表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Limitless  作者: 神 賢一
第二章 Through the Dark

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/98

第32話 君の声が聴こえる

 剛達4人が中野に出掛けた土曜日から2日後となる週明け月曜日の放課後――

 第7格技室に剛・翔・希美・奈緒の4人は集まっていた。夫々の特装器に近しい模擬戦用の武器を手にし、軽く使用感を確かめている。

「じゃあ彼ぴっぴ、向こうで始めようか~~」

 あ、彼ピから彼ぴっぴに進化した……とどうでも良い事を思いながら剛は奈緒が向かった方について行く。


 お互い初めての手合わせとなるため、ゆっくりと……全力の半分くらいのスピードで攻撃を繰り出しては回避したり受け流したりする。

「彼ぴっぴは良かったの?希美んみん、翔んるんに取られちゃってるよ」

 奈緒が模擬戦と掛け離れた話題を剛に振って来る。

「取られるって……前にも言ったでしょ。別に星野さんと付き合ってる訳じゃ無いんだし」

「でも好きなんでしょ?!希美の事!」

 ビシィッ!と決めポーズを取った体で、奈緒がハンマーを剛に突き付けると言う不思議な光景が生まれていた。

 剛は突き付けられたハンマーをポールアックスで右から左に払い、穂先を奈緒に突き付ける。

「好き嫌いで言えば間違いなく好きだろうね。少し熱くなりやすい感じはあるけど人格的にも優れてるし、剣技は同世代じゃ太刀打ちできないくらい凄くて尊敬するくらいだよ」


(ダメだこりゃ……熱くなり易いってアンタが相手の時だけだっちゅーの……)


「なあ……剛ちゃんじゃなくて俺でホントに良かったのか?」

 奈緒を剛に押し付けられるからと賛同しておきながら、今更希美に対してこんな事を言い始める翔。

 翔と希美は力を抜いた状態で右袈裟、左袈裟を交互に10回ずつ打ち合わせたウォーミングアップを終わらせて、翔の打込稽古――以前剛とやったように、希美からは攻撃しない――を開始しようとしていた。

「本田くんも剣使いとの戦いに慣れておいた方が良いでしょう。日本だと刀や剣の特装器使いが一番多いんだから」

 言っている事は一見正しい。模擬戦を行う目的、と考えると戦闘スタイルへの理解は多ければ多い程良い。

(いやそうじゃねぇんだけど……)

 そう思いながら木製の細剣を振るうが一向に希美に受け流しすら許されず、全て避けられており若干フラストレーションが溜まり始めていた。


「剛ちゃんの事、気になってるんじゃないの?」


 希美はその声で一瞬――ほんの一瞬だけだったが、フリーズしてしまう。

 その虚を突いて翔の細剣が振り下ろされるが、自らが隙だらけになっている事に気付いた希美は木剣を振り上げて弾き――翔に向かって剣を振るい始めた。

「ちょっ!待て!星野さんから攻撃しないって――」

「気に!なんて!して!ませんっ!!」

 何合かは辛うじて受け止めていた翔であったが、実力差があり過ぎる……希美が左逆袈裟に木剣を振り上げると、翔の手から細剣が弾き飛ばされ、翔の喉元に希美の木剣が突き付けられていた。

(……おいおい……めっちゃ気にしてるやーん……)


「翔お疲れー……何か、マジで疲れてないか?」

 希美との打込稽古……のはずが模擬戦になり、希美の猛攻に曝された翔は疲労困憊と言った体であった。

「いや……剛ちゃん……マジで尊敬するわ……あの星野さんの相手できるなんて……」

 何十合と……下手すると百合を超える希美との打ち合いを終えた翔は、鋭い斬撃を受け止めたり、何度も剣を弾き飛ばされたりした事で体力をかなり削り取られており、特に右手の感覚が殆ど無くなっていた。

 それに対して剛は、今回翔がやるはずだった全力での打込稽古ではなく、奈緒との全力の半分くらいの力と速度で、流れを確かめるように行った型稽古だったため、大した疲労も無い状態で涼しい顔をしている。

