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Limitless  作者: 神 賢一
第三章 Slipped Away

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第48話 ReBirth+ReVerse

『貴方もこっち側(・・・・)に来てしまったのね……私と、似た者同士の……バケモノ(・・・・)の世界に……』



 東京大学駒場キャンパスに出現した今日の妖魔討伐において、剛と希美で2体の修羅を倒した後に希美に言われた言葉を、剛は思い返していた。

 自室のベッドに仰向けに寝転んでいる剛は、自身の右掌を眺めて考える。

(希美の隣に並び立つのに相応しい……そこに辿り着いた、と思って良いんだろうな……)

 だが、剛の目的はそこでは無い。

 これまで何度も煮え湯を飲まされた……どころではなく、剛と希美に何度も死をもたらした天道光と言う修羅を倒し、西新宿の大厄災を希美と共に生き延びる事が最大の目的である。


(俺の力は……天道に、通じるのか……?)

 実際に戦ってみなければ分からない……これまで何度も希美と天道の戦いを見て来て、どう言う戦い方をするのかと言うのは熟知していると言って良いだろう。

 だが、戦っていたのは希美であって、剛は天道と1度も直接戦った事は無かった。

(一度でダメなら……何回でもやってやる!これまでも、何回も繰り返してきたんだから、違う手段を試すまでだ!)



 希美は自宅となっている祖父母の家の寝室で、椅子に座って窓から天空の星――都内なので殆ど見えないのだが――を見上げていた。

 剛の話を信じるならば、今月下旬――夏休みの終わり際に、希美は脱走した天道に殺される……剛からしたら、それが何十回も繰り返されてきた、と言う事である。

(でもその時は剛がトーイチには居なくて、特技士でも無いどころか無個性だった……なら、違う結果になる可能性も……)

 今は、トーイチ内では自分に並び称される程に実力を附けた剛と、トーフ卒業生で無いにも関わらず特技士として一人前と言える翔も居る。

 希美としては見た事も無い未来を、剛によって変える事ができるのか……そんな答えなど無い事を考えながら、星が見えない東京の漆黒の夜空をぼんやりと眺めるのであった……



 翌日朝9時――

 剛達4人はいつも通りに格技棟入口前に集合し、予約端末で格技室の利用を予約して学食に向かい、昼食の弁当を注文した後、格技棟には戻らずに特装科が使用する工作室に向かった。

 トーイチ入学以来、特務実習を含めて妖魔殲滅への出動が多く、特に剛と希美は特装器の使用頻度がかなり高いため、昨日の特務実習からトーイチに戻って来た後に特装科の教員と相談してメンテナンスを依頼していた。

 指定されていた第9工作室のドアをノックすると、中から女性の声が聞こえたので4人はドアを開けて入室する。


 入室するとそこには剛とあまり変わらない身長の、白衣に身を包んでボリュームのあるボブカットをなびかせたグラマラスな女性が、椅子から立って向かって歩いて来た。

 同じ3年生のはずなのに姉ちゃんとはえらく違うな、と剛は失礼極まりない――本人に言ったら間違いなく殴られる――事を考えた。

「やあやあ、よく来てくれたな。君らが噂のカマボコ隊か」

 カマボコ隊?と4人が頭にハテナを浮かべている状況で、入間と名乗ったその女性は工作台に4人を案内して、特装器を工作台に置くように促す。

 4人が夫々の特装器を置くと、真っ先に手にしたのは翔のレイピア型の物であった。

「はーーっ、結構使い込んでるなぁ。刃がだいぶ丸まって来てるし、細かい刃欠けもあるな。3か月でこりゃ、凄いなぁ」

 入間は右に左に頭を傾けながら、翔の特装器を縦に、横に、回して、色々な角度から細かく調べる。


「何で最初に俺の特装器見たんですか?」

 翔が素朴な疑問を投げると、入間はにかっと笑って答える。

「そりゃ、この特装器は私が作ったんだから想い入れあるわー」

 剛と希美と翔の3人は成程、と思ったが、奈緒は人の話を聞いているのかいないのか分からない様子で工作室内をきょろきょろと見回していた。

 奈緒を除く3人が見ている中で、入間は作業台の下から色々な道具や薬品を取り出して並べ始めた。

「じゃ、ちゃっちゃとこいつはやっちゃいますか」


 入間はレイピアの刀身に液体の薬剤をブラシを使って薄く塗り広げると、ハンドライトのような物で数回光を当て、刀身を小さなハンマーで数回叩いた後、丁寧にクロスで拭き上げる。

