表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Limitless  作者: 神 賢一
第三章 Slipped Away

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/100

第51話 残響散歌

 第1格技室に再集合したトーイチ特技科生徒約460人は学年ごと、クラスごとに整列し、上級生から順次西新宿の街に駆け出して行く。

 校外に出たトーイチ生は3年生・2年生は5人1組、1年生は10人1組となり、おびただしい数の妖魔に当たり始める。

 そんな中、剛と希美、翔と奈緒はいつも通りのペアを組んで、妖魔の集団に突入する。


 〈法力(energy)吸引(drain)!!〉


 希美は目の前に居るゴブリン、コボルド、オークと言った集団に対して特技を発動して妖魔の中に潜む法力を、その妖魔の命ごと根こそぎ奪う。

 奪い取った法力と、自らの黒の法力を練り合わせ、妖魔に向けて特装器の切っ先を差し向けて、これまで使用した事が無い特技を発動させる。



 〈――重力特異点(black hole)――〉



 希美の長剣型の特装器から発せられた黒い霧は妖魔の密集地帯に向かい、渦巻きながら収束し始めてゴルフボール程の大きさになり――その膨大な重力で周辺の妖魔を次々と吸引し、一定以内に近付いた妖魔はその重力の暴力に耐えきれず崩壊していく。

 一瞬で100体を超える妖魔を重力の井戸に突き落とした渦巻く黒い球体は臨界点を迎え、強烈な光を発して消滅する。

 その時には希美は既に駆け出しており、小型妖魔を一薙ぎで何体も塵と化していく。


 〈溶岩(lava)(bullet)!!〉

 膨大な数の妖魔に対して、剛は周辺への被害を考慮する必要が無いと判断して灼熱の溶岩を幾つも放つと、高熱の尾を引きながら妖魔を穿ち、その熱で周囲の妖魔を焼き殺していく。

 その熱を追い掛けるように剛は駆け出し、一直線の空白地帯に身を躍らせるとハルバードを振るう。

 〈剛力(power)(slash)!!〉

 その一振りで小型妖魔数体を宙に弾き飛ばしては消滅させていく。


 〈(flaming)(blade)!〉

 希美が3mの炎を纏わせた長剣でケルベロスを一刀両断すると、その奥で剛がハルバードの斧でトロルの首を跳ね飛ばす姿が見えた。

「剛!」

 希美が一言だけ発すると、剛は頷いて希美に駆け寄り、死角を作らないように希美の左側に背中を向けて立って特装器を構え直す。

「50や100じゃ、減った感じが全くしないな」

 油断なく周囲を警戒しながら剛は愚痴めいた事を口にする。

「なら、その元凶を叩くしか無いわね」



 その時。


 西新宿駅直結の40階を超える高層ビルが、突如崩壊した。

 その場にいる誰もが、何事が起ったのか、何者が成し得たのか……

 圧倒的な破壊の[力]を、その禍々しい[圧力]を、そして近づけば……死。それ以外を感じることが出来ない、そんな理解不能な存在を何百人もが見止めていた。


 だが、剛と希美は違う。何者が、何を行ったか(・・・・・・・・・・)。確信を持って駆け寄って行く。



「――みぃつけたぁ」

 そこに立っているのは、身長150センチにも満たない小柄な体に青みがかったショートボブの銀髪、白を基調としたロリータ風の衣装に身を纏い、真っ白にも見える顔に輝く金色の瞳は大きく見開かれてどこに焦点があるのか定かでない女――重警戒対象修羅第255号、天道光――

 爬虫類のようなヌメッとしたその目を見開き、不自然に大きな口を開けて、人とは思えない鋸の歯のような牙を見せつける。

「アンタのおかげで1年も封印されちゃって、人を殺す楽しみ《・・・・・・・》を味わえなかったじゃないですかーー!!!」

 その言葉に希美はくっと声を漏らすが、剛は機を逃さないように特装器に法力を込めて特技を発動させる。

 〈土剣山(soil frog)!〉


 天道の足元から2mの無数の針がいきなり生えてくる……のだが、どう言う技を使ったのか、天道はその生えてきた針の上に平然と立っている。

 ならば、と剛は再び法力を特装器に込めて振るう。

 〈溶岩(lava)(bullet)!!〉

 小指の先程の多数の溶岩が亜音速で弾幕の如く天道に襲い掛かるが、天道はメイスを振り回してことごとく弾き落とした後、蛇のような目で剛を見据える。

「誰だい坊や。アタシが希美チャンと遊ぶの邪魔しないでくれるかなぁ?」

 天道がささっと手を振ると神の(divine)光弾(bullets)が剛を襲う。

 剛は襲い来る光弾を斬り払うと、土剣山を消した事で地表に降り立った天道に駆け寄り、神速の突きを放つ。


「お前の趣味に、俺も希美も付き合うつもりは無い!」

 突きを躱された――躱す事を想定していた――剛は強引にハルバードの柄を振り払う。

 〈剛力(power)(slash)!〉

 ギンッと金属音が響く。天道は剛の剛力斬をいとも容易く片手で持ったメイスで受け止めていた。

 〈(flaming)(blade)

