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Limitless  作者: 神 賢一
第四章 Spread Wings.

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第54話 明日へ

 トーフの入試から2週間後――

 剛の元にトーフからの書類が入ったA4封筒が郵送で届いた。

(これが来たって事は、無事合格したって事だな……)

 剛は封筒を開封して中の書類を確認し、自分で記入する書類、親に記入してもらう書類、入学の案内など熟読しておく書類に分類する。

 その中に、入学後のクラスと出席番号が掛かれている書類を発見する。


「1年Aクラス……か……」

 トーフの入試は学科と実技の比率が50対50と言われている。その中で、初日の学科は上位1/3程度まで絞り込まれているため、想像以上に上位と下位の差は少ない。一方、実技は失敗した場合は最悪0点であり、実技が合否の分かれ目を左右すると考えて間違いない。

(流石に俺より派手な特技使うやつはいなかったからなぁ……)

 実技試験において、少なくとも剛が居た第3格技室で試験を受けた受験生の中で特技を使用した者は、1割いたかいないかと言った程度であった。

 その中でも特に目を引いたのが、やはり希美と剛、そして……爆裂をぶっ放した奈緒と言う3人であった。

(……奈緒ってやっぱり元からああ言う性格なんじゃね?)




 2024年4月8日――

 国立東京第一高等学校附属中学校の入学式が執り行われた。

 剛は1年Aクラスの出席番号7番、翔もAクラスで出席番号23番だった。そして、Aクラスには見知った顔……希美と、奈緒が居た事を剛は目敏く確かめていた。

 入学式における入学生総代は、剛が予想していた通り希美であった。前世以前でトーイチの入学式の総代で挨拶していた希美は何度も見ていたが、それに劣らぬ立派な挨拶だったと感じていた。


 入学式後のオリエンテーションなどが終了し、後は帰宅するだけと言う状況になった時、剛は席を立って翔の所に向かって……そして、出席番号が翔の一つ前であり、席も翔の前に座っている希美の前で足を止めた。

「星野希美さん、だね。俺、神野剛です」

 希美は声を掛けられて顔を上げると、入試の実技試験の時に見た顔だと気付き、はっとした顔をする。

「はい……星野、です。貴方は……試験の時に溶岩弾を放った人、ですよね」

 警戒するような眼差しを希美から向けられている剛だが、柔和な顔を作り希美に語り掛ける。

「うん、それで合っているよ。星野さんにお願いがあるんだ。今日とは言わないけど、近い内に模擬戦の相手を遣って貰いたいんだ」


 突然の剛の申し出に、何の裏があるのかといぶかしんだ希美は即答を避ける。

 暫し考え込んだ後、希美は剛を見据えて尋ねる。

「何故、私なんでしょうか?」

 その希美の問いに剛は即答する。

「貴女がこの学校で一番強いからだよ」



 希美は徒歩で帰宅する最中に、先程の剛の申し出にどうするか悩んでいた。

 確かに希美は小学校に入学するタイミングで祖父母宅に預けられ、同時に徒歩圏内の警察署で行われている少年剣道教室に週2回欠かさず通っていたため、同級生の中では腕が立つのも事実だとは思っている。

 ただ、初対面でそう言う事を知っているとは思えない剛が、何故いきなり模擬戦を依頼して来たのか……

(だが、あの人は強い……少なくともあの特技、新人SUAD隊員でも発動できるような技じゃない……何者なの、神野剛……)


 一方剛は翔と一緒にJR中央線快速で最寄り駅の武蔵小金井に向かっていた。

「いきなりナンパかと思ったよ。何で模擬戦?」

 自分の目の前の席で繰り広げられた遣り取りについて、翔は首を傾げながら尋ねる。

 ふっ、と笑って、剛は翔の問いに応える。

「強くなるには、もっと強い人と戦うのが一番手っ取り早い。その相手が、星野さん、さ」



 翌朝、剛と翔が1年Aクラスの教室に入ると、既に席に着いていた希美に何やら奈緒が絡んでいる。

「ねえねえ、デート?デートのお誘い?付き合っちゃうの?」

 奈緒の言葉に心底うんざりした顔で希美が答える。

「だから、模擬戦の依頼であって付き合うとかそう言うのじゃないです」

 その言葉をどう受け取ったのか、奈緒がきゃーっと言いながら身を捩らせている。

(……やっぱりこっちが本性、だったか……)