 続いて柄の部分を違うクロスで拭いた後に、水彩画を描く時のような筆と言うか刷毛で細かく柄を払うと、特装器を翔に差し出す。

「ほい、終わったよ。これで暫くは大丈夫だ」

 時間にして僅か2分程。これで3か月近く使い続けた特装器のメンテナンスが終わったと言うのだから驚きである。

 実際、受け取る時に翔はほぇ~と言うような腑抜けた声を出していた。


 入間は続いて奈緒のハンマー型特装器に取り掛かるが、こちらもテキパキとメンテナンスを行って2分程で終了した。

 その次、と希美の長剣を手にすると、入間は1分以上時間を掛けてじっくり検分する。

「……あんた、やっぱ凄いね。特装器見りゃどう言う戦い方してるか良く分かるよ」

 入間はニヤリと笑みを浮かべて希美の顔を見る。

「どう言う事でしょうか……?」

 希美は入間の言葉の真意が読めずに尋ねると、入間は長剣を縦に持ち直して答える。

「あんた、特装器の刃そのもので妖魔斬ってないだろ。飛び道具で倒しているか、特技で刃を覆って斬りつけている、じゃないか?柄は使った感出てるが、刃に全く歪みも欠けも存在していない」


 希美は驚きで一瞬声を失った。自分の戦い方を、見てもいない人にズバリ当てられたのである。

「……はい、そうです」

 ふふんと得意げに鼻を鳴らした入間は、ささっと柄の部分を手入れして問題が無いか確認した後、特装器を希美に返す。

「あんたのが一番楽だよ。さて、最後はまた趣味の形状選んだねぇ」

 そう言いながら剛のハルバードを手にした入間は、何気なく特装器を眺めていた表情をどんどん険しくする。


「……あんたはポニテの子とは真逆だね。派手に使っていやがる。ま、メンテナンスのし甲斐があるってもんだ」

「えっ?どう言う事ですか?」

 剛は反射的に聞き返すと、入間はハルバードの柄を指先でつーっとなぞり、真顔になって剛に答える。

「あんたは特技も使うんだろうが、コイツそのもので妖魔倒すの多いんじゃね?長柄の使い方としては正しいがな。ただ、おかげであちこちひずみが出まくってるや」

 ぐうの音も出ない程の正しい指摘であった。確かに、剛としては最初に覚えた特技である剛力斬で妖魔を殴り飛ばす戦い方を主体としており、特技は使用しているがあくまでも特装器自体で妖魔を倒す事が多かった。

「ま、そんな深刻な顔すんな。ちーと時間は掛かるが、昼飯までには終わると思うからその間模擬戦でもやってな」

 入間はニヤリと笑い、4人を工作室から送り出す。

 全員を送り出した入間は、誰にも聞こえない声で呟く。

「……あのぺったん、弟に特装器の使い方教えておけよ……」


 午前中の模擬戦を終わらせた剛達は――剛以外はほぼ用が無いのだが、入間の居る工作室に向かった。

「いよぅ若造よ!帰って来たかー!」

 そこには剛のハルバード型特装器をブンブン振るう入間の姿。

「あ……えっと……」

 口籠る剛に対して入間は飄々(ひょうひょう)と語る。

「先ずは柄の方だが、歪を0.1%以下になるように全面的に叩き回して補正してだなぁ、それから穂先の0.02m以上の欠損が無くなるように補修液とコート剤で直した後に8000番の砥石で12.5度で研ぎ直して、斧頭も――てな訳で、新品同然に仕上げておいたぜ」


 剛は長々と説明した入間から特装器を受け取ると、繁々と眺めて、ほぅ、と感嘆の声を上げる。

 その様子に入間はニヤリと笑みを浮かべる。


「長生きしろよ、少年」

第48話 『ReBirth+ReVerse』 abingdon boys school

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