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Limitless  作者: 神 賢一
第二章 Through the Dark

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第29話 ELEMENTS

(何なの?!神野剛って奴は!!)

 普通の……トーフに通っている生徒以外は、妖魔を目の当たりにして足がすくむ。

 下手するとパニックに――実際、Dクラス1名、Eクラス2名がパニックになり、先程の特務実習中に上級生から身柄確保をされていた。

 なのに、剛は……当たり前のように、妖魔のそれなりの軍勢を、日常のように……それこそ、蟻が100匹居たみたいな。そんな[普通]の事みたいに言い放った。

(昼の話……タイムリープとか言ってたけど、本当に神野剛と言う男は時を戻って来ているって事なの?!)

 余りの衝撃に呆けたような表情で、希美は剛から目が離せなくなっていた。


「星野さん……星野さん!大丈夫?」

 剛から声を掛けられるまで……時間にして10秒有るか無いかではあるが、希美は半ば意識を飛ばしていた事に気付く。

 希美は剛から一度視線を逸らし、気を取り直して改めて剛を見据える。

「神野くん、今日は模擬戦の日ですよ。覚悟してください!」

(あぁ……「覚悟」って何よ……私自身何の覚悟かも分からないのに……)


「分かった。お手柔らかに、と言いたいけど、今日で分かった。全力で、お願いします!」


 放課後――

 1週間前同様に――先週は金曜日に行ったが、今週からは木曜日に行うようになったのだが――、剛は木製のポールアックス、希美は木剣を手に、前にも来た格技棟の第6格技室に来ていた。

 剛達がいるそこから少し離れた場所には翔と奈緒の姿もある。

「じゃあ神野くん、私に全力で打ち込み続けてみて。当てるつもり、本気で倒すつもりで良いわ。そうね、時間は……3分間で良いかしら」

 自然体で立っている……それでいて、今斬り込んだら返り討ちに会うような、そう思わせる立ち居住まいで全く隙が見当たらない希美が剛にそう告げる。

「俺が打ち込み続けるって……星野さんはどうするの?」

「避けるか受けるかするだけで、私から攻撃はしないわ」

 良いのか?と思う剛だが、希美の技量であれば簡単に当てるどころか掠りすらできそうに無い事を思い起こし、ポールアックスを両手で構える。

「行くよ!」


 希美の得物が剣であるため剛は遠目に間合いを取り、突き、斬り、払い、薙ぎを見舞うが、受け流しすらせずに華麗なステップで躱し続ける。

(くそっ、俺の攻撃は受けすら要らないって事かよ!)

 3分の間、剛は何十回も希美に攻撃し続けたが全て躱され続け、タイマーのアラームが鳴ったタイミングで繰り出した突きを希美が木剣で大きく斬り払って1回目の模擬戦……とすら呼べない打込稽古は終了した。

 額から大量の汗を流して肩で息をしている剛に対し、希美は汗一つかかずに済ました顔をしている。

 剛が息を整えるまで30秒程待った希美が剛に近寄り話し掛ける。

「そろそろ良いかしら。今の動きを確認します」


「突きを出す時に必ず一回引いているの。その前動作があるから突きって分かるし、ほんの少しだけど遅れが出てるの」

 実際に木剣を槍に見立てて、希美は剛が模擬戦の中で繰り出した突きの挙動を再現する。

「構えているならそのまま突く。この方が敵に悟られないし、攻撃の速度も上がるわ。やってみて」

 言った言葉通りの動作で突きを繰り出す。その動きを見て剛もなるほど、と思い、ポールアックスを構えて突きを繰り出してみる。

「確かに……この方が早いな……」

 体に馴染ませるように何度か繰り返し宙を突く動作を行う。

「次に、斧を使った斬り付けだけど……」

 一つ一つ、希美は丁寧にダメ出しを行い、剛はそれに対して動作を細かく確認する。


「じゃあ、2本目始めましょう。今回も3分ね。いいかしら?」

 希美の言葉に剛は頷くと、再び希美と対峙してポールアックスで攻撃を始める。

 1本目と異なり半分以上は躱す事が難しくなったのか、希美は巧に木剣を操り受け流し、弾いて挙動を変えて、剛の一撃が体に届くのを防ぐ。

(たった……一言二言の、あれだけの指導でここまで変わるとは……予想以上に手強いわ。)

 重心を崩さないように細かくステップを踏みながら攻撃を防ぎ続ける希美は1本目の余裕は流石に無くなり、じんわりと額に汗を滲ませ始める。

 その内、突きを避けたと思った場所に斧が振り上げられ、受け流す事が出来ず木剣を両手で支えてポールアックスの柄を正面で受ける。

(なっ?!動きが……読まれ始めてる……?!攻撃してないのに……何て事なの?!)