「あ~~、何か結構派手にやってたみたいだね」

 苦笑しながら剛が翔に答えると、被せるように声が聞こえる。

「翔んるんがひ弱なんだよ~~。もっとスパルタで鍛えないとダメかな~~」

 ニヤニヤした顔の奈緒にそう突っ込まれるも、反論する気力も沸かない翔であった……


「じゃあ星野さん、また明日」

 いつもの通り新宿駅に向かう3人に対し、中野坂上方面に徒歩で帰宅する希美とはここでお別れである。

「はい。神野くん、本田くん、奈緒、また明日」

 希美は軽く手を振ると、後ろで束ねた漆黒のポニーテールを靡かせながら振り向き、自宅に向けて歩き始める。

 少しの間希美の後姿を眺めていた剛に対し、興味深そうな顔で翔が視線を送っていた。

「……また明日、ね……」

 その翔の言葉に引っかかる物を感じた剛は首だけ動かして翔を見遣る。

「だってさ……いつの間に毎日集まるのが当たり前になったのさ?」


 あっ、と軽く驚いた剛。まだ1か月少し……最初の模擬戦の誘いの1週間を除くと、4人で色々顔を合わせるようになってからまだ2週間程しか経っていないのに、4人で行動するのが半ば当たり前のように感じていた。

「ま~~それはそれで良いんじゃない?彼ぴっぴが希美んみんとラブラブしてる間~~、あたしは翔んるんで遊んでいたら時間過ごせるしぃ~~♪」

「言い方!言い方!俺で遊ぶな!!」

 新宿駅まで歩きながら、奈緒と翔は相変わらず掛け合い漫才みたいな会話をしている。

(これを含めて奈緒が引っ掻き回してこうなったんだな……模擬戦にしても、遊びに行ったのにしても、全部奈緒が発端だからなぁ。)

 新宿駅に着き、奈緒は京王線の改札へ、剛と翔はJR線の改札へ向かうため、そこで別れる。

「じゃ~ね~~翔んるん、彼ぴっぴ、また明日~~♪」

「うん、また明日」

「また来年でも全然困らねーぞ」


 帰宅後、夕飯を食べた剛はマンションの庭部分で、木刀で素振りを行っていた。

 剣道の素振りではなく……手に持っている得物が色々な種類である事を想定し、どのように振るうのが効率的なのか考えながら、木刀を振って感覚を確かめる。

 武器の種類を決め、どこでどう当たるのがが敵に対して有効か想像し、妖魔を仮想的としてイメージして実際に想像した型で振るう。

(剣と言っても太刀のような曲刀と希美が持ってるような直刀じゃ扱いも変わるし……武器の種類のイメージがまだ少ないか……)

 剛は格技でクラスメイトが使用している特装器を思い出しながら、じっくり1時間の間木刀を振り続けるのであった……



「神野くん」

 翌朝。トーイチの昇降口に剛が辿り着いた時、後ろから声が掛かった。

 剛は振り向きながら、声の主に挨拶をする。

「おはよう、星野さん」

「おはようございます」

 そこから教室まで肩を並べて歩んで行く。

「凄いですね……顔を見る前から、私って分かったんですか?」

 希美は正面を向いたまま剛に尋ねる。剛も正面を向いたまま希美の問いに答える。

「このところ一緒の時間が長かったからね。星野さんの声は分かるよ」

(嘘つき……「このところ」じゃないんでしょ……)

 剛が以前話した、[死に戻り]の事を思い返し、希美はそんな思いだった。


「あ~~!!希美んみん!!彼ぴっぴ!!!おっは~~♪」

 来たな、と思って苦笑しながら希美を見ると、希美も苦笑いをして剛と目線を合わせる。

「おはよう。鈴木さんは相変わらずだね」

「奈緒おはよう。と言うか、その言い方そろそろ止めてくれるかな?」

 希美の抗議に対して奈緒は更に言い募る。

「だって~~1年のベストカップルじゃ~~~ん♪」


((奈緒と翔の掛け合いの方が間違いなく面白い))


 二人は同じ感想を抱き、顔を見合わせるとクスクスと笑い出した。

「え?そんな面白い事言ってないよ~~」

 不満げな奈緒の言葉を受けながら、剛は希美に語り掛ける。


「また今日もよろしくお願いします」

「ええ、今日も模擬戦やりますか?昼食時に予定決めましょう」


(えぇ~~~ガチでカップルじゃ~~ん)

 そんな奈緒の不満を余所に、剛と希美は話をしながら教室に向かって行った。

第32話 『君の声が聴こえる』 BREAKERZ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