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Limitless  作者: 神 賢一
第四章 Spread Wings.

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第53話 HEART OF SWORD 〜夜明け前〜

 剛はその日から早速トーフに入学するために、やるべき事を決める。

(先ずは個性……緑、白、それと……青にしても赤にしても希美と被るし、青だと翔、赤だと奈緒と被るのか……なら、滅多に組む事が無い奈緒と同じ赤にしておいた方が良いな……)

 剛の頭の中では、元々トーフに通っていた希美と奈緒は兎も角、翔もトーフに行く事になっていた。

 そこまで細かい事を考えていた訳ではないのだが、市立とは言え普通の中学校に進学すると、授業料こそ免除だが制服や教材などでそれなりに出費がある。対妖魔特設校であるトーフ――国立東京第一高等学校附属中学校――であれば、制服や学用品、通学定期代を含めて全額国から支給される。

 前世まで翔は中学に入ったらアルバイトを始めていたが、トーフに通学する事でアルバイトができなくなるその分を差し引いても、トーフに通う方が母子家庭である翔の家計事情にとってはありがたいと言うのは事実であった。




 年度が替わり4月。5年生になった剛は、早速翔に自分の想いを伝える。

「俺、トーフに行こうと思う」

 ストレート過ぎる剛の告白に、翔は少し面食らいながらも剛に尋ねる。

「お、おう。それは分かった……けど、剛って……言っちゃ悪いけど、無個性、だったよな……」

 当然とも言える翔の疑念に対して、剛は黙って掌を上に向けて広げ、そこに念を込める。すると、掌の上に薄らと緑色のもやのような物が出現する。

「……緑、の法力……なの、か……?」

 剛は頷くと出現させた法力を消す。

「やってみたんだ。個性は後天的に獲得できるって言うから、色々調べて、試してみた結果が、これだよ」

 翔は個性を後天的に獲得できると言う話にも、そしてそれを実現させた剛にも驚き、言葉を失うのであった。



 剛はホームセンターにて小遣いで購入した木材で、前世同様にハルバード型の木製武器を作成した。

 今の内から体に慣らす事――知識は前世から引き継げても、肉体は前世から引き継げないため――で、約1年半ではなく5年以上の期間、天道と戦うまでに少しでも特装器の扱いを上達させておこうと言う考えであった。

 その年から中学に進学した恵からは「ダンスィかよ」と突っ込まれたが、敢えて無視して毎日手製のハルバードで素振りを繰り返した。

(そう言えば中学は三中じゃなくてトーフに行くから、剣道をやる事は無くなるのか……)

 とは言え、これまで散々対人戦も対妖魔戦も行って来た剛としては、知識は充分なのでこうやって素振りや型稽古をやるだけで上達していく。




 個性の獲得、特技の発動、日々の素振りなど、剛が忙しい日々を過ごしていると、時は飛ぶように過ぎて行き――両親に進路を伝える6年生の10月になっていた。

 小学校で進路適性を調べるために専門家を招いて個性検査を行い、剛は緑と白の法力を発動――実は赤の個性も既に獲得していたのだが――させた事により、トーフの入試の権利を得たのであった。

 その日の夕食の席で、剛は父親に向かって話を切り出す。

「父さん、俺、トーフ受験するよ」

 想像通り、恵が「はあぁぁぁぁぁ?!」と声を出すが、今日の個性検査の事を伝え、学校側からも受験する事に問題無いと太鼓判を押されている事を説明する。


 剛の話を聞いた父親、豊は絶句して、暫く何も声を発する事が出来なかった。

 恵に至っては驚きを通り過ぎて呆然としてしまい、持っていた箸を取り落とした事に気付きもしていない様子であった。

「……まさか、無個性だった剛が2個性持ちになってたなんて……」

 実は3個性持ち、とは言えず、剛は黙って頷く。

 豊は天を仰いではぁーっと長い溜息を吐き、少しして剛の顔を見詰めて言葉を口にする。

「分かった。その代わり通学時間長くなるから、早起きしなくてはならないぞ」

 豊らしい激励に、剛は頬を掻いて照れ笑いを浮かべる。



 国立東京第一高等学校附属中学校の2024年度の入学試験願書受付は、年明け1月12日から1月15日までの4日間――1月11日が祝日のため――である。

 受験資格としてはほぼトーイチと同じで、個性持ちであると言う事と、入学年度の4月1日に12歳である事が条件――中学は義務教育期間のため、浪人する事自体出来ない事が理由である。

