表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Limitless  作者: 神 賢一
第三章 Slipped Away

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/98

第50話 夢色チェイサー

 剛は1年Cクラスの教室にカバンを置くと、特別講習開始の挨拶と説明が行われる第1格技室に向かった。

 早めに来た事もあってまだ生徒の数は疎らだが、これがあと15分もするとトーイチ・トーニ・トーサンのほぼ全生徒、総勢約2,500人が第1格技室に集まる。

 剛としては何度も見た光景ではあるが、少子化でクラスが減少している昨今で、これだけの人数が一堂に会するのは中々無いため、その熱気に気圧されるのは否めない。

 とは言え開始の挨拶まで20分程あり、手持無沙汰な剛は辺りを見回すと、少し離れた所に特装科3年の入間の姿が見えたので、剛は近付いて話し掛ける。


「入間さんお久しぶりです。小金井三中の先輩だったんですね」

 お?と言う表情で剛の方を向いた入間は破顔して、自慢の胸を反らせてやおらに剛の肩をバンバンと叩き始める。

「おー少年かぁ。元気そうで何よりだ。で?その情報はぺったんから聞いたのか?」

 恵に対する入間の表現を聞いて、そして恵が言っていたおっぱいお化けと言う表現を思い出し、剛は渋い顔をしながら答える。

「そのぺったん娘が誰かは聞きませんが、姉の恵が同級生だったと言っていました」

 ふむふむ、とニヤニヤしながら入間が納得している。

「ま、特装で困った事あったらいつでも訪ねてくれて構わんぞ。できる事ならやってやるよ」

 入間はそう言うと右手を上げてひらひら振りながら、剛を背にして同じ特装科のクラスメイトの方に歩いて行った。


 第1格技室での特別講習開始の挨拶と説明は滞りなく終了し、その後は総合舎において各科に分かれての座学講習を1時間、剛達特技科の生徒は再び格技棟に戻り格技講習を1時間執り行う。

 座学講習を終えた剛は希美、翔、奈緒と連れ立って第1格技室に戻ると、学年ごとに集合地点が決められているためそこに向かおうとして、声を掛けられた。

「待ってくれ。この間は助けてくれてありがとう」

 振り向くとそこに居るのはトーニの校章を付けた生徒数人。校章とは別に学年章からすると3年生である事が分かる。

 剛はその顔に特に記憶が無かったが、助けてくれて、と言っていると言う事は、東京大学駒場キャンパスでの特務実習時に数名が負傷していた10人程の集団の誰かなのだろうと推測する。


「いえ、無事で何よりです。怪我をしていた人もいましたが大丈夫でしたでしょうか?」

「ああ、検査で数日入院していたが既に復帰……って、君達1年生なのか?!」

 話し掛けていた男子生徒が剛の学年章を見て、驚愕の声を上げる。3年生の自分達が手こずっていた妖魔の集団を、1年生2人が瞬殺、とまでは行かないものの、蹂躙して殲滅したのだから、驚くのも無理は無いだろう。