 希美は剛の驚くべき早さでの上達に驚愕を隠し切れなくなっていた。


「驚きました。1本目とは全然動きが違ってましたね」

 ペットボトルからミネラルウォーターを飲みながら、希美が素直な感想を述べる。

 剛は口に含んでいたスポーツドリンクをゴクリと飲み込み、僅かに笑みを浮かべる。

「さっきの星野さんの指摘が分かり易かったからだよ」

 そう言うと剛は右腕で額の汗を拭う。

(それだけじゃ無いわね……私の動きを理解できてる……いや、知っている(・・・・・)からこそ、動きに少し余裕ができると先読みで次の手を打ってくるんだわ……)

 希美は剛が昨日の昼に話した事――タイムリープを繰り返している――を徐々に本当の事と思い始めていた。


「神野くんはどうして強くなりたいの?」

 突然の希美の質問に剛は一瞬虚を突かれたような顔をするが、直ぐに表情を戻して答える。

「強くならないと、SUADに入っても簡単に殺される……ってか、それどころか、そもそもSUADに入隊すらできないかも知れないよね」

「SUADに入らない方が、直接妖魔と闘わなくて済むから安全じゃない?まあ……SUAD入らなかった特装は回収されるけど」

 希美がそう言うと、剛は遠くを見るような様子になる。

「そうだね、そうできれば、俺としても良いのかも知れないけど……それじゃ、俺はダメ(・・)なんだ。変われないんだ」

 その剛の表情を見て、希美は剛から視線を逸らして下を向く。


(変われない……か。変わる前が、有ったみたい、じゃないの……)

「そう、か……じゃあ……」

 そして表情を引き締めて改めて剛を見据える。

「もっと模擬戦やって、貴方も私も、強くならないとだね」

 希美は気付いていなかったが、口の端が上がっている程、剛の言葉に高揚していた。

「じゃあ3本目、始めますよ。あと2本はやりますからね」



「おい、本田……神野の奴、何があったんだよ……」

 希美達と模擬戦を行った翌日の金曜日、第8格技室で行われている格技の授業。

 何人かずつが1対1の模擬戦を行っているのだが、剛が無双……とまでは行かないが、対戦している相手が剣道経験者であっても優勢に模擬戦を進めていた。

(覚醒しちゃったなぁ……スーパー〇イヤ人的な?)

 声を掛けられた翔も半ば呆れたような顔で、隙が殆ど無くなった剛の動きを眺めていた。

「あっ!」

 剛がトーフ出身の対戦相手の木剣を弾き飛ばし、首筋にポールアックスの穂先を突き付けたのを見た誰かが声を上げた。

(希美タン、剛ちゃんをバケモノにしないで頂戴よ……)


 ふぅっ、と息を吐いて額の汗を拭った剛の前に……翔が立っていた。

「……翔?」

「剛、次は俺が相手だ」

 勝手に相手を選ぶ事は、授業の主旨に反する。これで良いのか?と教官の方を剛が見ると、教官は右掌を上に向けて差し出す……やれば、と言う、投げ遣りな合図だ。

「許可貰えたね。剛ちゃんとやるの、初めてだねぇ」

 翔は口角を上げたニヤリと笑い、悪役のような顔をして剛を舐め上げるような視線で見た。

「行くよ!!」

(これじゃ、バケモノになったのは俺の方かな?)

 そう思いながらも、翔は剛にレイピアに誓い細剣を振るい、模擬戦を始めるのであった。

第29話 『ELEMENTS』 RIDER CHIPS Featuring Ricky

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