 願書提出後は2月中旬に入学試験が行われ、3月上旬に結果発表となる。

 ただ、剛はこれまでに対妖魔特設高校の入試は受けた事がそれこそ100回以上あったのだが、トーフの入試は受けた事が無いため、過去問などを中心に必死で入試対策を行っていた。

(うーん……流石にトーフ入試対策は盲点だったな……トーイチ入試より簡単なのは確かだけど、油断してると躓いて取り零しかねないな……)

 これで翔は受かって剛は落ちる、なんて事になったら洒落にもならないため、剛は真剣みに拍車が掛かっていた。


 受験当日――

 トーイチの格技棟に隣接するトーフの割り当てられた試験会場に剛と翔は来ていた。

「剛……何かやつれてないか……?」

 苦笑いをした剛は軽く首を振り、翔の方を見て答える。

「昨日も遅くまで過去問確認してたからな……まあ、今日の学科終わったら明日は実技だし、何とかなるよ」

 そんな物か?と言った顔をした翔だが、その翔はどちらかと言えば明日の実技の方が気掛かりであった。

 剛に習いながら特技の訓練をこの1年程行ってきたが、空気矢を辛うじて使えるようになっただけで他の特技が使える訳では無かった。

 そんな心配をしている翔であったが、実は実技試験の中身は法力さえ発生できれば及第点レベルで、実際に特技を発動できるのはAクラスに入るようなトップレベルだけ、と言う事までは知識を持っていなかった。


 トーフの入学試験はトーフの1学年5クラスの3学年分、15クラスでは教室が全く足りず、トーイチの10クラス3学年分を足して、45クラスに分かれて行われた。

 45クラスで入試に挑む全国各地から集結した受験生約1,400超から、トーフの生徒として選ばれるのは160名程。つまり、9倍近い倍率となっている。

 このため学科の段階で倍率が3倍まで絞られる……つまり、900名を超える受験生は2日目の実技を受ける事無く入試を終えるのであった。

「翔、どうだったか?」

 後ろの席で試験を受けていた翔に剛が声を掛ける。

「ん~、まぁこんなもんだと思うぜ。剛の方はどうだったんだ?」

 尋ねられた剛は頭を掻きながら答える。

「多分、足切りは避けられたと思うんだがなぁ……明日になってみないと分からないかな」

 二人は荷物を纏めると、歩いてJR新宿駅に向かい、中央線快速で帰宅の途に就く。



 翌朝――

 トーフの正門から入った広場になっている場所に、学科試験を通過して実技試験に進む受験生の受験番号が掲揚されていた。

 剛と翔も掲揚されている受験番号を確認するため、前へ前へと進む。

(名前が書いてないから分からないけど、希美も当たり前だが実技に進んでるんだよな……)

 「お、あった。剛の分もあったぞ」

 少し考え込んでいた剛に、翔が掲揚されている自分達の番号を指さして笑顔を向けて来た。

 剛も改めて確認すると、剛の番号と、その次の翔の番号が載っている事を確認して笑みを浮かべるのであった。



 実技試験に進んだ生徒は2組に分かれ、第3格技室と第4格技室に移動する。

 剛と翔が第3格技室に入ると、だいぶ離れた位置に見慣れた……と言うのとは違うが、整った顔立ちに見据えるような目をした、漆黒の髪をポニーテールに纏めた少女――希美の姿。

 受験番号順に順次呼ばれて、法力の発生か特技の発動を行うのだが、緊張から法力を発生させられない者、特技があらぬ方向へ向かう者など、成功したとは言い難い受験生が散見された。

 次に呼ばれたのが希美で、剛は何を切り出すか気になって前に出る。


 〈飛翔(leaping)(slash)!〉

 希美は前世まででも頻繁に発動させていた特技を選択し、容易く発動させると風の刃を的に当てる。

 周りの受験生からはおおっと言ったざわめきが起こる。

(流石だな……この頃から使えたのか……)

 暫くすると剛の受験番号が呼ばれたため、剛が特技発動位置に移動する。

 一回大きく息を吸って吐くと、剛は掌に法力を込める。


 〈溶岩(lava)(bullet)!〉


 拳大の溶岩が熱の尾を引いて高速で的に衝突すると、先程の希美の時以上のどよめきが起きた。

 剛が希美の方を見ると、希美は驚きの表情で剛の事を見詰めるのであった……

第53話 『HEART OF SWORD 〜夜明け前〜』 T.M.Revolution

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