 討ち合ったまま止まっていた剛と天道の間を灼熱の一閃が襲い掛かり、剛は瞬間的に後ろへ飛び退いて回避する。

 希美はそのまま炎を纏わせた長剣を振るい、天道に襲い掛かるがことごとくメイスで受けられ、刃も炎も天道には届かない。

「アハハハハハハハハハ!楽しいね!楽しいねぇ!!希美チャンとこうやって遊べるって、とーーーーーっても、楽しいねぇ!!」

 天道が光を纏わせたメイスを振るうと希美が長剣で受け止めるが、勢いで希美は4,5m程飛ばされてバク転の要領で着地して長剣を振るう。

 〈飛翔(leaping)(slash)!〉


 希美が放った飛翔斬を回避した天道に向けて、剛は特技を放つ。

 〈(ivy)生蔦(cluster)!!〉

 地面から生えた無数の蔦が5m程の長さに伸びて天道を絡め捕ると、その様子を見て剛は追撃の特技を発動させる。

 〈火口炎(crateritis)!!〉

 天道を絡め捕った蔦の中心付近から高さ5mのマグマが噴き上がり、一瞬にして周囲の蔦が炎に包まれる。

 燃え盛る炎の中に影が揺らいだように見えた直後、音を置き去りにするような速さで天道が希美に――剛ではなく――向かって飛び出し、メイスを横薙ぎに振るう。


「なかなか楽しませてくれるカレシくんじゃぁないの~?アタシが囚われていた間……乳繰り合ってたの()!!」

 天道がメイスを大きく振り抜いた一撃を希美は長剣で受けるが、今度は体勢を整える事が出来ずに10m程先の街路樹に背中から衝突する。

「希美!!」

 追撃しようと希美に向かう天道に対して剛が横合いからハルバードの穂先で突きを放つが、天道はメイスを振るって柄を叩き、突きの軌道を逸らす。

「大丈夫!剛、下がって!」

 気丈に立ち上がる希美は長剣の特装器を構え直し、黒の法力を込め始める。


 〈法力(energy)吸引(drain)!〉


 希美は天道をターゲットにして、法力を奪い取る。


 奪い取ったはずだった。


 だが、天道は何の変化の様子も見せず、希美の手中には法力が全く溜まる事が無かった。

「……な、何故?!」

 その様子を見た天道は大きな口の端を大きく上げて、瞳孔が開きまくった目で希美の姿を捉える。

「アーッハッハッハッハァ!!あの頃とは違うのよぉ!封印してくれたお陰で力を発散できなかったから、その分カラダの中の力を漲らせる分のエネルギーを貯めさせてもらえたわぁ!!」

 何十回も聞いた天道の言葉に、あの特技が発動されようとしているのを剛は気付き、声を上げる。

「希美!来るぞ!左だ!!」


「終わりよ」

 天道は淡々とした、それでいて地響きのような声で言い放つと、その場から姿を消し、剛の、希美の動体視力を遥かに上回る速さで希美の左懐に入り込む。


 〈神力(divine)の刃(blade)


 剛の声に反応した希美は身を捩り、天道に対して長剣を振るって特技を発動させようとする。

 だが、一瞬遅い。

 天道は特技を発動させ、右手に生み出された光の刃を逆袈裟切りに振り上げると、数十倍、10メートルほどにまで延び、希美も、そして剛自身も切り裂いていく。


「ぐぁっ……!!」

 天道が振るった剣に切り裂かれ、胸から下が焼かれるような激しい痛みに襲われた剛は大量の吐血と同時に、目の前に帳が下りてくるのを感じる。


(クソっ!まだ、まだ届かないか!!)

 朦朧もうろうとする意識の底で思いながら、剛の五感は深淵に引き込まれて行く。




 ― 人類個体識別番号 281474976710655、転生てんしょうを開始します。 ―

第51話 『残響散歌』 Aimer

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