞いてアニメや漫画だったら猫耳付けてぴこん!と言った様子で奈緒が目を輝かすのを見て、翔が機先を制する。

「先に言っとくがデートはしねぇぞ」


「なんでや!ウチかてデートくらいしたいねん!希美んみんと彼ぴっぴだけデートしてズルいズルい!」」

「だからそのエセ関西弁止めろや!それに彼ぴっぴって誰だよ!」

「……多分俺の事だと思うけど、デートはしてないよなぁ」

 喚く奈緒に対して突っ込む翔、ぼやく剛だが、希美だけはすっと顔を背ける。

(う、うん。クリスマスイブのあれは、デートじゃないよね……違うって事で良いのかしら……)


 既に授業は午前中までとなっており、4人は昼食後に軽く休憩を取ると模擬戦を行うために第9格技室に向かった。

 4人の特技士昇格は1日たって既にトーフだけでなくトーイチにも広まっており、剛達が格技室に姿を見せると軽いざわめきが起きる。

(既にトーイチにも噂が広がっているのか……変な尾ひれが付いてなければ良いけどな……)

 剛はそんな事を思いながら、ストレッチから軽い素振りと型稽古を行い、模擬戦に備える。


 剛と希美の模擬戦は激しい打ち合いを繰り広げていた。

 互角と言える相手に1年以上模擬戦を繰り返してきた事により、お互いがお互いを高め合う相乗効果を生み出し、今や希美の剣技も、剛の槍斧術も、トーイチ3年生――それもAクラスやBクラスの生徒――に引けを取らないレベルとなっていた。

 演武のようにステップし振るわれる得物は無駄な動きが無く、まるで示し合わせたかのような相手との連動した動作を見せる。

 第9格技室で模擬戦を行っていたトーフ生やトーイチ生はその手を止め、二人の華麗な動きに見入っていた。


 他方、翔と奈緒の模擬戦は宛ら違う競技……と言うより違う行動に見える。

 上からハンマーをどっかんどっかんと振り下ろす奈緒に対し、回避しながら振り下ろした隙を狙って突きを繰り出す光景は、周りで見ている者からしたら餅つきでもしているのかと思うような動きであった。

(そう言えば、そう言うお笑い芸人いたよな……最近余りテレビ見ないからまだ活躍しているのか分からないけど……)

「な~にぃ~?!やっちまったな!!」

「急にそんなネタぶっ込んでくんな!」


 2時間程経過して一通りの組合せで模擬戦を終わらせた後、スポーツドリンクを飲んでいた剛の所に希美が近付いて来た。

「模擬戦だけど、もう少し変化が欲しいと思わない?」

「変化?」

 どう言う変化を望んでいるのか……武器を変えてみるのか、これまでに無い動きをしてみるのか……要領が得ない剛は希美に聞き返していた。

「これまで4人で模擬戦続けて来たけど、お互いの手が大体見えて来てるんじゃないかと思うの。だから、時々違う人と手合わせしてもらうのはどうかと思って」

 希美にそう言われると剛も考え込む。確かに腕は上がっているのだが、他の3人としか真面に相手していないため、パターン化していると言う事だろう。


「でも2年生じゃ話にもならねぇと思うぜ。格技の授業でも真面にやり合えるの一人もいないんだし」

 横で聞いていた翔が話に混ざる。翔が言うのももっともで、だからこそ剛達4人は簡易特技士を飛び越して――正しくは3か月間は簡易特技士であったが――特技士になっているのである。特技もそうだが、武器そのものでの戦闘技術も同学年では勝負にならない次元に4人とも到達していた。

「そう、だな……2年生どころか、これまでの特務実習を見てると3年生でも正直厳しい気はするな……」

 その剛の言葉を聞いた奈緒はきょとんとした顔をして、事も無げに言う。

「じゃあ、トーイチの2年生とか3年生に相手して貰えば良いんじゃない?」


「そんなに簡単に相手して貰えるかしら?」

 希美の心配は当然である。自分達から見てトーイチの2年生で3学年差、中学・高校の3年間と言うのは特に男子は一番成長する時期で、現時点で160cmちょっとの剛や翔と比べても平均で10cm近く身長差がある。身長差は体重差であったりリーチの差に繋がるため、かけ離れていると勝負にならない可能性すらある。

「どうだろうな。トーイチ生でも小柄な人や女子もいる訳だし案外大丈夫かも知れねぇな」

 翔の言葉に僅かに希望が見えた気がするが、じゃあ具体的にどうやって相手を探すのか、と剛が考えていると、奈緒がその場で声を張り上げた。


「トーイチの2年生、3年生の方ーー!どなたかあたし達と模擬戦やって貰えませんかーーー!!」

第69話 『Raise your flag』 MAN WITH A MISSION

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