 そこにAクラスの別の女子生徒が近付き、奈緒に声を掛ける。

「鈴木さん、ちょっと良いかしら?」

 手招きされた奈緒は少し迷惑そうな顔をして、その女子生徒の方に向かうと、何やら話をし始める。

 数十秒遣り取りがあった後、奈緒が「分かった!忠告ありがとう!」と言ってから再び希美の方にやって来てニコニコ顔で話し始める。

「で、いつデートするの?どこ行くの?何するの?」

 顔を背けた希美はその先の剛と目が合い、剛からも顔を背けて溜め息を吐くのであった。

 そして翔だけは、先程奈緒に声を掛けた女子生徒の数人の集団が、奈緒の背中に忌々し気な鋭い視線を向けているのに気付いていた……


 授業の合間、剛と連れ立ってトイレに入った翔が剛に話し掛ける。

「女子ってコエーな。星野さん、ハブろうとしてんじゃねぇか」

 事情を理解している剛からすると、まあそうだろうな、と言う思いになる。

「彼女は[黒持ち]だから、だろうね」

 希美の個性の内、最も強力で特徴的なのが黒の個性である。前世以前で何度も見て来た黒の特技……力を、命を、その存在すら奪い取るような、生きている存在からすると禍々しいとすら形容できる、そんな暴力的な力を持つ希美が近くに居ると言うのは、希美の事をろくに知らない者からすると禁忌に触れているようなものなのかもしれない。

「個性は個性だろ。本人の性格とかそう言うのと、全然関係ないじゃん」

「翔みたいにそう言える人は、少ないんだと思うよ」


 教室に戻って来ると、翔の席を奪って奈緒が希美に話し掛けていた。

「……心臓に毛が生えてるのかな……?」

「いや……生えてんのは毛じゃなくて有刺鉄線じゃね?」

 剛と翔が顔を見合わせてそんな事を言い合っていると、奈緒が二人に気付いて手を振る。

「お~~い、こっちこっち~~♪」

 え?と思い二人は奈緒の方を見て、希美を見て、再びお互いの顔を見合わせる。


 奈緒がビシィッ!と言う効果音が似合いそうな、軽く足を広げて腰に手を当て、立てた指を突き出したポーズを取る。

「と言う訳で決まりね!」

 何がだよっ!と言う突っ込みたい気持ちを辛うじて抑え、剛と翔は奈緒の次の言葉を待つ。

(……何となく、想像つくんだよなぁ……)

 これまでに何度も奈緒に振り回されてきた剛としては、次の奈緒の言葉を予想して待ち構える。

「今日からみんなで模擬戦やろう!ねっ!剛!翔!」


 想像通りの内容で剛は苦笑し、翔はみんな?模擬戦?呼び捨て?とどこから突っ込めば良いか分からずフリーズしており、奈緒の横で自席に座っている希美は額に手を当てて苦い顔をしている。

「星野さん、鈴木さんはこう言ってるけど……良いの?」

「あ~ん、星野さん鈴木さんじゃなくてー。希美!奈緒!でしょ!剛!」

 横合いから奈緒が抗議すると、剛の視線の先に居る希美は頭を軽く振っていた。



 その日の放課後、トーイチ格技棟、第8格技室――

「なあ……何で俺まで一緒なんだ……?」

 使いやすそうな細身の木剣を手に、呆然とした表情で翔がぼやく。

 これまでも使用してきたポールアックスを手にした剛は、そんな翔を苦笑で見守る。

(今回も奈緒に振り回されるんだろうな……ご愁傷様……)

「お~~い、ご~う!かける~!」

 手を振りながらメイスを持ってやって来る奈緒。希美は長めの木剣を手にして、諦めたような顔で奈緒について来る。


「星野さん、良かったの?」

 剛が近付いて来た希美に小声で尋ねるが、希美は首を振って軽く溜め息を吐く。

「希美で良いわよ……貴方も初日から模擬戦お願いして変わってると思ったけど、鈴木さ…奈緒は貴方とは異質のかなり変わった人だわ……」

 振り回されるのは希美も同じか、と思い、剛は心の中でご愁傷様、と希美に向けて言うのであった。

第54話 『明日へ』 UP-BEAT

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