「はい、僕もこちらの星野さんもトーイチの1年生です」

 僕?星野さん?と、最近の剛からは聞きなれないワードが出て来て、翔と奈緒は頭を傾げている。


「星野さん?トーフ卒の星野希美って、貴女の事?」

 話していた男子生徒の後ろに控えていた女子生徒――同じくトーニ3年生――が、希美の名前を聞いて尋ねてくると、希美がすっと前に出て剛と肩を並べて答える。

「はい。3月にトーフを卒業して4月からトーイチに入学しました。星野希美です」

 その言葉にトーニの集団からおおっ、と歓声が上がる。どうやら希美の名前はトーイチだけでなく、トーニでも鳴り響いていたようだと、剛はその反応に納得する。

「成程……道理でトロル相手でも動じない訳だ……で、君もトーフ卒なんだろ?」

 その言葉に剛は首を振って答える。

「いえ、僕は外部組(・・・)です。妖魔討伐は4月にトーイチに入ってからです」

 嘘だろ……先日の剛の闘いぶりを見ていたトーニ生は、まさか特技士として4か月程度とは信じられず、絶句するのであった。


 トーニ生と別れた4人は1年生の集合場所に着くと、クラスが異なるため希美と奈緒、剛と翔に別れ、夫々のクラスの列に並ぶ。

 クラスごとに二列縦隊で並ぶと、剛は一つ隣の列に並んでいる桐野と目が合う。

「ふふっ……今日は神野と立ち合ってみたいな」

 桐野の言葉に剛は苦笑いをする。

「今日は他校生との模擬戦だろ。俺相手は無いと思うぞ」


 他校生同士の模擬戦が次々と行われる中、剛は桐野と模擬戦するどころか、最後まで呼ばれる事が無かった。

 対戦相手の差配は御魂を中心に行われていたのだが、剛は――そして希美も――他校生、それも1年生では勝負にすらならないと除外されていたのである。

 そろそろ全員が模擬戦を終わらせようとしていた頃になり、剛と希美は御魂に呼ばれる。

「じゃ、今日の締めで二人で模擬戦やって貰えるかな」

 御魂が何時ものニコニコ顔で剛と希美に指示を出す。


 剛と希美は第1格技室の中央に連れられ、模擬戦のために正対すると、三校の特技科生徒が剛と希美を中心に半径10m程の円を描くように周りを取り巻く。

 見世物かよ……と思わないでも無かったが、剛としては相手が希美である以上、一切の手抜きができないため気を引き締める。

 内藤と言うトーイチの格技担当教官が出て来て、二人を交互に見て手を上げる。

「始めっ!!」


 掛け声と同時に剛と希美は全力で近付き、お互いの得物――剛は木製のポールアックス、希美は木剣――を振るって討ち合い、弾かれた得物を再度討ち合うと、剛は左に、希美は右――剛と同じ方向――に駆けながら何度も討ち合わせる。

 剛が後方に飛び跳ねて間合いを取り穂先で突きを繰り出すと、希美は長剣で上に弾き間合いを詰めて突きを繰り出し、剛は跳ね上げられた勢いのままポールアックスを逆に持って柄で突きの軌道を逸らす。

 希美は軌道を逸らされた長剣を円を描くように上段に振り上げ、鋭い真っ向斬りを剛に見舞うが、剛は斧頭付近を右手で掴んでいるポールアックスの柄を左手で持ち、両手で希美の剣戟を受け止めて押し返す。

 素早く、激しく、鋭く討ち合いを続ける二人の姿を、トーイチ・トーニ・トーサン特技科生徒約1,200人が固唾を呑んで見詰め、時折おお!と言う歓声やはぁーっと言う溜息混じりのざわめきが格技室内に満ちる。

 3分以上の激しい二人の戦闘が続き、一度離れた剛と希美が駆け寄って一度討ち合って弾かれた得物をお互いに翻し――希美の突きが剛の喉元で、剛の斧の斬り付けが希美の首筋で止まる。

「そこまで!!」


 剛と希美が5秒程静止した後にお互いの得物を納めると、しばしの沈黙の後、最初はぱらぱらと数人が拍手を始め、徐々にその拍手の波は周りに、そして全体に広がり、第1格技室は割れんばかりの拍手と歓声に包まれる。

 大歓声を受けた剛と希美はお互いを見詰めて頷き、得物を掲げて歓声に応える。

 様子を見ていた翔はうんうんと頷き、奈緒は何故かふふんとドヤ顔で歓声を聞いている。



 その時、大歓声を打ち消すけたたましいサイレン音が響いた。

 ≪対妖魔特別警報発令!!対妖魔特別警報発令!!妖魔出現場所は新宿区西新宿!推定妖魔出現数は8,000から10,000体!!東京第一高校の特技科生徒は特装具を着用、特装器所持の上、第1格技室に再集合せよ!!繰り返す!対妖魔特別警報発令!!対妖魔特別警報発令!!妖魔出現場所は新宿区西新宿!――≫

(来た!間違いない……天道光だ!!)

 剛は険しい顔で希美を見ると、希美も刺すような鋭い視線で剛を見詰め返して頷く。

 剛が頷き返すと、二人は他のトーイチ特技科生徒の後を追うように特装が格納されているロッカールームに駆けて行くのであった。

第50話 『夢色チェイサー』 鮎川麻弥

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